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リーマンの股間にタッチ!

大阪梅田の地下街の一角に、
「リーマンの股間」
と呼ばれる場所があります。

HEP FIVEの地下1Fを出てすぐの場所、といえばお分かりになるでしょうか。梅田OPAの地下1Fから、イーマ方面へ向かう道すがらにある、小さな広場。サーティーワンアイスクリームの店舗の目の前。

そこが、「リーマンの股間」です。

この場所が何故、「リーマンの股間」と呼ばれるようになったのか。
今日は、このお話をしたいと思います。

皆様は、「ロケタッチ」というwebサービスをご存知でしょうか。

かつてLINEが運営していた、携帯&スマホ向け位置情報チェックイン系サービス。
スマホのGPS機能を利用して、外出先の特定の場所に「タッチ」すると、記録が残り、バッヂが貰えたりする、いわゆる「位置ゲー」です。

ロケタッチは、2015年にサービスを終了してしまいました。
ですが、わたしの胸には、今でも深く印象を残しています。
何故ならば、前述の「リーマンの股間」が、ロケタッチ内に設置されていたスポットだったからです。

ロケタッチでは、ユーザーが自由に、タッチするための「スポット」を設置することができます。
スポットの近くでロケタッチのアプリを立ち上げ、スポットに「タッチ」すると、

「○○(※スポット名)にタッチ!」

という文言を、TwitterなどのSNSに流すことができたりします。
そう。
つまり、大阪梅田地下の「リーマンの股間」にタッチすると、

「リーマンの股間にタッチ!」

という文言が、わたしのTwitterに大放出されていたのです。

「リーマンの股間」とは一体何なのか。
何故、この場所が「リーマンの股間」なのか。
そもそも、「リーマンの股間」なるネーミングの由来は?

ロケタッチ自体のサービスが終了して何年も経ってしまった今、もはや、この詳細を知る人は、ほとんどいなくなってしまいました。

しかし、「リーマンの股間」に纏わるエピソードは、このまま消えてしまうのはあまりに惜しい。

ですので、ここに書き残すことで、リーマンの股間と、ロケタッチを弔いたいと思います。

「リーマンの股間」というスポットを作ったのは、何を隠そう、このわたくしです。

その頃わたしは、一度社会人になった後、前職を辞して、再び学校に通うという、二度目の学生生活を送っていました。

久しぶりの「学校に通う」という体験は大変おもしろく、刺激的な日々でした。
クリエイティブ系の学校でしたので、他の学生もたいへん阿呆もとい愉快な方々ばかり。
お昼休みに食堂に行くと、ゾンビ映画を撮影しているという映像科の学生さんが、ゾンビの衣装とメイクのまま、頭に包丁を突き刺した姿でふつうにランチタイムを楽しんでいたりしました。

大阪の地下街は、そんな学校への通学路でもありました。

その日もわたしは、学校へ向かう道を、意気揚々と歩いていたのです。
ですが、少しばかり、意気揚々すぎました。
人通りの多い地下街で、わたしは少し、大きく腕を振りすぎてしまったようです。
サーティーワンアイスクリームの店舗の前に差し掛かったあたりで、後ろから足早に歩いてきたアラサーと思しきスーツ姿の若いリーマンに、わたしの腕がぶつかってしまいました。

ぶつかった場所が。

あろうことか。


股間。


「ふわっ」って感じでした。

なんか、こう、「ふわっ」って感じ。

(何がかはお察しください)

一瞬の出来事でしたので、わたしも、リーマンも、立ち止まったり、謝ったりする余裕がありませんでした。
リーマンはそのまま、わたしの脇を通過して歩いていきました。
わたしも、何も言えないまま、後ろ姿を見送るしかありませんでした。

しかし。

リーマンが後ろからわたしを追い抜こうとした瞬間。
つまり、わたしの腕がリーマンの股間にタッチしてしまった瞬間。
リーマン、小さな声ですが、確実に「ある言葉」をつぶやいたのを、わたしは聞き逃しませんでした。

曰く、




「オウフ!」




リアル「オウフ!」
マンガでさんざん目にしてきたあの台詞を、現実で口にする人を、この瞬間、わたしは生まれて初めて目撃しました。

リーマンの股間にタッチしてしまったこと。
そして、リアル「オウフ!」を耳にしてしまったこと。

このふたつを何とかして記録したいと思ったわたしは、当時ハマっていたロケタッチに「リーマンの股間」というスポットを作り、大阪にくるたびにそこにタッチして、この日の記憶を何度も何度も味わって楽しむことにしたのです。

これが、「リーマンの股間」についてわたしが語れることのすべてです。

ロケタッチは終了してしまいましたが、わたしと友人は、今でも、「リーマンの股間」を待ち合わせスポットとして大活用しています。

友人とのLINEのやりとり


皆様も、大阪へおでかけの際はぜひ、スポットへと立ち寄り、

「ここがリーマンの股間かぁ」

と思いを馳せてみてください。

(初出:2017年 ShortNote)

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