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タイミングに遅いも早いもない

一人で登園できなかったT君

15年前、幼稚園で働いていた頃、お母さんとどうしても離れることができないT君がいました。

田舎の小さい幼稚園だったので、園児は、同じ方向の友達2~3人と一緒に歩いて登園が基本でした。

進入園児たちはみんな喜び半分戸惑い半分ながらも、新しい制服に身をつつみ、お友達とはりきって登園してきます。


ところがその中で、T君だけが、「お母ちゃんと一緒じゃなきゃ幼稚園嫌だ!」と言って、毎朝お母さんが送って来ていました。

お母さんのことをいつも「おかあちゃ~ん」と呼ぶ、華奢で優しい表情をした男の子でした。

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最初の1週間ぐらいは、お母さんも一緒に教室まで入り、着替えて朝の活動までずっと一緒。そして、お母さんが帰ろうとすると号泣・・・。

そんな日々でした。


次の週から、お母さんも胸が痛むけど、息子さんのために離れる覚悟をするということで

教室まで送った後、泣いている子どもの手をふりほどいて帰っていくようになったのですが、これが逆効果だったようで、T君は友達と遊ぶ気力も、食欲も無くなってしまいました。。。


そこで私は、お母さんに提案しました。
明日から私がおうちまで迎えに行って一緒に歩いて登園してみますと。


その当時、クラス担任は私含め2人だったので、クラスのことは1人の先生にお任せして、
私はT君の家の前まで1キロほどの距離を歩いて迎えに行きました。

お母さんとT君と私と3人。
手を繋いで他愛も無い話をしながら、途中で他の子達も合流して一緒に歩きました。


そんな毎日を続けたところ、ある日T君が、正門のところで

「おかあちゃんバイバイ」と言ったんです。

「え、ここでバイバイしていいの?お母ちゃん帰るよ?」

「うん、いいよ」

T君は、私と手を繋いだままお母さんの手を離し、私と一緒に歩き始めました・・・。


T君はもう後ろを振り返りません。

嬉しくて私はちょっとウルッとしながらお母さんの方を振り返りました。

そしたらお母さんも笑顔で手を振ってはいたけど、目は涙いっぱいでした。

私たちは、涙顔でお互い会釈をしました。

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T君がどんどん変わり始める

連休などがあると、また少し元の状態に戻りそうになったりもしましたが

そのうち、T君がお母さんにバイバイできるタイミングがどんどん早くなってきました。

最初は正門でバイバイだったはずが

次は正門よりずっと手前の看板の所になり

その次はさらに手前の電柱の所になり、、、

そのうち、T君は家でお母さんとバイバイできるようになり

私が家まで迎えに行かなくても、園と家の中間地点のため池で私と待ち合わせできるまでになりました。


T君のお母さんは、いつも私に申し訳なさそうにしていたのですが
私は「T君が1人で登園できるようになるまでいつまでも迎えに行きたいです」とお話しました。

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一学期が終わろうとしている頃。

ついにT君が
「先生明日は迎えに来なくていいよ!僕1人で来るから」と言い出しました✨✨

「一人で行けたら、おかあちゃんがホットケーキ作って待っててくれるから嬉しいんだ♪」

T君偉い✨✨

とっても嬉しくて、子ども達が帰った後、急いでお母さんに電話。

お母さんは、声を震わせながら「先生ありがとう ありがとうございます」と何度もお礼を言ってくれました。

次の日、もちろんT君は何事も無かったように友達と楽しく登園してきて

私はそんなT君を、ムツゴロウさんが犬をよしよしするみたいに、なでまくり、褒めまくりました✨✨


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いただいた手紙

そんなT君が2年間の幼稚園生活を終え卒業する時。

その時私は、もう彼の担任では無かったのですが、T君のお母さんに声をかけられました。

「この子にとって初めての先生が、ゆみこ先生で本当に良かったです。私が救われました。これは先生へのお手紙です。」

渡された手紙には、とても嬉しくて大切なことが書いてありました。

先生、うちの息子のために本当にありがとうございました。
あの時は正直、ここまで長引くと思っていなかったので、早く1人で行けるようになってほしくて何度も息子を叱ってしまったり私も泣いたりと、とても苦しかったのですが

先生が一切息子を責めず、私にプレッシャーを与えず、他の子とも比べず、いつもニコニコ笑顔で迎えに来てくださるので、私も甘えていいのかなと思って過ごすことができました。

