見出し画像

インタビュー:非営利ソーシャルセクターの監事の役割とは? Vol.2

  多くの団体では、監事の役割が単なる形式的なものに留まっているかもしれません。1年に一度、会計書類に目を通し、ハンコを押すだけと考える方もいるでしょう。しかし、非営利ソーシャルセクターにおいて、監事の果たすべき役割は非常に大きく、組織の信頼性や持続可能な発展に直結します。  

 北海道NPOサポートセンターでは、この間、札幌弁護士会と連携し、NPO法人の監事の職務や役割を検討してきました。その中で、NPO法人で活動する皆さんにとって、「監事って結局どこまで何をするべきなの?」ということが、よくわからないということが見えてきました。監事が実際にどのような業務を行っているのか、監事の職務とその重要性を改めて見直し、実際の現場での取り組みを明らかにするために、非営利ソーシャルセクターで実際に監事を担っている方々にインタビューしてみました!

 第2回目は、税理士として、多くのNPO等の会計顧問、税務申告を行っている、瀧谷和隆さんにお話しをうかがいました。瀧谷さんは、会計税務の専門家としてNPO等の信頼性の向上を目指すNPO法人会計税務専門家ネットワーク(通称@PRO)の理事・事務局長としても活動されています。(以下、インタビュアー:I、瀧谷氏:K、と表記)

(2024年8月13日、北海道NPOファンド事務所にてお話をうかがいました。)

 Q:まず、瀧谷さんが監事をされている「認定NPO法人北海道NPOファンド」について教えてください。

A:「認定NPO法人北海道NPOファンド」は、北海道内で活動するNPO等を支援するための基金や助成プログラムを運営している組織です。社会、地域の課題解決や市民活動の推進を目的として、NPOの資金調達や活動のサポートを行っています。 

 

◆監事の役割について再認識を

Q:瀧谷さんは税理士としても多くのNPO等に関わっていらっしゃいますね?

A:そうですね。ただ、税理士としての関りと、監事としての関りは全く違うものです。たまに、「税理士さんが見てくれているならば監査は問題ないだろう」とおっしゃられる監事の方もいらっしゃるのですが、監査とは決算書が正しく作成されているかだけでなく、意思決定が適切に行われているかどうか、といったことも含まれます。たとえば、物品購入や人事に関する決定が適切かどうかなど、組織運営全体が監事のチェック対象となります。そういった点から見て、顧問税理士と監事が同じ人、ということについては、法的には問題ないですが、倫理的な点からはあまり推奨できないという立場ではあります。税理士は経営者と一緒に決算書を作成する立場であり、自分が作成した決算書を自分で監査することにはおかしいかなとは思いますので。

 

◆会員の代表としての視点

Q:監事の役割の中で特に重要な点は何だと考えますか?

A:監事は、会計だけでなく、意思決定の適正さをチェックする役割を持っていると思います。団体が行っている事業が、会員の総意に基づいているか、適切に資金が使われているかを確認することが重要です。理事会でしっかりと議論されているか、そもそも理事会はちゃんと開かれているのか、会計上は問題なくても、この事業はなぜやっているの?ということも、会員の代表としての立場を持ちながら監事は確認し、必要に応じてアドバイスをしないといけないですよね。

 Q:団体から監事として期待されていることはどのようなことだと思いますか?

A:北海道NPOファンドは認定NPO法人だから、やはり一番は寄付金が目的通りに適切に使われているか、でしょうね。それから、万が一トラブルが起こったとき、人間関係で対立したりした時に、どれだけ中立的立場で発言できるのか、ということも考えないといけないと思っています。そのためには、定期的に開催されている理事会に参加したり、都度活動しているスタッフとのコミュニケーションも取ったりしないと、現場で何が起こっているかがわからないですよね。

 北海道NPOファンドは規程類もとても多いので、それらが適切に運用されているかの確認、実情に合わせてアップデートするということも考えていかなければならないと思います。粉飾などの事件が起こったときに、監事が、「知らなかった」「よくわからなかった」では済まされないですから。

◆監事同士で相談し合える場を

Q:監事の育成にはどのようなことが考えられますか?

A:監事同士の横のつながりというのをつくっていければよいなと思っています。NPOの監事って何やればよいかというのがわかりにくいし、相談できる場も少ないです。表に出てくる立場ではないのに、問題が起こったときには最前に立たなければならない立場ですから、情報交換や研修の場を設けることが重要だと感じています。

 ここまで監事の仕事は大変だ、、という話ばかりしてしまいましたが、監事も監査報酬を設定することも可能なので、NPOの皆さんには、日当規程などで定めたうえで、監事に報酬を支払える仕組みも検討してほしいですね。

Q:最後に、ソーシャルセクターで活動されている方々に向けてのメッセージをお願いします。

A:今NPOの監事を担っている方々にむけてということであれば、監事は多くの方に感謝されたり表に出たりするような役割ではないけれども、重要な役割だから、続けてほしいということがあります。士業の方々に監事になってほしいということはあるかもしれないけれども、それよりも、ちゃんと団体の活動のことを知ろうとしてくれて、共感してくれて、しっかりと見てくれる人に監事になってもらえればいいなと思います。同じような分野で経営されていたりとかする人とかのほうが、もしかしたら監事としてチェックするべき部分などを抑えられるのかなとも思いますね。


札幌弁護士会との会合では、監事のなり手がいない、というNPO法人の悩みについて、NPO法人の理事が他の団体の監事になるなどの仕組みをつくれれば、NPO同士のつながりや人材育成につながるのではないか、という話をしています。今後も、非営利ソーシャルセクターの監事の役割と職務について、検討していきたいと思います。
 「監事になってしまったけれど何をすればよいかわからない」「監事を紹介してほしい!」「ウチのはオススメ!」などございましたら、当センターまでぜひ教えてください。

 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?