不眠症になった僕は、一匹の獏に出会った。「お前が眠らないから、悪夢が食べられない」と獏は怒っている。僕だって眠りたくても眠れないんだ。ぼやけた頭で答える。ふわふわとした思考も、獏の存在も、なんだか夢の中にいるみたいで気分がいい。この世界も夢になれば、獏は空腹にならずに済むだろう。

ふたりの子どもです

※無料で読めます。 （301字） 「あなた。子どもができました」 「え？　なんだって？」 「見てください。わたしが産んだ子どもです」 「いや。これはお前が産んだのではない。たしかに、お前が生み出しはしたが、お前が産んだものではない。これはロボットだ」 「見てください。あなたの設計図をもとに、わたしが生み出した、ふたりの子どもです」 「いや。これはふたりの子どもではない。たしかに、私の設計図をもとに、お前が生み出したものではあるが、これはふたりの子どもではない。これはロ

うさぎ・ミーツ・亀

※無料で読めます。 （1033字） 大きな栗の樹の下で、うさぎは亀に出会いました。 うさぎが亀にその歩みの鈍さについてからかうと、亀は、それならばあの山のふもとまで駆けくらべをしましょう、と答えます。 よし、わかった、とうなずいたうさぎは、よーいドンの合図で駆け出しました。 二匹の距離はすぐに大きく離れていき、とうとう亀の姿が見えなくなります。 うさぎは、しかし、亀の鈍さに油断せず、手を抜かず、途中に出会ったおばあさんをいじめるタヌキに目もくれず、一心に目的地を目指します