ファイターズに足りないものは何か。

どうしよう。ファイターズがあまりにも勝てない。ファンにはどうすることも出来ない、応援は届いているのか分からないから、余計に自分の無力さを痛感する。

さて、ここまで23試合を消化し6-14-3と圧倒的負け越しのファイターズは、このまま行くと最悪の場合、5月下旬にはCS権すらも失いかねない危機的状況である。

故障者やコロナ感染などによる長期離脱者もいないのに、なぜファイターズは勝てないのだろう。

それは、絶対的存在がいないからだ。

絶対的存在というのは、何もメジャーで通用するような大型選手を指すものではない。チームが信頼し、こいつならやってくれると期待を持てるような華を持った選手である。もちろん期待できるだけでは意味がない。その期待に応えられるだけのパワーや技術があることは前提条件となる。

分かりやすい選手で例を挙げるなら、ソフトバンクの柳田悠岐だろう。彼の前にランナー出しておけば確実に点数取れるっていう絶対的信頼は、相手に対しても大きなプレッシャーを与える。柳田に打たれたら複数点入るかも……と弱腰になってしまったらもうおしまいだ。簡単にスタンドに運ばれてしまう。柱となる選手が活躍すると、当たり前だが連鎖が起きる。その連鎖は良い循環を生み、自然と勝利が転がり込んでくるのだ。

もちろん、絶対的存在が不振に陥ることもある。そういう時は若手や他の部分がそれをカバーする。そういうことが出来るチームこそ、最強なのではないだろうか。

では、今のファイターズにはそういう選手が果たしているだろうか。主力はスタートダッシュを決められていないし、先発陣にも中々勝ちをつけてあげられない。先週の東京ドームでの試合で、やっと開幕投手の上沢に白星をプレゼントできたが、好投を見せるルーキーの伊藤は未だ勝ち星なし。打線に華はなく、正直言って地味なチームだ。

しかしこの状況は今に始まったことではない。やはり大谷翔平のメジャー挑戦以降、ファイターズには華のある選手がいなくなったと思う。何かやってくれるとイタズラな笑みを浮かべながら楽しく試合を見ていた2016年。やはりあそこがピークだったように感じる。圧倒的な存在感を放つ選手は、大谷以降、今のところ出てきていない。仮にその存在になりうるとすれば、最短ルートは伊藤だと私は考えている。頭で野球が出来るやつは強いと誰かが言っていたから。

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もうひとつ、今のファイターズに無いものがある。それは諦めないという姿勢だ。

先日の西武ライオンズとオリックスの試合。最終回にクローザーの獅子軍・増田達至を攻略して4得点を挙げ、オリックスが逆転サヨナラ勝ちをしたのだが、その試合のお立ち台でのT-岡田のコメントにヒントがあった。

「(リクエストの判定中、後続の杉本に)絶対繋ぐから任したぞと、繋ぐ気持ちで行きました」

この場面、先頭の宗と続く吉田正尚が連打で出塁するも、西武の増田が何とか後続を打ち取り二死1,2塁と勝利まであと一歩のところまで迫っていた。5人目の打者は代打のジョーンズ。イージーなサードゴロだったが、吉田に代わって代走に出ていた小田の好走もあり一度はアウト判定となったがリクエストで覆りオールセーフ。フィルダースチョイスが記録され満塁となったのである。

連打の後の連続アウトでの9回二死満塁。点差は3点。簡単にひっくり返せる訳ではないけれど、ここで今季未だ本塁打ゼロのT-岡田に打席が回ってきたら、ファンは当然彼の一発を期待するだろう。しかし、彼はただ繋ぐこと、まずは一点をとることを意識していた。杉本は勝負強いバッティングが魅力的な中嶋監督率いる新チームの主軸選手の一人である。彼に繋げば逆転も見えてくるという信頼と、諦めない気持ち、繋ぐ意識がT-岡田の走者一掃の同点打、さらには杉本の逆転打を生んだのである。

これもファイターズに置き換えてみると、足りないものが見えてくるのではないだろうか。顕著にそれが現れたのは4月20日のロッテ戦。同点のまま迎えた8回裏、マウンドには4人目の宮西が上がった。ファイターズにとって絶対的リリーフで鉄腕と称される彼だが、この日は先頭の山口に痛恨の勝ち越し弾を浴びる。この瞬間、一気に雰囲気が変わった。宮西さんが打たれたならしょうがないとでも言うように、バックもベンチも勝つことを諦めたような感じだった。それでも宮西は後続を連続三振に斬り、二死走者なしの場面を作る。だがロッテの勢いを止めることは出来ない。岡がヒットで出塁すると盗塁を決めチャンスを広げる。さらに荻野が三塁打を放ち追加点をあげたところで、ファイターズは玉井にスイッチ。マーティンには四球を与え出塁を許すと、続く中村奨吾の場面、初球で盗塁を決められてしまう。二死2,3塁となり、二球目をセンターに運ぶと、定位置よりやや深めの淺間の前に落ちる2点タイムリーとなってしまい、この回で一挙に4得点を献上。このまま敗戦となった。

この試合の中で、解説を担当していた里崎智也氏が指摘していたのが、簡単に次の塁を踏ませてしまうなどの場面に見られる、ファイターズの諦めの姿勢だった。確かに2度の盗塁は、際どいタイミングとかでもなく、本当に易々と決められてしまったものだった。特にマーティンの盗塁がそれである。中村を打ち取れていれば2点差で9回を迎えていたし、8番からの打順だが、走者を出せれば上位に繋がる好打順と言える。勿論たらればにすぎないのだが、それでもあの場面を最小失点で切り抜けることが勝機を導く上で重要だったことは間違いない。簡単に次の塁を取られることは、それだけ相手に得点のチャンスを与えるということを意味する。次の点は絶対にやらないぞという強い意志が見えてこないプレーだったように思う。

ビハインドのある試合では、よく「次の試合に繋がるプレーを……」と実況も口にするが、それはただヒットを打つことではないし、それを目的にプレーをしていては勝てるわけがない。負けないと強く思い、繋ぐ野球が結果的に点差を埋め、試合をひっくり返すチャンスが巡ってくるのである。仮にひっくり返せなくても、その諦めない姿勢が翌日の試合に繋がる好循環を生み、いい流れを持って試合に入れるのだ。簡単に負ける、負けを認めてしまうように見える今年のファイターズには、絶対に勝つぞという強い気持ちを持ってプレーする姿を見せて欲しいと思う。

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さあ、今日の試合はエース上沢が登板する。本拠地札幌でファイターズは未だ一勝も出来ていない。ホームゲームの最初のお立ち台に上がった上沢が、再びお立ち台に上がり、札幌に勝利を届けることが出来るのか注目が集まる。とにかくファイターズの選手には最後まで諦めることなく、俺がヒーローになるんだという強い気持ちをもって試合に臨んで欲しい。もちろん、ファンである我々も、最後の一球まで諦めずに応援しよう。

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