ファイターズが後半戦、ドンデンガエシするために必要なこと

オリンピックも終わり、プロ野球は今日から後半戦が始まる。現時点でファイターズは首位と10ゲーム差の最下位。今回は前半戦を振り返りながら、後半戦においてファイターズが逆転優勝するために必要なことはなにか、野球素人ながら考えてみたいと思う。
毎度の事ながら、筆者は野球未経験であることを承知の上で読み進めていただきたい。異論は認めるが、選手を始め当記事における誹謗中傷はお控えいただけると幸いである。今回も長編につき、目次なるものを付けているので、暇な時間に少しずつ読み進めたい方は活用いただければと思う。

(1)投手編

前半戦、最大借金15を背負い最下位に沈んだファイターズは、混戦と言われるパ・リーグの中で優勝争いに食い込むことが出来なかった。首位とのゲーム差が3.5というぐちゃぐちゃな状態になった時もあったが、オリックスが首位でソフトバンク打線が貧打など話題ばかりのパ・リーグにいながら、ほぼ話題ゼロでニュースでも触れられることはほぼない空気球団みたいになってしまった。それでもすごい打たれてるとか、貧打すぎて話にならんとか思うような絶望感みたいな感覚はあまりなく、なんでこんなに負けてるんだ?という感じがするというのが正直なところである。筆者の感覚が麻痺しているだけなのかもしれないが、なんでこんなことになっているのか考えなければいけないと思う。(考えたところでできることなんて応援しかないのだけれど)
そんなわけで、前半戦の投打について考えてみたい。

まずは投手陣の主な成績を見ていこう。先発を任された主な投手陣の勝敗と防御率をまとめてみた。

先発陣は昨年よりローテーションを固定して回せていたと感じている。所謂ショートスターターというものを今シーズンはほとんど置かなくなったことで、先発陣が立ち上がりに崩れない限り中盤まで投げるという試合が多かったと思う。そのうち、チームトップの7勝を挙げているのがルーキーの伊藤大海である。

先発を担う投手の中で最も低い防御率で、リーグ内3位に入るほどの安定感を誇る。開幕直後は三振を量産するタイプだったが、三振を狙いすぎることで制球力を乱したことでゴロで打ち取ることが増えた。また交流戦中に投球フォームをアドリブで二段モーションに変更して以降、安定感がさらに増し、多彩な球種と共に相手打線を翻弄するようになった。侍ジャパンの選手にも選ばれたことで、更なる飛躍が期待されている。間違いなく後半戦も勝ちを期待できるチームの白星請負人と言えるだろう。

ローテーションに入っている先発陣では伊藤の他にエースの上沢直之だけが勝ち越しで前半戦を終えている。だが上沢は9回完投し勝利した6月18日のホークス戦以降、勝ち星から遠ざかっている。加藤貴之バーヘイゲンは昨シーズンほど調子を上げられていない。加藤の場合は交流戦で大きく調子を崩してしまったし、バーヘイゲンは途中合流ということもあり、なかなか状態を戻すことが出来なかったように感じる。中でも私が個人的に注目しているのが、今季楽天から移籍してきた池田隆英である。先発ローテーションを担った主な選手の中でも救援率が低い。自責点と失点の間に最も差があり、味方のエラーなどによる失点の多さが目立つ。残塁や失策数が多いのは昨シーズンから課題とされている部分だが、その点が池田の3勝9敗という数字に現れていると言える。先発陣がゲームメイクをして勝ち星を先行させない限り、借金はなかなか減らない。ローテーションをある程度守って投げられているからこそ、彼らが白星をより多く挙げられるようになることが這い上がる条件のひとつではないだろうか。

続いて、リリーフの成績を見ていきたい。

リリーフ陣としては序盤、今季から抑えに回った杉浦稔大が被弾するケースが多く、最終回に逆転……という展開をよく目にした。接戦でも負けるというのが序盤だったが、前半戦終盤に杉浦の調子が戻ってきたことは後半戦に向けてとても良い要素だと感じている。また、河野竜生と堀瑞輝は所謂「勝ちパターン」で登板するケースが多く、防御率も共に1点台と非常に安定している。7回から河野→堀→R.ロドリゲス→杉浦と4人の投手リレーが確立できるようになれば、自ずと白星も手にする機会が増えるだろう。

