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●意識を解放するコツ/少女革命ウテナ

おはようございます、ミタカです🌾

前回は「バレンタインの話」
前々回は「ドラえもんの話」
その前は「自己紹介」
の記事を書きました。

今回はアニメ「少女革命ウテナ」
の話をしようと思います。



「セーラームーン」とか「プリキュア」とか
世代を超えて有名な題材を選ばずに
知る人ぞ知るコアな題材を選ぶあたりが
私です。笑

しかし、この物語を紐解けば、
がんじがらめに囚われた意識を
解放するキッカケを掴むことができる
のです。

主に「シンデレラストーリー」からの解放です。


1.世界を革命せよ


「少女革命ウテナ」とは、
「世界」を革命するお話です。


自己紹介記事で少し触れた
「存在の許し」を探すあまり
詳しくなっちゃったアニメのひとつです。
(詳細はこちら→リンク)

こちらのアニメは非常に癖のある作品なので、
絵柄的に見てベルサイユのバラのような
古いイメージを受けたり、
1話目を見て百合もの(女性同士の恋愛の事)
のように感じたりと、
あまり一般受けはしにくいでしょう。

※「少女革命ウテナ 絶対進化革命前夜」ジャケット画像より引用。

こーんな絵です。私だって最初は敬遠しました。笑


しかし、演出を紐解くと、
これは誰もに当てはまる自立の物語です。

閉鎖された世界から飛び立つ
=(自分の)世界を革命する話
なのです。


「少女革命ウテナ」は
J.C.STAFF制作のアニメ作品です。
(とある魔術の禁書目録シリーズ&科学の超電磁砲シリーズ
等を制作しているところです)
90年代の1997年に放映され、
『美少女戦士セーラームーン』シリーズの
メインスタッフだった幾原邦彦さんが監督を務め、
同じくキャラクターデザインには長谷川慎也さん。

更に『新世紀エヴァンゲリオン』で脚本を務めた
榎戸洋司さんが本作も脚本を務めており、
かなりすごい製作陣です。
原案キャラクターデザインには、
優雅な少女漫画家のさいとうちほさん。
音楽では、寺山修司さん率いる劇団「天井浅敷」で
音楽を担当していたJ・A・シーザーさん。
と、更に濃ゆーい製作陣で作られました。

情報引用 ウィキペディア

漫画版、アニメ版、劇場版とありますが、
それぞれ展開が微妙に違うので、
一番おすすめであるアニメ版をご紹介します。


2.アンチ・シンデレラストーリー

まず、「少女革命ウテナ」は、
アンチ・シンデレラストーリーです。

最終的に「シンデレラ」の世界観を革命する
少女の物語
なんですね。

どういうことかというと、

まず、あの有名な「シンデレラ」は、
自分が置かれた境遇を
自分から抜け出そうと努力する物語ではありません。

艱難辛苦に耐えていれば、
いつか王子様がやってきて幸せになる。
基本的にこんなストーリーです。

この世界観を、シンデレラシンドロームと言います。

辛い仕事でも耐えて頑張っていれば、
いつかきっと給料が良くなるはずだから
とか
勉強さえしていれば、
きっといい人生が歩めるはずだから
とか
こういう思想です。

根拠はないけど、
黙って頑張っていればいつかは
「王子様(ご褒美)」がやってきて報われる!
みたいなイメージ
ですね。


物語の舞台は、
学園という閉鎖空間。
そこは、シンデレラシンドロームに支配された空間です。

学園には「王子様」が居ます。
正確には「王子様みたいな有能者」がいます。
彼らはみな、生徒会に属しています。

生徒たちはみんなシンデレラ。
王子様たちに選ばれるのを
今か今かと待っている清楚な女の子たちです。

しかし生徒会に選ばれし優れた者たちは
一般生徒なんて全然みていない。笑

選ばれし有能者が望む「お姫様」は
自分にふさわしい、
永遠を手にすることができるほどの能力を持つ子です。

生徒会メンバーの望む永遠とは、
最年少の幹くんは、幼いころの美しい思い出が続くこと
硬派のワカメくんは、少年の日の友情がずっと続くこと
カッコイイ女性の樹里さんは、叶わぬ思いが実を結ぶこと
女好きの冬芽くんは、本物の王子様になってモテモテになること
大体こんな感じです。

