棒の話
山の子は、棒が好き。
いい棒を見つけたら拾わずにはいられない。
幼い頃は、棒を兄弟で取り合った。
どっちが先に見つけたかで喧嘩になり
とっておきは隠しておく必要があった。
そこら中に落ちているとはいえ
棒にも、良し悪しと好みがあるのだ。
よくしなる、長い棒は
つる草を張り、削った棒をつがえて弓矢として遊び
太く屈強な棒を持ち歩けばいつでも戦いごっこができ
小さい枝はポケットに入れておくと何と無く嬉しい。
それは当たり前のこととして
私の引き出しに入っているが
山暮らしの素養が無い人には普通では無いらしい。
何気なくしたこの昔話を
やたら気に入る人もいた。
会うたびにキラキラした目で所望するのである。
「 小田さん、棒の話して!棒の話。 」
同じ話を繰り返し聞いて
何が面白いのか分からないが
きっと身近に棒の話をする人がいなかったのだろう。
山で育っても棒好きとは限らないし
棒が好きでも話が好きとは限らないので
棒の話をする人は、きっとあまりいない。
棒が好きだった少女は大人になって
街中を探しても棒が落ちていない事で有名な東京にいる。
山で拾ったいい棒ならば、値段をつけて堂々と売れるような街だ。
そんな棒のない空間に耐えられるだろうか。
それで、少しは棒がありそうな街に居を構えた。
アクセスは良くはないが、すぐそこに森がある。
南向き3階建ての窓からは林が一望でき、
家から20分の井之頭公園では、桜の枝をよく拾う。
(写真)熊本県内の山間部 筆者の地元で撮影
棒が好きな姉妹、背が高い方が妹さん
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