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turn the pocket inside out

 そこにポケットがある。僕の身体のどこか、手が届きそうで届かないポケットがある。それは東京だったり北海道だったり、或いは見た事のないアメリカの墓地だったりする。

 それは耳、だろうか?
 
 右耳が幼い頃から遠い。耳鳴りが常にある。早口で話されると何を言われたのかわからない。体調の悪さに比例して耳鳴りが酷くなるから余計に僕の耳はどこか遠くで、沢山の僕の知らない音や言葉をため込んで膨れっ面なのだ。

 耳はポケットだろうか?

 手が届きそうで届かない僕の、遠い耳、がポケットに手を突っ込んで自分はポケットだなんて嘯きながら口笛に耳を澄ませている。みえないポケット、ジャングルを歩く。下町を歩くみえないポケット、あれは誰のポケットだろう。ふと、空を見上げたら飛行機がエアポケットに消えていった。

 あそこの垣根でひかりのポケットが羽根を休めている

 今朝方の耳鳴りがポケットから飛び出して郵便ポストに滑り込む、宛先も切手も貼り忘れているからいつか帰ってくるだろう。イヤーフォンは耳にぴたりとしていなくて、座りが悪い。遠くてちかい、地球のどこかできみに耳よりな話をしたいんだ。なくしたもの、はちゃんと入ってるかな。僕らはそれをお祝いするために生まれてきたはずなんだ。

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