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推しを想う

先日、推しが突然いなくなった。

彼の名は月下カオル。ホロスターズ3期生「TriNero」の一人だ。

この記事は彼を応援していた一人としての思い出を残しておく為の記事だ。彼の配信アーカイブが全部消えてしまい、Twitterでのつぶやきも刻一刻と消えていく中で、自分が彼を応援していたという思い出だけは忘れずに残したいというだけのただの感情の整理だ。


彼を知ったのはホロスターズ公式による3期生のユニット「TriNero」がデビューする、とのお知らせからだった。

左に一本角で眼帯の筋骨隆々の男を携え、右には眼光鋭いマフィアのボス、中央に鮮やかなピンク髪の一見女性のような風貌のユニットデビューは(主に自分の観測範囲ですが)「女装男子」という存在感の強すぎる登場にみんな驚いていた覚えがあるし、何より自分もその内の一人だった。

そうしていざ始まった初配信。

「どっかーん!」と威勢よく現れた彼は、化粧デッキやベイブレードASMRへの野望、そして配信終了間際での駆け込みトイレ事件と、その見た目にそぐわない鮮烈なデビューを飾った。

その後の彼は一ヶ月間、同期以外とのコラボ解禁までの間とにかく楽しそうに配信を重ねていき、見る見る間にYou Tube登録者数1万人を超えるなど目覚ましい活躍を重ねていった。自分もイロモノ扱いでなんとなく見始めた彼の配信をだんだんと楽しみに観る事が日に日に多くなっていった。

彼を語る上で外せないのはやはり化粧配信だろう。普段のマイクラ等での配信でも化粧の話題が出ると10分は熱く語り、いざやってきた化粧デッキ配信で男性としては敷居の高い「化粧」というジャンルを「男性は自分の見た目を変える為によく筋トレを始めるけど、お化粧はすぐに効果が出るし何よりコスパがいい」という解説に目から鱗が落ちた男性リスナーは自分だけではないはず。

その化粧デッキに負けず劣らず「月下カオルといえば」の配信だったのがベイブレードASMRだろう。カオルくんの優しい声から突如発せられる「3.2.1…ゴーシュートッ!!」というイケボの掛け声とエンジン音のようなベイブレードの回転音に妙に少年心を刺激されて興奮したのは自分だけではないだろう。その翌日にはタカラトミー公式に補足された事をきっかけにその日のトレンド一位を飾るなどバズった事を契機にホロスタ内では「FGO宝具詠唱ASMR」「エアガンメンテナンスASMR」といった謎ASMR配信がブームと化し、そこから更にベイブレードを通じて様々なVtuberとのコラボに発展していったのは印象的だ。


コラボ解禁後には彼はそれまでのソロ配信だけでなく、同じくホロスタでの先輩たち、ホロライブID、白上フブキや夏色まつりといったホロプロの先輩、更にはあにまーれ、個人勢Vtuberなどとにかく色んなVtuber達とのコラボを積み重ねて行った。

その中でも特に印象的なのはホロスタ2期生である夕刻ロベルさんとの雑談コラボ「Barロベル」だ。

カオルくんとロベルさんの軽妙なトークに笑い通しだった事をよく覚えている。カオルくんはその後TriNeroの3人でもBarロベルに来店したり麻雀コラボなどでもロベルさんとのコラボが多かった印象がある。

またホロライブIDの3人の中でもTriNeroはAirani Iofifteenさん(イオフィさん)とも特にコラボが多く、よくカオルくんがイオフィさんにいじられている姿を配信で見せてもらい楽しませてもらった。(コラボ配信がカオルくんの枠で行っていた事が多くその配信アーカイブが残されていない事はとても残念です)

