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考えごと日記その24 「新・幕末史 完全版」を観て、幕末明治維新を考える

「NHKスペシャル 新幕末史」 の「完全版」を観た。こうして世界の視点で幕末明治維新を見ると、戦争の主導権は完全に英国が握っている。そして世界は英国を中心に動いていて、日本は英国の手のひらの上で転がされていたのがよくわかる。英国の都合によって「局外中立」を宣言したり、破棄したりってなんなん!?もうやりたい放題じゃんッ。

そして、番組内容とは関係ないところで気になったことがひとつ。番組冒頭で「世界の覇権を争っていたのがイギリスとロシア」とあった。そして日本はロシアの侵攻の脅威にさらされていたという。

たしかにロシアは世界の覇権を取ろうとしていたかもしれない。しかしボクのイメージでは、それはロシアの西側の話で、日本に近い東側はまだそれどころではなかったはずだ。しかも世界の覇権は圧倒的に英国が握っていて、ロシアは全然まだまだ。英国と争うレベルではないはずなのだ。

まず、この頃のロシア東側はまだシベリアが未開発で、食料すらおぼつかない状態だったはずだ。ロシアは江戸期に幕府と接触しているが、それはシベリアから日本に毛皮を輸出し、そして日本から食料を輸入したいがための開国要請だった。つまりロシアの東側は食料にも困るほど困窮していて、日本への侵攻など、そのような考えにおよばない状況だったはずなのだ。

ところが番組の冒頭では、日本への侵攻を虎視眈々と狙うロシア、つまり悪のロシアとして描かれていた。ボクのなかにあるこの頃のロシアのイメージと、番組で描かれているロシアとはだいぶちがうので、やっぱり専門家によって史観は違うんだなぁ、と思いながら番組を観ていた。

すると番組は中盤になって唐突に、じつはロシアには日本への進出意図はなかったと結論づけたのだ。それもサラッと流して終わり。え!?さんざん日本侵攻をたくらむ悪のロシアの印象を植えつけといて、途中でやっぱり違いました〜って。しかもひと言で終わり。

なんなん!?ま、いいんだけど。本番組の地上波での放送は今年の1月、とうぜんウクライナ戦争の最中だ。われわれの立場は西側なので、ウクライナ支援、そしてロシアは悪というのはまちがいない。ただこのようにして、ロシアは悪という印象を意図的に植えつけようとしているように感じたのだ。それともボクの考えすぎだろうか。

ともあれ、英国がロシア対策のために日本を近代化させようとしたのはまちがいない。あと米国の中国(清国)進出のためというのもあると思うのだが、本番組ではそれには触れていない。というか、米国はほとんど登場しない。米国は1861〜1865年まで南北戦争だったからそのせいだろう。

こうしてみると、幕末明治維新は世界史なのだ。坂本龍馬や西郷隆盛を持ち上げて、日本史の枠内で美化しようとするから矛盾が生まれる。そうではなく、幕末の日本は世界の覇権争いのうずに巻き込まれ、帝国主義の仕組みに組み込まれたのだ。このようにグローバルな視点でしっかり向きあうと、すべての辻つまが合ってくる。それが幕末明治維新なんだな。

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ついでながら、幕府を支援しているはずの仏国が、戊辰戦争が始まると局外中立があったとはいえ、あまりにもあっさり幕府から離れた印象がする。普通ならプロイセンといっしょに列藩同盟軍を支援しておかしくないのだが。なぜだろう。なかなか香ばしいにおいがするが、気のせいだろうか。うん、これはもう少し調べてみたい。

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