だが、調子がいいとされている河野や堀が疲労や怪我での離脱する可能性もゼロではない。彼らだけに依存するわけにはいかないのである。そこで後半戦に注目したいのは宮西尚生秋吉亮ベテラン陣の再起だ。秋吉に関してはキャンプから二軍での調整となり、不調からの脱出を図っている。クローザーとしての復帰というよりは、終盤で相手をビシッと斬るような不動の存在として戻ってくることを個人的には期待している。宮西の場合は、シーズンの中で調整をしながら登板するタイプであるが、今季はそれが上手くいっていない苦しい展開が続いている。キレの良い宮西らしい投球を後半戦でたくさん見られるようになれば、自然と勝ちゲームは増えてくるのではないかと感じている。先発に右腕が多いチームであるからこそ、ベテラン左腕の存在は優勝に向けて不可欠だ。後半戦はこのベテラン陣の活躍にも期待したい。

(2)打撃編

リーグワーストの数字が目立っている打撃面は、主力が全く機能しなかったことが原因であるところに帰着する。中田翔はシーズン開幕前から痛めていた腰を悪化させ、ギックリ腰で担架に乗せられたまま二軍で調整することとなり、不振が続いた大田泰示も二軍行き。近藤や西川といった出塁率の高い選手たちも開幕直後から本来の力を発揮できずに苦しい状況が続いていた。

当然、彼らの再起は優勝に向けて必要不可欠なわけだが、オリンピック期間中に行われたエキシビションマッチやファーム公式戦の様子を見る限り、先に名を挙げた選手たちに復調の兆しが見られたことは収穫だと感じている。安打量産よりもパンチのある本塁打のような景気のいいものを見たいと思うのは欲深さの表れかもしれないが、後半戦は彼らに快音が戻ることを期待したい。

そんな主力の不信の中で輝きを放ったのが、長く苦しいシーズンを過ごしてきた中堅選手たちである。その筆頭が今季リードオフマンの役割を担いセンターラインで要として働いている淺間大基と、育成からの再昇格で頭角を現してきた髙濱祐仁である。彼らの共通項が横浜高校出身であることから、ファンだけではなくプロ野球好きからも注目を集めている彼らは、今季欲しいところでの活躍が目立っていると感じている。

淺間については「4人目の外野手」としてキャンプから注目をされてきていた。基本外野は近藤西川大田の3枚を想定していたが、メジャー行きを断念せざるを得なくなった西川がメンタル的にも不安定な状態が続いたため、その枠に割って入る形で淺間がその存在感を出してきていたのが春キャンプだった。高卒でプロに入った直後からかなり注目をされていたのに長く怪我に悩まされ、勿体ないシーズンを過ごしてきた淺間にとって、今年がとても重要なシーズンであったことは容易に想像できる。打撃だけでなく守備でも安定感を見せてくれるところもまた、評価ポイントであると感じている。若手から万波なども外野の一角を狙いに来ているが、彼らよりも淺間が群を抜いていると思うのは、本塁返球時の体幹の強さだ。ブレることなく真っ直ぐに、しかも山なりではなく低く鋭い送球で、幾度もチームを救ってくれている。後半戦も若きスピードスターがチームを牽引できるか、注目したい。

髙濱はコロナ禍で離脱者が相次いだ5月以降、その活躍が目立っている。中田がシーズン序盤から不振だったこともあり、一塁手としての守備機会が多いが、二塁も守れるユーティリティプレイヤーの一人である。特に7月6日の旭川での西武ライオンズとの試合で、そこまで39試合連続無失点の日本記録を樹立していた平良海馬から放ったサヨナラの一打は記憶に新しい。2番打者での先発起用が多い中でも、彼の言葉からは「自分が決める」という強い意志を感じる。野心的な若手が少ない印象の近年のファイターズにおいて、こういう選手の存在は貴重だ。また、これまで大田泰示が担ってきた強気の2番打者の理想像に近い形であるのも、栗山野球における大事なポイントであるように感じる。主砲として4番に座ってほしかった中田が謹慎となった今、大田は中軸を担うことになると予想されるからこそ、「新・恐怖の2番打者」としての髙濱の活躍に期待したい。