三ヶ月間、特にコラボ解禁してからの2ヶ月でのカオルくんの活躍は目覚ましく、7月半ばには登録者数4万人を超えるなどホロスターズの中でも1.2を争うほど特に数字を伸ばしていき、1リスナーの自分としては彼のフットワークの軽さや海外リスナーも引き込む彼が、ホロスタ内での桐生ココや白上フブキのような存在(バーチャルエコノミスト千莉さんが提唱するところのハブ人材)になっていくだろうと信じてやまなかった。

実際、自分もカオルくんをきっかけとしてTriNeroの他の二人や前述した夕刻ロベルさんなどホロスタライバー、それにイオフィさんの配信を見始めたという記憶がある。





私はそういったカオルくんのコラボや配信の全部を追っていたわけではない。寧ろ見ている最中でも他に気になる配信があればフラッと他へ行くようなリスナーだった。

そんな自分がこんな記事を書くまで彼の事を忘れられずにいるのは、彼の配信がいつの間にか自分の中で生活の一部に浸透するほど彼が熱心にライバー活動を行っていたからだ。

彼はよく朝7時という早朝から配信をとっていて、多い日にはその後昼、夕、夜と1日に3,4回配信をしている事も多かった。この時勢の中で自分も例にもれず家に引きこもる事が多くなり、なんとなくYouTubeを開いているだけでも彼のライブ中の配信を見かける事は多く、ふらっとその配信を覗きに行くといつも通りの元気な声で笑っている彼に何度元気をもらったか分からない。

私にとって月下カオルとは、推しとはなんぞや、と言われれば私は「生活の一部」だと考える。よく「推しは推せる時に推せ」なんて言うけれど、私は何に替えても推しを最優先するなんて事は出来ない。

ふと立ち寄ってみた薬局で女性用化粧品の棚を少し勇気を出して見に行ったてカオルくんが話していた化粧品を探してみたり、ふと立ち寄った家電屋でなんとなく玩具売場のベイブレードを見に行ったり。そんなふうに彼の姿が自然と自分の日常にも入り込んでいた。こんな事は初めてで、これからもこんな日々が続くんだろうと漠然と思っていた。

彼と運営の間に何があったかなんて分からない。同期であるオウガさんも知らないという以上、1リスナーにはこれからも知る事はできないだろう。早くもゴシップ好きな口さがない人たちが言いたい放題に言っているようだが、答えが出ない以上その言葉に信憑性はない。

彼の配信がコラボ相手でのアーカイブにしか残っていない以上、これから彼の事はだんだんと重なっていく他の推しの配信に重ねられていきいつか忘れてしまうのだろうか、なんて考えていたのがこの記事を書き始めるつい2時間前。

その時まで私はぼんやりとそんな事を思いながらもホロライブIDのイオフィさんの配信を見ていた。賑やかによく笑っていた彼女が配信の終わりの間際、彼女は「バイバイは嫌だよ、またねがいい」と言ってその言葉にハッとさせられた。


私は月下カオルが最後に行った配信を聴けなかった。明日にでもアーカイブで見ればいいやと考えて結局彼の最後の言葉を聴くことができなかった(その悔しさで今この感情の整理をしているといってもいい)。

ただ、聞くところによると彼は「バイバイ」と普段言わない言葉をどこか寂しげに言っていたという。この事をイオフィさんも知っていたのだろう。

そうして彼女はいつもの挨拶の代わりに「おつネイル。またね」と、つい先日まで月下カオルがいつも配信の終わりにしていた挨拶をしてくれた。

その事がどれだけ救いになった事か。配信が終わってからしばらくは涙が止まらなかった。

どっかーん!」という挨拶から生まれた彼はその短い活動の中で本当にまばゆい閃光を残して去っていった。その輝きに負けないくらいのステージに立つ姿を観たかったけれど、それは叶わなかった。だからこそ、私は他のホロスターズのライバー達がそのステージに立っている姿を観たいと思った。

願わくばそのステージを月下カオルもどこかで一緒に観ていてほしいな、と思う。だからその時まで。

おつネイル、またね

せめて最後の台詞はバイバイじゃなくて「またね」



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