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RMKのBAさんの話

二十歳の頃、バイトの合間にファンデーションを買いに百貨店に行った。
30分でファンデーションの色を合わせてもらい、さらに購入しなければならないミッション。でも、なかなか決めることができなかった。

どのブランドもとても良くて悩んで、時間ばかり過ぎていた時。
RMKに寄った。もう時間はなくてその日はこういうのがかるんだ…と見ていた時だった。
「ファンデーションをお探しですか?」
美容部員のお兄さんに声をかけてもらった。
「何を使っても浮いてしまって…」と悩みを早口に言う。今日はもう時間がないと伝えると、試供品をくれた。
「試してみて、いいのがあったら買いに来てください」と優しい微笑みで言われ、ときめいた。

ありがとうございます、と受け取ったあと、お兄さんが頬を触ってもいいかと聞いてきた。
どうぞ、と触ってもらって一言衝撃的な言葉をもらった。
「水分量が足りてないから、毎日パックするといいよ。安いやつでいい、うちのじゃなくてもいいから」
バイトの時間が差し迫っていてそれ以上聞けなかったが、あの20秒は時が止まった。
一瞬触れた肌のことがそんなに分かるのか!専門職ってすごすぎない?
鳥肌がたった。

後日談にはなるが、無事にそのお兄さんからクリームファンデーションを買った。今はリキッドを愛用しているが、それもお兄さんのお勧めがあってこそだ。
お兄さんはしつこく商品をお勧めしてこない。いつも的確に欲しいものを与えてくれる。
その上で、わたしの好みを完全に把握しており、口紅とかをすすめてくる。
商売上手だなぁと思う。

お兄さんの転勤が決まったのはリキッドファンデーションを勧められた次の買い物の時だった。
いつものお兄さんを探してもおらず、お休みかな?と思いその日担当してくださった方に聞くと、「あー、転勤になりました」と言われた。少しショックだった。
あのアドバイスを聞けないと思うと寂しかった。お礼も言えずに消えてしまったお兄さん、少し寂しい。

新しい店舗は教えてもらわなかったし、聞きたいとも思わなかった。
また、どこかで出会う機会があれば。その時は必ずお礼が言いたい。今でも毎日パックするのはお兄さんのおかげだ。

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