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「みなし輸出管理の明確化」における民間企業の負担増加への愚痴


みなし輸出管理の明確化とは

「みなし輸出管理の明確化」とは、2022年5月1日法改正により導入された技術管理の強化のことです。

これまでは非居住者への技術提供が役務許可申請の対象となっていましたが、本改正により、下記の特定類型とされる居住者に対しても、役務許可申請が必要となりました。

<特定類型>
①外国政府や外国法人等との間で雇用契約等の契約を締結し、当該外国政府や外国法人等の指揮命令に服する又はそれらに善管注意義務を負う者
②外国政府や外国法人等から、年間所得の25%以上の経済的利益(奨学金等)を受けている、または得ることを約している者
③国内において外国政府等の指示の下で行動する者

https://www.meti.go.jp/policy/anpo/law_document/minashi/meikakukanitsuite2.pdf

これは、特に日本国内における技術の流出による安全保障上のリスクを防ぐために重要な規制となります。

というのは分かっているんですが、これを遵守するのに民間企業側の負担大きくね?と思った次第です。

(恐らく)立法趣旨を超える改正

「みなし輸出管理の明確化」における改正の意図としては、入国後6カ月を経過した外国人、日本法人等に勤務する外国人の方々に役務許可申請することなく、改正前は役務提供出来ていたという制度の穴を埋めるために実施されたものかと解釈しています。

つまり、居住者扱いになってしまう外国籍の人に技術が流れ放題だったわけです。

だったら外国籍の居住者に技術提供がされないよう、国が管理すればいいじゃん。

国「国籍での管理はしてねえんだよ」
民間「なんだってー!」
国「お前らこの特定類型って基準決めたから、技術見せる前に確認してな」

こうして特定類型該当性を確認する仕事が、民間企業で爆誕したのである。

日本人外国人関係なく、誓約書を取って特定類型かを管理するのは結構手間です。かといって、無許可の役務提供リスクがあるので、確認しないわけにもいきません。

先進的な技術研究をやっている大学は、膨大な人数の学生から誓約書を取らなければならないので、さらに大変ではなかろうか。

民間企業での管理負担増加

今回私が問題視しているのは、民間企業での管理負担の増加です。

昨今の安全保障貿易管理というのは、もともと軍事用途の貨物技術を輸出しないようにという制度から、経済面での安全保障という側面が強まっています。直近では半導体関連の規制が強化される傾向にあり、リスト規制の運用通達・役務通達も続々と改正されています。

リスト規制貨物・技術を扱っていないからと涼しい顔をしていた会社も、ある時期から急に輸出管理に関する管理義務が発生する可能性もあるわけです。

大手企業は専属の輸出管理部門を抱えていて対応は造作もないかもしれませんが、全ての中小企業が今回の「みなし輸出管理の明確化」を的確に理解し、いきなり管理できるものでしょうか。

この先、法改正によって輸出管理業務がますます複雑化していき、民間企業の負担が増加していくことを懸念しています。

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