それぞれの夢は、
本物のお姫様=姫宮アンシー
を手に入れれば叶うというのです。

だから、王子さま候補たちは
アンシー(夢の成就)を巡って決闘を繰り返します。


夢は誰だって持っているものですよね。

たとえば、私の場合は、
こちらの自己紹介(→リンク)に書いてあるように
友達との永遠を望んでいました。

他にも
今は離婚や何かで離れ離れだけど
仲の良い家族との永遠を望むとか

今では喧嘩別れしてバラバラだけど
学生時代の時のように
同じチームメイトで野球をしたいとか

色々あると思います。

永遠を望むというのは、誰もが持つ夢です。
人は、叶えたい夢のために
「お姫様」=「力」を求める
のです。
しかし、この思考は
「ひとつの世界に閉じ込める檻」でもある。


3.「王子様」になりたい「女の子」

話をストーリーに戻します。

生徒会メンバーが
それぞれの夢をかなえるために
決闘を繰り返していると

ある日、女の子でありながら
本物の王子様を目指す天上ウテナが現れます。

「王子様」に憧れて、王子様を目指している彼女。
その純粋さとひたむきさ、気高く誇り高い様は、
まさに他の誰よりも「王子様」にふさわしい姿。

ウテナは決闘にもアンシーにも
全然興味は無いのですが、

他の生徒会メンバーのワカメくんが
アンシーを雑に扱って酷いことをするのを見て
(普通に暴力を振るいます)
そんなの許せない!!!となった訳です。


「王子様」だったら、
誰かが酷いことをされていたら
見て見ぬふりなんてしないもんね。


そして、ワカメくんと
初めての決闘をして勝ち
アンシーを手に入れてからは、

「お姫様がいる」=「永遠を手に入れる力を持つ」
=有能者止まりではない「本物の王子様の力」で
他の決闘相手を圧倒します。

ウテナは
「王子様」=「気高くでカッコイイ人」
になりたいだけなので、
別に永遠が欲しいとは思っていません。

つまり、お姫様が要らないのです。

だから、アンシーの事も
特別な少女とは思ってはおらず、
友達だと思っています。

決闘だって本当は相手にしたくないけど、
放棄したり負けたりしたら
また友達が雑に扱われるかも…
そう考えて、結果的にアンシーを護ります。

…かっこいい!これぞ「王子様」です!笑


生徒会メンバーは、結局のところ
「王子様になりたい」んじゃなくて、
「永遠が欲しい」
んですよ。

冬芽君だけはウテナと同じ夢を持ってますが、
彼はウテナみたいな気高い力が無いのです。
つまり、性格が悪い。笑
女をとっかえひっかえしてるから。笑
有能者にはなれても「王子様」にはなれない。
だから力が欲しい。

生徒会メンバーは自分のために力を欲しがるけど、
ウテナは目指す理想の姿のために友達を護る。


まさにピュア、まさに王子様なんです。


ストーリー上、
一度決闘に負けることもありますけど、
基本的には無敗。めちゃめちゃ強いんですよ。
王子様だから!


4.揺らぐ「檻」

そんなウテナに影響されて、
「お姫様」である、アンシーが揺らぎはじめます。

ここまでのアンシーは、
スタッフの方針もあって、
まるでロボットみたいな表現ばかりで
なんか、怖いんですよ。笑

永遠を手に入れる「力」を持つ
とされている割には、
昔ながらの良妻賢母のように、
パートナーの言うことは絶対に聞くし、
逆らわないし、献身的に尽くす、
後ろで黙って微笑む…