そして毎日、息子の様子を連絡帳で細かくお知らせくださり、息子のいいところをたくさん書いてくださったので私も安心することができました。

こんなこと言うの恥ずかしいですが、本当はとても心配性なんです、私が。
一時はうつ状態になるぐらい精神を病むような性格で・・・。

本当は、私が息子を心配しすぎていたから、息子が私から離れられなかったのかもしれません。

先生は私に、息子の手を引っ張って歩くのではなく、同じ立ち位置で手を繋いで歩くことを教えてくれました。このご恩は一生忘れません、ありがとうございました。


このお手紙で、私がT君に接してきたことを

「手を引っ張って歩くのではなく、同じ立ち位置で手を繋いで歩く」

という言葉に変えて贈ってくださってから、私の先生としてのなりたい姿がハッキリし、その手紙は、先生としての私にとって、お守りになりました。

そして、T君の成長を見ることで
人が何かをできるようになるタイミングはそれぞれ違うこと
そのタイミングが、他の人より遅くても、本人にとってはそのタイミングがベスト
ということが分かりました。

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いつからでも遅くない


考え方を変えたいけど変えられない

仕事や環境を変えたいけど勇気が出ない

断れない性格をなんとかしたい

新しいことに挑戦したいけどもう歳だから・・・。

「いつまでたっても」とか
「今さら」とか
「そのぐらいのことで」とか
「周りを見てみろ」とか

そういう、誰かからの声とか、自分が自分に言ってしまう声とか

そういうのを気にしないで、

もし、なんとかしたい気持ちがあるなら

今この瞬間からスタートでいいと思います。

もし、「もっと~~が~~だったら」とか
「あの人がこうしてくれれば」って、タラレバばかり思いついてしまうんだったら

今はそういう時期なのかもしれないから仕方ない。

そういう自分を責めるから、よけいに進めなくなるんだとも思います。

なぜ誰かのせいにしてしまうのか。

なぜそういう考え方なのか。

そうなるには、それなりの理由や、仕方なかった経験もあると思うんです。

だから、そこから抜け出したいか、そのままでいいのかも、自分がしたいようにすればいい。

そしておそらく、そこから抜け出したい人っていうのが、「悩み」や「迷い」の状態にいる人だと思います。

そして、その「悩み」や「迷い」に対処するタイミングは、遅いとか早いとか全然関係ない。


あなたが今抱えている悩みや迷いをとっくに捨てて、すごい前を歩いている人もいれば

自分と同じ場所にいる人もいるし

もしかしたら自分より随分後ろの方で同じ悩みを抱えている人もいるかもしれない

まだその悩みや問題に気づいてない人だっていると思います。

そして、その人たちの中で、誰が一番優れているっていうのは、見る人によって変わるだけのことだと思います。

競技や成績などの競争には優劣はあるけど

生き方や成長過程に優劣は一切ないと思うんです。

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あの時の「今」を振り返って


こう話している私も、T君からせっかく学んだにも関わらず
その後の15年間で、できない自分に対してたくさん悩み、迷い、苦しんできました。

いろんなもののせいにしていれば楽になると思いきや

誰かや何かのせいにすることは、よけいに自分を苦しめることになることも分かりました。


だから今は、自分の考え方を見つめなおして行動しています。

時々、「まだそんなこと言ってるのか」っていう、厳しい声が聞こえてくることもあります。

でも、実際はもう言われてない。言われない環境。

私はもう、育った環境も抜けて、支配する人たちからも抜け出して

今は自分の家庭があるし、その家庭では、自分の人生を尊重してもらえています。

だから、過去の呪縛に囚われず

不安な気持ちがある時はそれも仕方ない。

一旦じっくり味わってから

T君のように、自分で決めて、自分のタイミングで

今だ!って時に、新しい自分に挑戦していこうと思っています。

noteを始めたタイミングもそうでした。

今年の5月からnoteの存在を知って、始めようと思った時に私が見た世界。

なんというか、活気がある世界。

いろんな人が堂々を発信していて、楽しそうというか、もう世界が出来上がっていて。

その時私は、「あ。もう出遅れてるのかな?」って思ってしまっていました。

そこから、始めたいのに始められない自分がいて・・・

なんと、5ヶ月も右往左往していました(笑)

でもね、悩んだ期間があったからこそ、「やってみないと分からない」ということにも気づけたんです。

それで、今だ!ってタイミングがあったのです。

その「今だ!」ってタイミングが過去になった今、

あの時の「今」を振り返ると

こうして人に発信したり、自分と違う価値観や世界で生きてきた人たちを知ることができて

あの時動き出して本当に良かったと思うし

それに遅いも早いもなくて、今はもう動き出してることがそれで良かったんだと思えます。

だから今、何かにくすぶっている人がいたら

他人のペースや声を気にせず、自分のタイミングを信じてみてほしいなと思います。

そして、自分で動き出せた時の爽快感も、ぜひ味わってほしいです☆

今日も読んでいただきありがとうございました。





私の書く記事は多分、伝わる人が限られています。いじめ、機能不全家族、HSP、病気などの記事多めなので。それでも深くせまく伝えたくて書いています。サポートとても嬉しいです。感謝します。コメントも嬉しいです🍀