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僕の絵本の作り方

最近「絵本どうやって作ってるの?」というご質問をよくいただくので、「個人的にはこんな感じで作ってます!」という内容をシェアしようと思います!
かなり長くなりますがご興味があれば読んでみてください。

いきなりですが、とりあえず初めて作るよ!という方は最終的にどのように絵本を完成させたいかということを先に決めちゃうのが良いかもしれません。
締め切りや目標があったほうが作りやすい方は「絵本 コンテスト」とかで検索して自分が出したいコンテストを探してみるのがオススメ。応募要項をしっかり読んで、その条件に合わせて作ることになるので「どこから手を付けたら良いのかわからない」という方はコンテストもアリです。


ただ、コンテストの場合は大体原画での応募になるので「とにかく本の形にしたい」という方はコンテストよりもまずは自分で一冊本の形にするのが良いと思います。
たとえば「白い本」と検索して出てくるハードカバーの無地の本に手書きしたり白い紙をホチキスで綴じて絵を描いても絵本なので、パソコンのレイアウトソフトなどが無い方はとりあえず一冊手作りで絵本を作っちゃうのが一番いいと思います。

こちらは無地の「ホワイトブック」です。すでに綴じられているので、他の紙にしっかり下書きして中身を作ってから本番にトライすると良いかも。世界に一冊の手描き絵本になるので、ご家族とか大切な方に向けて作るのもアリ。

はじめから「上手く作ろう」と思うとかなり難しくなっちゃうと思いますし、「本格的なものを高いクオリティで作る」が目標の方は専門的な勉強をした方が絶対に効率は良いので、絵本作りを学べる学校や有料の教室などしっかりした所で絵を描く勉強をしたり絵本作りを学ぶのが良いかもしれません。
僕は全く絵が描けなかったので大学卒業後にイラストレーションやデザインと一緒に絵本作りも学べる専門学校に入学して勉強しました。

そんな感じですが「とりあえず他の人がどんな流れで作ってるか知りたい」という方はこの後の文章も参考になるかもしれないので良かったら読んでみてください。

【やまだの絵本作りの基本的な流れ】
これはあくまで一例なので参考程度なものだと思ってください。プロでもそれぞれの作家や編集者、出版社によって制作の仕方は違いますし、自主制作の場合は自分が作りやすいように作業工程を省いたりするのももちろんアリなので、この通りじゃなくても全然大丈夫です!結局楽しく作るのことが一番なので、本当はこの文章を読まずにまずは楽しんで描いてみるのがオススメです。
それでも読んでみたい方は暇つぶし程度に読んでみてください。

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1.アイデアを出す前の下ごしらえ

まずは「どんな人にどんな絵本を読んでもらいたいか」を決めたり、自分自身を掘り下げたりすることが絵本制作の第一歩になります。
その他余裕があれば「絵本の研究」も出来るとより制作がスムーズになります。

・「どんな人に読んでもらいたいか」を決める

これによって作る絵本の内容や言葉選び、世界観の「方向性」が決まってきます。
「作りたい絵本」がないと絵本は作れないので、ここを決めることで作品全体の方向性を決めたり他の人がアドバイスしたり出来るようになります。

例えば「4~5歳くらいの子どもに楽しんでもらいたい」と思った場合、「自分が4~5歳くらいの頃に好きだったもの」を思い浮かべるとアイデアが出やすかったりします。

「大人向け絵本」は今の自分が描きたい世界観を自由に描けばよいので思いついたものをガシガシ描けばOKです。ただ、「子ども向け絵本」はわかりやすい言葉選びやシンプルなストーリー、飽きないページ数など、制作の際に考慮することがすごく増えるので実は子ども向けのほうがずっと制作の難易度が上がります。
ご自分のお子さんがいたり、まわりに子どもがいる方はその子に伝わるように作ればバッチリです。

考えようと思えばいくらでも考えることが出来ちゃうので、初めて作る時などはあまり難しく考えず「とにかく文章量を減らす」ということを目標にすると読みやすい絵本を作れると思います。
実は文章を長く書くより短く削っていくほうが難しいので、はじめから「文字は少なく」を目指すのがオススメ。

・自分を掘り下げる
これはアイデアを出す前にやっておくと有効な作業なのですが、自分の興味や関心を掘り下げておくことで作る作品に自分の好きなものや世界観を反映させることができます。
「自分が好きなもの、関心があるもの」が作品の個性を生み出すので実はとっても大事な作業です。

・絵本の研究
これもあくまで商業出版向けの絵本を作る時の話しなのですが、編集者の方によっては「100冊読んでから作ってください」と言われることもあるくらい「絵本のリズム」をつかむのが大事です。
読みやすい文章量、ページをめくった時の展開や演出、文字のレイアウトや余白の使い方などを意識するためには「絵本をたくさん読む」ことがまず第一歩です。
その上で「絵本だけ見て絵本を作らない」ということもとっても大事です。趣味や旅行、家事やお仕事、家族など絵本以外のものにたくさん触れることは絵本を読むことと同じくらい大切です。