「お姫様」と言うより、まるで「人形」
そういう「意思のない」描写をされていました。

だから、パートナーがワカメくんの時は
殴られようが、いいように利用されようが
反抗一つせず、されるがままでした。


そんな人形みたいな「お姫様」は、
自由をくれる「王子様」に戸惑う
んです。


実は、アンシーというお姫様は、
すでに「ご主人様」持ち。
繰り返す決闘によって、
「より良い王子様」を見つけ、
その力を奪うための駒として
黒幕である「ご主人様」に利用されてたんです。

アンシーはちゃんと「ご主人様」が
好きだったんですけど
本当にピュアで、本当の王子様みたいなウテナが
大好きになっちゃうんですよ。

友達だから酷いことはしたくない、
けど、「ご主人様」は力を奪えという。

いつもの人形アンシーなら
問答無用で力を奪いますが…
だけど、ウテナは…
友達なのに…?

「お姫様」はめっちゃ葛藤します。


ちなみにこの「ご主人様」というのは
舞台である鳳学園の、学園長です。笑
学園という檻の主。
シンデレラストーリーの世界の主。
まさにラスボス
です。

金と権力に物を言わせるような、
なんだか嫌な感じのアブナイ人
です。笑


さらに実は、
彼は本物の王子様「だった」人物で、
アンシーの兄です。

つまり、彼らは兄妹だったために
永遠に一緒になることができず、
王子様とお姫様で居られなかった
のです。

だから、永遠(兄妹でも一緒にいられる未来)
が欲しくて、ウテナの力を欲しがる。


5.叶わない夢

実は、舞台となっている鳳学園は、
叶わない夢をもつ人たちの集まった場所
なんですね。


世の中には叶わない夢であふれています。
たとえば、

充実した学生生活を送っていても
ずっと学生ではいられない。
いつかは卒業して社会人になる。

家族仲良く暮らしていても
兄弟は家を出るし
親はたいがい先に旅立つ


生徒会メンバーも実は

ワカメくんは
少年の日の友情がずっと続くと思っている
大人になったら皆変わっていくのに

幹くんは
楽しく双子で一緒にピアノを弾いていた思い出を取り戻したい
いつかは別々の大人になるのに

樹里さんは好きになった女の子と一緒になりたい
でも、相手は樹里さんのことが嫌いなのに


それこそ学園長自体が兄妹同士。
血縁では子供が作れないのに。

最近は同性同士はだいぶ寛容になってきたけど
兄妹はやはり無理です。残念ながら。

それを「王子様」っていうパワーがあれば
手に入ると思っている
んです。


だからこそ
ウテナの存在はイレギュラーでした。
女の子だけど、本当に王子様なんです。

少し高い視点を持って俯瞰(フカン、見下ろす事)
して見ると、
カッコイイ姿に性別の縛りなんて無いですよね。

「〇〇だけど●●になれる」
この思想を持ち込んだ
んですよ。

これにアンシーは影響されるんです。


アンシーは
「お姫様」という縛りから抜け出さない限り、
永遠に「力」(=王子様=学園長=兄=庇護者)
に縋り続けて、
決して夢が叶わない世界
「学園」という檻の外に出られない
のです。

