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学校の衛生管理マニュアルを読むと意外と興味深い

現在10月以降の緊急事態宣言は解除の方向に向かっており、夏休み延長・学校や塾でのクラスター増加などの緊迫感があった9月初旬のような緊張感はだいぶ緩和しつつあります。ただ学校の開校に当たっては少し不思議な感染症対策などの話も話題になりました。
本稿ではこのような保護者目線では少し不思議な感染症対策は文科省の衛生管理マニュアルに振り回された部分もあるのではないかな?と感じたのでこちらのマニュアルの中で興味深い話をいくつか紹介したいと思います。

衛生管理マニュアルについて

新型コロナウイルスの感染症対策について、学校の衛生管理マニュアルと言うのがあるのはご存知でしょうか。
最新版は5月28日に修正されているようで以下のリンクから確認出来ます。

学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル
~「学校の新しい生活様式」~

本稿ではこのマニュアルからいくつかのトピックを紹介していきます。

給食での対策はどのように扱われているか

東京は現時点では最高のレベル3の感染地域と考えられますが、給食ではどのような対策が推奨されているでしょうか。

P.59【レベル3地域】 
通常の提供方法による学校給食の実施は原則として困難ですが、適切な栄養摂取ができるよう、配膳の過程を省略できる品数の少ない献立(例えば、主菜と具沢山の汁物等)を提供することや、給食調理場において弁当容器等に盛り付けて提供することなどの工夫が考えられます。それらが困難な場合には、少なくとも配膳を伴わない簡易な給食(パン、牛乳等)を提供することも考えられます。 また、持ち帰りや配布を含めた食事支援の工夫について、保護者の希望や同意及び地域の実情を踏まえ検討してください。

実は5月のマニュアルですでに簡易給食について言及されていたのです。埼玉の学校で本当にパンと牛乳が給食に出されて衝撃を受けた父兄は多いと思うのですが、あれも突然教育委員会レベルで奇策を考えた、と言うわけでもなく、元々は衛生管理マニュアルに書かれていた1オプションを選んだだけだったのです。

ただ、色々な感染症対策が行き詰まってこのようなオプションを選択することは否定されていない、と言うレベルのオプションを積極的に採用することは想定されていなかったのかな、と思いますし、学校側はこのような給食の提供を「感染者が出たときに濃厚接触者を出さないための対策」としていたことに問題があったのではないかと思います。

保護者が学校に求めるのは、「クラスで感染者が出ましたが、学校側の入念な対策によりマスクを15分以上外すことはなかったので濃厚接触者はいませんので明日から普通に授業します」と言う対策を取ることではありません。これだけ空気感染が疑われる中、飛沫感染のみで定義される濃厚接触者に自分の子が該当するかしないか?なんて事は保護者からしたらどうでもよくて、「保健所に報告される濃厚接触者はいませんが、感染症の拡大防止の観点から症状のない方も積極的に検査を受けることをお勧めします」くらいの事を言ってもらえる方が遥かに安心できるのではないかと思います。

教室には20人まで!

公立校は35人学級生が順次実施されているところだと思いますが、まだ40人近いクラスもあるのではないかと思います。
ちなみにレベル3地域では以下のように身体距離を2m以上空けることが推奨されています。

P.43 【レベル3地域】 
児童生徒の間隔を可能な限り2メートル(最低1メートル)確保するように座席を配置します。 このような形で学校教育活動を行うためには、学級の規模に応じ、施設の制約がある場合には、学級を2つのグループに分けるなど、分散登校や時差登校を適宜組み合わせて、異なる教室や時間で指導を行う等の対応が必要となります。

 具体的に40人学級の教室配置も図解付きで載っています。
要は半分にしろ、という事ですね。

P.45 より

ちなみにうちの学校でも副校長先生にこの話を聞いてみたのですが、「クラス20人にしても先生が倍にできるわけでもオンラインで授業する方針でもないので普通に無理なのでここは目を瞑っています」と言う感じの反応でした。

