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ふきを食べつくす(2)&保存食のバイブル

以前、大叔母からこんな本をもらった。

年季はいってます


佐藤雅子さんの「私の保存食ノート」という本だ。
ずいぶん古い本だなあとペラペラめくってみると果物から野菜、お肉、乳製品に至るまでそれはそれは見たこともない興味深くておいしそうな保存食の数々が載っている、まさに保存食の宝石箱のような本である。
年季の入りようからもう絶版なのかと思いきや現在に至ってもまだまだ根強い人気を誇っているようで、アマゾン、生協、街の本屋と今でもどこでも普通に売っている。
おいしいものを手作りしたい方、こまごました手仕事が好きな方にはとてもおすすめだ。


ふきの葉の佃煮

この本を読んでいて、ふきの葉を食べられることを初めて知った。

「ふきの葉の佃煮」というレシピが載っていたので、私も試してみる。

モンステラの葉っぱみたい


まずふきを茹でるのだが、さっと湯通しする程度でよいという。
はたしてこれでアクが抜けるのか・・・?不安に思いつつも半世紀昔のレシピを信じて続ける。

出汁の中に、醤油、砂糖、化学調味料・・とはちょっと違うが顆粒出汁を入れて煮詰める。

ピ ン ぼ け !


出来上がったものを食べてみると、、鮮烈な苦みが舌を襲う。
これは失敗したかな・・・と思ったが、ひとまず時間を置いて様子を見ることにする。

一晩置いたものを、おそるおそる口に運んでみる。

苦みが落ち着いておいしくなっていた!
味がしっかりしているのでご飯にも合うし、お酒にも合う。
なかなか乙な味だ。これは子供にはわからぬ大人の楽しみ。
心の中で作者の佐藤さんに謝る。疑ってごめんなさい、と。
先人の知恵に間違いはなかった。


きゃらぶき

最後はきゃらぶき。

ふきを切りそろえ、

そして煮る。

※きゃらぶきは私の気まぐれ適当レシピです

出汁、醤油、みりん、酒で煮る。甘めが好きならお砂糖を加えよう。
煮汁がなくなるまで煮詰めたら出来上がり。

煮上がったところで一応味見をしてみる。
・・・ううん??えぐい・・・
作ったのが走りのふきではなく、大きくなったふきだったからだろうか。この前の出汁浸しやピクルスよりえぐみを強く感じる。
でもあきらめない。
とりあえず、寝かして様子を見ることにする。

そして時間が経ったものを食べてみる。

べっこう色

時間を置くとえぐみも丸くなり、舌がぐっと詰まるような不協和音がなくなる。
白いご飯がベストパートナーだ。

5月の料理教室の際、私の気まぐれ箸休めとしてお出ししたのだが、みなさん無言のうちにぱくぱくと召し上がってくださった。
ある方が一言「大人になるとおいしいですよねえ」とおっしゃってくれ、私も自然とにっこりとした。




先にご紹介した「わたしの保存食」という本だが、今から50数年前に出版されている。本には著者である佐藤さんのご家族の話や食に対する思いなども、レシピと一緒につづられている。
何よりも、エピソードを語るその言葉遣いが丁寧なのだ。
自分はいかに粗忽者か・・・と反省したくらい、すてきなのである。
現代の感覚からすると少しお高くとまっている感じもしてしまうのだがそんなのはただのジェネレーションギャップのようなもので、読み進めていくうちに気にならなくなる。一生懸命丁寧に料理をし、時に失敗し、研究熱心においしいものをつくろうとしている姿がありありと浮かんでくる。

丁寧で意外性のあるレシピにうなり、著者のひたむきさに胸を打たれ、何より”私も作ってみよう”かなと読者の好奇心をくすぐる本である。

一度機会があったら手に取ってみてください。



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