どこへもいけないのです。

でも、気付き始める。
女の子だけど王子様であるウテナみたいに、
お姫様だけど男の子みたいに

自分の足で歩いていいのかもしれない、と。


このアンシーの葛藤の演出がね、またすごいの。
こわい。笑
ウテナに食べさせるクッキーに
毒入れたりするからね。笑

最終的に、ウテナは最後の決闘に負けるんですが
(ヒーローがラスボスに負けるんです!)
この決闘の際の「お姫様」に対する献身で
アンシーがついに決心します。

「自分のことは自分で決める」と。

黙っていうことさえ聞いていれば生きていけたけど
愛する兄の手を離すのです。

そして、学園の外に出ていくんです。
門を、自分の足で越えていく。
「王子様」という力を手放して。

「王子様」「お姫様」という概念を越えて。


この物語ってアンシーの革命の話だったんです。
少女革命ウテナっていうけど、
革命したのはアンシーの方
なんですね。

アニメはここで終了。

この先のことは描かれて書かれていませんが、
おそらくウテナの方は、王子様ではなくなって
「アイデンティティクライシス」に陥っています。



6.アイデンティティクライシス

既存の世界で常識だったものが壊れて
自分らしさってものがわからなくなること、
これを
アイデンティティクライシスと言います。
自己崩壊…みたいなイメージです。

アニメでウテナは、
「気高い姿」でアンシーを解放した代わりに
「王子様」の力を失います。

これはゆゆしき自体です。

だって王子様になることがウテナの目標ですから。
カッコいい人になる事、
それがウテナの全てでしたから。

でも、決闘で負けてしまった。
王子様であろうとしたのに。
(結果的にはアンシーは救われましたが)
颯爽とお姫様を救う王子様には
なれなかったのです。

目標を失って、決闘でも負けてぼろぼろのウテナ…。

でも、結果的にアンシーは解放されました。
「自分の意思」をもったアンシーは
ウテナを見捨てて行ったりしません。

それを証拠に、アニメの最後でこう言うのです。

「今度は私が行くから
どこに居ても必ず見つけるから
待っててね、ウテナ」と。


「王子様」「お姫様」という概念を越えた彼女なら
「王子様」でなくなって苦しむウテナを
救うことが出来ます。


そもそも「王子様」を失って正解だったんです。
自分で気がついていないけど、
ウテナは「王子様じゃなくなった」から
とっくに学園の檻から出ている。

もしウテナ自身が、
自分が王子様になれなかったことを
許せなくても
他者であるアンシーがきっと許してくれます。

アンシーとは、とっくに
「王子様」とか「お姫様」とかでなく
対等な良い友達になっているのです。


「愛する兄」を手放したアンシーと
「王子様性」を失ったウテナ。

大切な思い出を手放すこと。解き放つこと。
自分の居場所、存在、価値を見つけるために。
潔く手放して、気高い人間になるために。


既存の世界を超えること。
意識の解放って
ちょっと寂しいんですよ。


鳳学園という檻は、今もそこにあります。
「王子様」を待って艱難辛苦に耐えるだけの
「お姫様」をそこに閉じ込めます。
シンデレラコンプレックスの世界に閉じ込めます。


7.広い世界への解放

物語の構想元とされたのではないかとされる
ヘルマン・ヘッセの「デミアン」に、
ウテナの劇中でも使用されたこんな言葉があります。

---------

鳥は卵の中からぬけ出ようと戦う。

卵は世界だ。

生まれようと欲するものは、

一つの世界を破壊しなければならない。

---------

「少女革命ウテナ」は、
アンシーが世界を革命する物語、
鳥が卵から飛び立つ物語なのでした。


もし、あなたが
どちらかといえばアンシーに共感するなら
道に行き詰まった時の鍵になるのは
「執着」でしょう。
愛する人、自慢の能力、昔からの仲間。
そういうモノを手放すことで
閉ざされた世界が解放されます。

もし、あなたが
どちらかといえばウテナに共感するなら
道に行き詰まった時の鍵になるのは
「理想」でしょう。
気高くてカッコいい人、楽しかった日々、憧れ。
そういうモノが叶わなかったとしても
そんな自分を許す
ことができれば
閉ざされた世界が解放されます。


手放す事と、許すことなのです。


この少女革命ウテナは、
癖が強すぎるのが難点ですが、
単にアニメ作品としてもかなり面白いです。
※劇場版は刺激が強いのでおすすめしません。笑

ツッコミどころも多い。笑
そんなバランスの悪い建物なんかあるか!
いちいちなんで服を脱ぐんだ!変態か!
というかんじで。

ドン引くものが多いですが、
ある意味、良い刺激になります。
もし現状に閉塞感を感じたら、
ぜひアニメシリーズを観てみてくださいね。

あ、最初はポカーンとなること間違い無しです。
その意味不明感もいいかもしれません。笑


youtubeにて、第1話が無料公開されています。
リンクを貼っておきますので、どうぞ。


それでは、ここまで読んでいただき、
ありがとうございました。

また次回お会いしましょう!

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