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日々是紅茶⑦「バター茶から考えたこと」

「世界仮想旅行社」の「世界のティータイム」ブータン編で、心打たれたことを書いてみている。


バター茶は、材料のお茶もバターも100%ブータンで作られていて、身近でありながら特別な飲み物なのだと知って、私はときめいた。

でも感動したのは、その後だった。

まず作り方には簡易的な方法と伝統的な方法のふたつあるそうだ。

現代では、毎朝飲むバター茶は、簡易的な方法で作られている。

保温力のある壷のようなものにバターと塩を入れて、熱いお茶を注ぎ専用のかき混ぜ棒でバターを溶かしながら混ぜて作るスタイル。

ただ、お客さんがきた時や特別な行事の時には、必ず伝統的な方法で作るという。

ガイドさんのお父さんが簡易的・伝統的両方の作り方をレクチャーしてくれた。

その見慣れぬ道具で作る未知のお茶にワクワクしながらも、静かに感動していた。

なぜなら、バター茶を作るお父さんがとても優しく道具を扱っていて、所作が美しかったから。


伝統的な製法のバター茶は、「ジャズン」という竹筒のような道具で作られる。(名前は聞いたとおりに記述したので、厳密な発音は違うかもしれない)

その道具は、今ではガイドさんの住む「ハ」族の村でも持っている家は少なく、19軒ある中のたった3軒のみとのこと。
村の人びとは、お祈りのときや、お祝い・法事など特別な時には、必ずそのジャズンを持っている家庭に借りに行くのだそうだ。
昔はみなこの道具で作っていたのだろうけど、現代では日常使いではないため、定期的に皆で貸し借りしながら使っている。道具が傷まないようメンテナンスをする意味も含まれているようだ。
また、「この道具も誰でもが作れるわけじゃないからね」と笑顔でいうガイドさん。

きっと、日本でも味噌樽を作れる職人さんが僅かになってしまったのと同じような状況なのかもしれない。
更にブータンは標高が高く乾燥しているので竹が割れたり、虫に食われたりしないように大切に使い続けることが大事なのだ。
立地により厳しい寒さと限られた食材の中で暮らす彼らにとって、このバター茶は生きるための滋養と活力の源でもある。
と同時に、このバター茶を作る工程を伝統として守ることがブータンの人の心にとって大切なことなのだろうと思った。
だから道具一つ一つをとても丁寧に扱っていて、作る工程自体はシンプルながらもそのしぐさが美しかったのだと気付いた。

この道具を使い続けて伝統的なお茶の文化を守り継いでいるうつくしい姿に、私はじんわりと感動した。

そして、これは日本の茶の湯文化にも通じている面があるように思った。

お茶を飲む人に対してだけでなくお茶やそのまわりの道具、自然に対して敬う気持ちが自然と美しい所作に表れている様子。

手始めに、「前回使ってから時間が経っているのでジャズンに少量のお湯を注いで洗います」と表現していたのだけど、これも茶道の清める所作と似ていると感じた。

道具の埃などを洗い流すという意味ですすいでお湯を捨てるのかと思ったら、なんとそのままお茶が注がれて、私はえ!と一瞬なったのだけど(多分視聴者の方もなった人いるんではないかな)、おそらく思いなおすに、素焼きのお皿や茶碗を使う際に、汚れがつきにくくなるように一度水にくぐらせるという意味合いだったんじゃないかと。

水を大切にする習慣もあるかもしれない。

でもどちらかというと、竹で出来ている道具なので直接お茶やバターのような油分を入れてしみこんでしまうのを避ける目的の方が強いんじゃないかと。

お茶は濃く煮出しているので、多少お湯で薄まっても問題ない。

そこまで分量も計算されているかは分からないが、とにかくブータンのお父さんがバター茶を作る様子は、シンプルな工程の中にこそ表れる心の美しさを見させていただいた様だった。

各々大切に使い続けている木製のマイカップに注いで飲む。というのも素敵。

遠く離れた未知の国のバター茶文化と日本の茶の湯文化。

人が美しいと心打たれるものって、何か究極的には同じなんじゃないかな。

私も、はるか遠い地のブータンの人びとや自然に思いを馳せながら、お茶を通じて何か感動を表現できる人でありたいな、と思った貴重なオンラインツアーだった。

世界仮想旅行さん、現地の方々、ミツティーさんありがとうございました。


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