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2.アイデア出し

まずは「どんな絵本を作ろうかな~」というステップとして柔軟な発想をするためにアイデアを文章やスケッチでたくさん書き出します。

ここで「この方向性で行こう!」とか「このキャラクターで行こう!」っていう絵本の出発点を決めます。

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3.コンセプト、ストーリー作り

アイデアが出たらストーリーを文章であらすじとしてまとめます。慣れている方は思い付くままにストーリーを作ってもいいですが、慣れていない方は「行って帰ってくる」「起承転結」「くりかえし」のどれかを選んで考えるとストーリーを作りやすいです。

・「行って帰ってくる」は文字通りなのですが、主人公がどこかへ行って元いた場所に帰ってくるまでを一冊で描くストーリー作りで古代の神話からずっと続くストーリー作りの王道です。
これを崩して「帰ってくる」のではなく「行きっぱなし」にしたりもできます。

・「起承転結」はスタートとゴールを設定してその間に山場を作るストーリー作りの基本的な形でありこれも王道です。
「主人公が最終的にどうなるか」が決まっていると作りやすいです。

・「くりかえし」も絵本では良く使われるストーリーの作り方です。
次々に何かが出てきたり、主人公が何かに出会ったりするストーリーで、絵本のページをめくるリズムを作りやすいです。読んでいる側が「次は何が出てくるんだろう」という予想をしながら読みます。
美味しそうな果物が次々出てくるような絵本も基本的にはこのパターンです。

・その他
上記以外にも自由にストーリーを考えるのはもちろんオッケーですし、過去の昔話をモチーフにしたりストーリーのない絵本もアリです(図鑑的な絵本や科学絵本など)

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4.絵本のサイズ、縦書きか横書きか、ページ数を決める

絵本の最大の特徴は「本であること」です。今はデジタルのみで公開される絵本も多いので絶対ではないのでが、僕にとって「本であること」はものすごく大切なことで一番こだわりたい部分です。

絵本作りにとって絵はものすごく大切な要素であると同時にあくまでも「絵」「言葉(文)」「ストーリー」「レイアウト」「ページめくり」「印刷」「製本」などなどが総合された「絵本」の中のひとつの要素だという意識も大切です。

絵が素晴らしくて魅力的な作品ももちろんたくさんありますが、発想力、心、メッセージ、構図、言葉選び、言葉のリズムなど単純な絵の上手い下手以外の部分で大きな魅力を持っている作品がたくさんあるところも絵本の面白さです。

なので絵が得意じゃなくても絵本は作れますし、写真を利用したり文字だけで作ることもできます。ストーリーと文章だけ作って絵は他の作家さんに描いてもらっているプロの絵本作家さんもたくさんいらっしゃるので「絵が苦手」だけで絵本を作れないなんてことは全然ない所も僕にとっては魅力的です。
そしてやっぱり「本」になった瞬間と開いた時のトキメキが僕にとっては重要です。

・絵本のサイズ

最終的に作る絵本のサイズを決めないと原稿の大きさも決められないので、「こんな大きさの絵本を作る」ということを絵コンテを書く前に決めます。


・縦書きか横書きか決める

持っている本を確認していただくと良くわかると思いますが、文字が縦書きか横書きかによって本のページをめくる方向が決まります。
横書きの場合は「左開き」、縦書きの場合は「右開き」になります。昔話や児童文学を原作にした絵本以外は横書きのものが多いです。

・絵本のページ数

実際に書店で買えるプロの絵本は0~4歳くらいを対象にした絵本では24ページ(見開き12場面)、4~6歳くらいの子が対象の絵本では32ページ(見開き15場面)が一般的です。

自主制作の絵本ではページ数は自由に増やしたり減らしたりできますが、特にこだわりがなければ24ページ(12場面)か30ページ(15場面)で作ると絵本らしくなるのでオススメです。

これは子ども向けに作る場合の話しなのですが、ページ数や文章量が多くなってくると本としては「絵本」よりも「児童書」に近くなっていきます。
小さい子が繰り返し読みたくなったり、飽きずに読み聞かせてあげられる絵本にするにはページ数を減らす努力も必要になってきます。

そして絵本のページ数は印刷、製本の都合上基本的に4の倍数の偶数ページで考えます。

ページ数を決めたらそのページ数の中でストーリーをどう展開するか決めていきます。

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5.絵コンテ(ストーリーボード)、ダミー作り

絵本のページ数やサイズが決まったら絵コンテとラフを作ります。ここが出版社から出す絵本作りではたくさん修正が入って一番しんどい所です。笑

絵コンテ(ストーリーボード)とは絵本を作る前に紙に各ページのレイアウトや展開、文章を描いて絵本の全体像を決めるものです。この段階で表紙や裏表紙のイメージも作っていきます。

