子どもの頃の傷に向き合う ②

万引き事件があって、私はN子もそして自分も心底嫌いになった。

本当はその前から怖い、嫌と思っていたけど、調子の良いときは仲良くしてくれることもあったし、体が不自由な友達には優しくないといけない と、かたくなに思っていた。

でももう嫌だ、とにかく大嫌いだ、と思った私は逃げることを選んだ。行き帰りは、時間をずらし遠回りした。会ってしまった時や、遠くに見つけた時は、全力で走った。声をかけられても聞こえないフリをして走った。
N子は走ることができなかったから。

家に遊びに来られても居留守をした。
とにかくN子と面と向かうことから逃げ続けた。

高学年となり、相変わらず友達は少なかったが、平穏に過ごしていた。たまにN子のうわさ話を聞く事もあったが、名前を聞くのも嫌だったので触れないようにしていた。私の世界から消えて欲しかったのだ。


そんなある日、N子は亡くなった。
元々の持病のためだ。

私は母からその事を聞いたときどのように感じたか、全く覚えていない。


お葬式には級友達と出た。
沢山の人が涙を流す中、私は涙を流すこともなく、ただただ無心だった。
N子の母親が憔悴しきっていた姿を見ても悲しむことができなかった。

送り出す時に手を合わせながら
”亡くなってしまったからといって、許せるものではないんだね N子” と心の中でつぶやいた。自分のひやりとした感情にドキリとした。

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