(3)守備編

昨シーズンも目立ってしまった悪い部分、今季はどうだろうかと注目してきたが、付け焼き刃でどうにかなるものではないからこそ奥が深い守備。今季も失策数はリーグワーストに迫る45という数字は褒められたものではない。昨シーズンの振り返りのnoteでも渡邉、野村、清水の3選手については触れたが、特にエキシビションマッチでも野村はエラーを重ねていたところに、チームとしての未完成さを感じてしまった。だが昨年との大きな違いは、ファイターズにも規定到達選手で守備率1.000を誇る選手がいるということである。それが先に打撃編で触れた淺間である。同じく外野手で1.000を持つのはロッテの荻野貴司や西武の金子侑司、ソフトバンクの真砂勇介だ。この顔ぶれを見ていると、確かに守備範囲の広さや球際の強さを感じられる選手が揃っていることが分かる。特に淺間は5つの補殺を記録しており、この数字はマーティン(ロ)や柳田悠岐(ソ)らに次ぐ数字である。外野手は他にも大田や近藤などの強肩かつ球際も強いベテランや、万波などの若手など選手層が厚い。万波は補殺時に送球が大きく逸れるなど改善の余地はあるが、正直昨シーズンのチーム全体としてどん底だった守備からすれば今後に期待ができる要素であると感じている。9回打ち切りだからこその守り勝つ野球に後半戦は注目したいところである。

(4)後半戦のキーマンは……?

昨シーズンは投打が噛み合わず、守備もボロボロと散々な状況だったが、少なからずそこよりはいい状態に上がってきているのではないかと感じている筆者としては、後半戦最も必要なものは破壊力であると感じている。今年は延長のない9回打ち切りシステムの導入により、引き分けの試合がとても多い。接戦が多いということは、それだけ1点が重要だということであり、一撃で試合を決めることだって容易に可能であることを示している。既に多くの解説者も名を挙げているが、私もあえて後半戦のキーマンは大田泰示であると断言したい。

6月末に登録を抹消された大田は、これまで主に二軍戦で調整を行っていた。抹消される前の大田は打率.212と低迷し、16打席連続無安打という状態だった。打てなくても全力でヘッドスライディングする姿や白球を追う姿は、チームの士気を何度も高めてくれていたが、それすらも見受けられないほどに苦しい状態だった。
しかし、その後大田は鎌ヶ谷で躍動する。打率は3割に迫り、短期間で本塁打を4本放った。好成績を残し復調の兆しを見せた大田は五輪休暇期間中に開催されたエキシビションマッチで一軍に合流。チャンスメイクをしたり適時打を放つなどしっかりと首脳陣にアピールをした。

今季のファイターズは12球団で最も遅いチーム一号を記録するなど、長打がなかなか打てないでいる。後半戦前には電撃トレードが行われ、長距離打者である木村文紀と佐藤龍成を獲得。チームが今一番求めるものは打力であることを示した結果であると感じている。中田不在が確定したことで、やはり誰かが4番の代わりにならねばならない。シーズン前から4番も狙うと意気込んでいた大田が、チームを打撃や守備で牽引することが出来るかどうかというのが後半戦の大きなポイントであると感じている。

(5)最後に

正直、前半戦は「もう無理だ……」と絶望したタイミングが何度もあったし、クリンチナンバーを毎日確認しては嘆き、プロ野球ニュースでも触れられることなく順位のみ告げられて終わるみたいな、悲しい夜を過ごしていた。とはいえ、セ・リーグよりも首位とのゲーム差は開いていないし、絶望するにはまだ早すぎるのが現状で、むしろ「まだ行けるのでは!?」と感じさせてくれたエキシビションマッチでの各選手の活躍は、後半戦、ファイターズが台風の目になるかもしれないという可能性を見せてくれた。後半戦直前にショッキングな出来事があって、チームもファンも動揺が隠しきれない状況は否めないが、電撃トレードにより移籍する新戦力は皆が知るパワーヒッターであり、攻守にわたる活躍が期待できる選手たちである。オリンピックで活躍した伊藤や近藤はもちろん、チームに残り約1ヶ月練習を重ねた選手たちのハツラツとしたプレーをたくさん見て、たくさん楽しませてくれることを大いに期待したい。

こんなギリギリに記事を仕上げることになってしまって、もはや何を書いているのかも分からないこんなものを最後まで読んでくれた貴方、どうもありがとう。ファイターズの下剋上を見届けるべく、ファン一丸となって共に応援することが出来たらいいなと思っている。

一勝の喜びを、みんなで分かち合おう。選手も、ファンもチームだから。

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