見出し画像

ネガティブなケイパビリティとは

『鬼平犯科帳』の作者である池波正太郎氏がある月刊誌で編集者と対談した時の記事を、三五年以上も前に読まれたそうだ。

編集者の質問に、
「いや私も実は分からんのだよ。来週になれば大方の見当はつくと思うが」
と答える池波正太郎氏のすごさ。

そのときのこの帚木氏の感想が面白い。

また、ご自身で小説を書かれるようになったら、「四枚先は読めません」とおっしゃる。

「小説を書くのは、まさに暗闇を懐中電灯を持って歩くのと似ています」

「分かるのは、懐中電灯の光が及ぶ範囲だけなのです」

 「十メートル進むと、新たに十メートル先が見えます。一度に百メートル先までは見通せません」

「作家は、日々この宙ぶらりんの状態に耐えながら、わずかな懐中電灯の光を頼りにして、歩き続けなければなりません」

これはなにも、作家さんだけの話ではないだろう。

私たちは日々宙ぶらりんの状態に耐えながら、わずかな灯りを頼りに歩くのだ。
何か疑問が浮かんだときに、何年もそれを心の片隅に抱えていると、何かの拍子にその答えが見つかることがあった。私自身、そんなことを一度や二度とではなく経験した。

ネガティブ・ケイパビリティとは、不確実性に漂う力。性急な結論を持たずに。

解決することだけが能力ではない。
すぐに解決しなくても持ちこたえることができる力、それも立派な能力なのだ。

#ネガティブケイパビリティ
#答えの出ない事態に耐える力
#帚木蓬生
#朝日新聞出版

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?