この対応が良いか悪いかは本稿の主旨では無いので一旦置いておきますが、分散登校やオンラインとのハイブリッド授業を実施した学校はこのガイドを守ろうとしたのではないかな、と思います。本来20人以上の学級になっている学校は衛生管理マニュアル通りに運営しようと思うなら分散登校や時差登校を駆使して教室の密度を下げるのが正しい考え方だったのではないかと思います。でもここでは「隣のクラスをオンラインにして空にしても40人学級は20人に出来ないよね」とか根本的な運用面での言及がなかったので全体的に一貫性の無い対応になってしまったように思えます。

また、上記のような施策で教室の密度が減らせたのであればよいですが「午後からオンライン授業」とかはほぼ冗談に近い案だと思うのでこう言う話になったところはさすがに迷走してしまったのかな、と思っています。

教職員の感染症対策は大丈夫?

ちなみに感染症対策についても言及されています。ちょっと内容を見てみます。

7.教職員の感染症対策 
教職員においては、児童生徒等と同様、「2.基本的な感染症対策の実施」を参考に、感染症対策に取り組むほか、飛沫を飛ばさないよう、マスクを着用します。また、毎朝の検温や風邪症状の確認などの健康管理に取り組むとともに、風邪症状が見られる場合は、自宅で休養します。 

また、教職員については、休みをとりやすい職場環境も重要です。具体的には、急遽出勤できなくなる可能性も想定して、教職員間で業務の内容や進捗、学級の状況等の情報共有を日頃から行うことや、教職員が出勤できなくなった場合の指導体制等の校務分掌について検討を進めることなどの工夫も有効です。 さらに、教職員本人が濃厚接触者となった場合や、同居家族に風邪症状があるなどにより出勤できない場合に、業務をテレワークで行えるよう、必要な規程等を定めることが考えられるとともに、ICTを活用したテレワークの実施については、「新型コロナウイルス感染症対策のために小学校、中学校、高等学校等において臨時休業を行う場合の学習の保障等について(通知)」(令和2年4月21日付け文部科学省初等中等教育局長通知)34の3(2)を参照してください。 なお、文部科学省において、事例集35も作成しています。 

あまりPTAの立場で言うことでも無いかな、と思って静観していますが、当然こう言う準備はしているのですよね・・・

今回、個人的に非常に残念に思えたのは夏休み延長の議論では色々な専門家立場の方が「子供の死亡率の劇的な増加のような傾向はなく、依然大人より重症化や死亡のリスクは低いので閉めるべきではない」と言う見解が各所から出たことです。

現在の新型コロナウイルス感染流行下での学校活動について(日本小児科学会)

上記のような見解は専門家の見解だと思いますので子供の脅威についての考察については異論は無いのですが、なぜ教員の危険について一切議論されていないのでしょうか?
(上記の声明には教職員や関係者はワクチン接種を積極的に実施すべき、と議論されていますが学校関係の文書にはこのような議論が抜けているように思えました)

少なくとも9月時点では教員の希望者が全員ワクチン接種ができているとは考えにくい状況でした。学校が開けられるべきだ!と声高に主張するのであれば1週間でも職域接種を実施して教員の希望者に最低1回はワクチンを打てるような事が考えられても良かったのでは無いかな、と思いますし、どこかで教員は公務員だから文句も言わないし・・・と言う感じで兵隊のように扱われていないかな、と言うのが心配になりました。この辺は是非教員の本音などを聞いてみたいな、と思っているところです。

最後に・・・

ひょっとしたら10月以降はこのような議論は下火になっていくかもしれませんが、第六波などにも備えてもう少し現実的な運用を議論してもよいところなのかな、と思っています。

個人的には私は保護者の立場ではあるものの、あまりに教員の安全性や負担を軽視した議論になっている事が今回はとても気になったのでこの辺のバランスも是正されていくとうれしいな、と思っています

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