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ママともだち

〈いなくなったママ友〉

はじめてだった。いつか既読になるかも、と思ってたメッセージは、ずっと既読にはならなかった。

もしかして、怒ってるの?何かしたかな。私じゃないなら圭太かな。


竜くんは、相変わらず学校には来ていないみたいだった。圭太に聞いても、のらりくらりと、よくわからない返事だ。聞きすぎて、そのうち怒り出した。


しつこくするのも嫌だ。でも、もし、れいちゃんが辛い気持ちでいたら?
そう思ったらやっぱり連絡してしまうのだ。
誰のため?私の心を落ち着けたいからじゃないの?
私はずっと心配してるよって、返事くれないの?って。
それを証明するためのメッセージみたいに、月に一度の一方的な思いは、けして、既読になることはなかった。


〈わかったこと、わからないこと〉

その日はとても天気がよかった。圭太の学校では運動会があった。係りで忙しく立ち働いたけど、そわそわと視線を這わせた。
やっぱりいない。
思いきって、先生に話してみた。先生はわかっていたようだ。私のことも、れいちゃんはわかっていたんだ。
ご家庭の事情で、お引っ越しなんだと、それだけ、教えてくれた。
連絡がつかなくて、以前にも痩せ細ってしまったれいちゃんのことを心配していると伝えたら、先生はれいちゃんも竜くんも、元気だと言ってた。

それ、ほんとう?
私の気持ちを収めるために言ってない?
だけど、知るすべのない私は、その言葉を信じるしかなかった。


〈そこにあるのはただ私の気持ちだ〉

その日はずっと、天気がよかった。そのつぎの日も、空はずっと高いところにあって、昔を思い出すには十分な空気感だった。

とにかく泣けた。涙がポロポロと落ちてきて、お買い物に行っても困った。
れいちゃんのおうちの前に行ったら、見知らぬ車が停まっていた。もう別の誰かが住んでいるようだった。


なんで、気づかなかったんだろう。
卒業式も、入学式も、保護者会の時も、見かけて、それなのに声をかけなかった。またゆっくり話せばいいやと思っていた。
胸が締め付けられる。苦しくてつらい。涙が溢れてくる。

竜くん、ミカンが大好きたった。いつも食べてて、食べ過ぎるの、と笑ってたれいちゃん。たくさんもらったからって、買ったやつ、持ってくのを口実に、連絡を取ろうかと思っていたのに。


結局は、私の独りよがりだ。
れいちゃんに何があったか、どんな気持ちなのか、私には関係がないのだ。こんな呑気な暮らしをしている人に心配されたくないのだ。

そう、思うしかない、私。
気持ちが宙ぶらりんのまま、冬を迎える。