ダミーは実際に絵本を作る前にホチキスなどで簡単に紙を綴じて本の形にしたものなどに絵本の下書きを描いたものです。原寸で作ったり本番より小さいサイズで作ったりします。
この段階で絵の中のどこに文字が入るかもきまってくるので、絵本としてはかなり完成形が見えてきます。

文字の大きさや余白の使い方はたくさん良い絵本を読んで感覚を掴むのがオススメです。
文字は大きければ見やすいわけではなく、しっかり余白を作ってあげることで絵も文字も引き立ってきたりもします。この辺りはたくさん絵本を読んだりデザインを学ぶことで感覚が身に付いてくると思います。

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6.本番の絵作り

絵の具や色鉛筆、ペンや色画用紙、デジタルなど自分が好きな画材を使って本番の絵を描きます。ここはとにかく楽しく描くのがコツ。
表紙や裏表紙、扉(表紙を開いたら最初に出てくるタイトルページ)も忘れずに。

出版社を通して絵本を作る場合は完成した原稿やデータを出版社に渡して、その後デザイナーさんが文字などをレイアウトしてくれたものを、印刷屋さんで印刷、製本をしてもらって絵本が完成します。

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7.スキャン、印刷用のデータ作り

ここからは自主制作の場合。プリンターやレイアウトのソフトがあれば自分で手製本することもできます。
絵本の原稿をスキャンしてパソコン上でレイアウトして文字を打ち込んでいきます。ソフトはイラストレーターとフォトショップを使っています。
僕はこれまで手製本もたくさんしていますが、作る冊数が多い場合は印刷と製本は外注しちゃうと楽です。デジタルデータをwebで公開するだけでしたらコストはかかりませんが、本にする場合はどちらにせよ手間とコストはかかります。

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8.印刷、製本

完成したデータを印刷、製本してやっと絵本が出来上がります。手間はかかりますが印刷や製本は自分でやることも出来ますし、データだけ作って外注することも出来ます。個人的には「本になった」時の感動がものすごく大きくて好きなので、本の形にすることを大切にしています。

以上です!お疲れさまでした!

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というのが基本的な流れです。これはあくまでも「僕の」絵本作りの流れなのでもっと作業を細かくしたりざっくりしたりは自由です!

個人的に絵本に関してはとにかく「これが正解」というふうに決めつけたくないので、ふわっとしたお伝えの仕方になってしまってごめんなさい。
僕も全然絵コンテとかラフを作らないで思い付きで筆を動かして出来上がった絵に物語を付けて絵本にしてみたりすることもあるので、絵本が完成するなら作り方は自由です。
とにかく楽しんでたくさん絵本を読んで、たくさん絵本を作っていただければきっと自然と絵本作りも上達していくと思うのでここで僕の書いたことも全然忘れていただいて大丈夫です!

もしご要望があればいずれきっちり準備して初心者向けの絵本教室なども始めようかなあ。今年(2020年)は実験的に人数を限定して無料のオンライン絵本教室を始めてみましたけど、僕もかなり時間と労力を使うことになるので今後やるとしたら有料じゃないと出来ないと思います。もし実際にどこかの場所を使って教室をやる場合は会場なども用意する必要もあるので簡単ではないですけど、もし企画とかが得意な方がいたらセッティングしてください。笑

最後に個人的にオススメな絵本の作り方の本をご紹介します。実際に僕が学生時代から読んでいる本を選びました。これらをしっかり読み込めばあとは「作りたい気持ち」を持って実際に作っちゃえばオッケーだと思います。

トムズボックスの土井さんの本。絵本の作り方から心構えなど、プロを目指す方は絶対に読んで損がない内容です。ただ真剣に絵本と向き合っている方なので、ちょっとハードルは高めかもしれません。

こちらもとってもわかりやすいです。ストーリー作りのコツなども載ってます。

こちらは「絵本の作り方」というよりも「絵本作家になりたい」という人は一度読んでみても良いかもしれません。プロの作家さんたちへのインタビューやリアルな業界の事情についても教えてくれるのでちょっとシビアな所も込みでプロを目指す方にはオススメです。
ではでは皆さま風邪などに気を付けて楽しくお過ごしください!



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僕の絵本やZINEはこちらで扱っているので良かったらぜひお手に取って読んでみてください。イベントなどで出店も時々しています。

ホームページはこちら。ご興味があればぜひ。絵本やイラスト、ワークショップやトークイベントの依頼もこちらからお願いします。

僕の絵本「プップクプードル」と「やかんひこう 」はamazonや楽天、書店での注文などで購入できるのでご興味があればぜひ読んでみてください。

僕自身もこれから頑張って絵本を作り続けるので、みなさんも一緒に楽しみつつ絵本を作っていきましょう。
それではいつか作品を通してお会いできるのを楽しみにしています!

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