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理想の上司

日曜日の夜だ!最近冷蔵庫に高めの飲み物(トマトジュース・飲むヨーグルト・牛乳など)を常備するようになったら明らかに酒量が減った。シャリキン(キンミヤ焼酎を凍らせてシャーベット状にしたもの)にストゼロを注いで飲んでいた頃からすれば信じられない進歩だ。

子どもが大きくなるにつれて育児にまつわるストレスが減り、アルコールで無理矢理正気を失う必要がなくなってきたのも酒量が減る一因かもしれない。いずれにせよ良い傾向だ…。

質問に答えるぞ。

わたしは市中病院で働く内科レジデント1年目です。同性の先輩から無視されたり、冷たい態度をとられるようになりました

直接の会話は一切なく、カルテ上に指導内容の記載があるのを見て後追いする日々です。冷徹な対応をされるので、なるべく人前で話しかけるように心がけています。

性格や考え方が合わないのだろうと思います。ただ、わたしとしては冷たい仕打ちに感じ、職場のストレスの大部分をこの件が占めています。

仲良くする必要はないし、割り切るしかないとわかっているのですが、話しかける時は動悸がひどく胃が痛くなり声が震え、かなりつらく感じる日々です。

1年目という未熟な立場で1人で判断ができないのもつらさに拍車をかけていると思います。 もうすぐ11月になり異動まであと5ヶ月と考えるとやっていけるしやっていくしかないと思っています。

でも、どうしてもつらく家でも一人で胸がいっぱいになり、これを書きながら涙が出ます。 心の持ちようやつらいときの切り替え方など、その他なにかお気づきの点がございましたら、お答えいただけませんでしょうか。

か、かわいそうに…。あまりに気の毒なので質問に答えます。

質問をくださった方がおっしゃる通り、異動まで耐えるのが一番無難な選択肢だろうと思います。なぜならあなたの上司は他人に冷たくするほうが、優しくするよりもラクなタイプだから。

私はこういうタイプの人と絶対に理解し合えないので、あまり適切な回答ができないかもしれない。私は他人を無視したり冷たくしたりするのがすごく苦手です。”嫌だな”という気持ちが溜まりに溜まって一線を越えるまで、むしろ嫌いな人にも優しくし続けてしまう。

私はあなたの上司とは真逆で、優しくするほうが冷たくするよりラクなんです。

他人に冷たくするのって疲れる。同じ職場で働いているのに会話がないほうが疲れるし、人前で話しかけられないくらい部下が萎縮しているのを見たら、私だったらもう出勤したくないくらい嫌です。優しく接するほうが断然ラク。

でも、あなたの上司はそうじゃないんですよね。多分あなたと出会うより前に、そういうふうに誰かに冷たくすることでトクをしてしまったんだと思います。

部下に冷たくしておけば面倒臭い質問をされることもないでしょうし、手技がうまくいかないときにPHSで呼ばれる確率も下がるし、当直で困った事態が起きて時間外に泣きつかれることもない。

あなたの上司がそういうトクを狙ってあなたに冷たくしているかは不明ですが、まあ実際、狙わずとも結果としてそういうトクをしている可能性は高いと思う。

あなたはレジデント1年目ですね。私の医師生活を思い出しても、一番辛かったのがレジデント1年目でした。レジデント1年目は初めてまともに責任ある立場で治療にあたることになります。主治医としては一番若輩者ということになるので、回ってくる仕事も多いですよね。そういうときに頼れる上司がいないというのは本当にしんどいでしょう。

私が目指す上司像として思い出すのは、医師として1年目、研修医が始まったばかりの頃のことです。

休日に病棟回診をしていたら、病棟患者さんが熱を出していると看護師から相談を受け、医学生に毛が生えた程度の私が応急処置をすることになりました。医師になったばかりで常に主治医の判断を仰いできたので、ひとりぼっちで治療にあたるのは初めてでした。

方針を決めかねてウンウン唸っていると、医師歴15年目くらいのS先生が病棟にひょっこり顔を出しました。応急処置が必要な患者さんの主治医かな?!と期待してカルテを確認しましたが、残念ながら担当はA先生でした。私はがっかりしました。主治医でもないのにS先生に指示を仰ぐこともできず、引き続きカルテの前で黙ったまま悩んでいると、S先生が近づいてきてこう言いました。

”どうしたの?何か困ってる?”

あの時ほど上司に後光が差して見えたことは、後にも先にもありません。正直、S先生はパッとしない感じの無口な先生で、私はまともに話したことはありませんでした。主治医でもないのに助けてくれるわけがないと思ったから私は黙っていたのですが、視線を送りもしなかったのに、S先生は何かに気づいて私に声をかけてくれました。

主治医でもない患者さんの応急処置をするのは、ある意味リスクを冒す行為です。その日は天気の良い休日だったし、S先生は私なんて放っておいて、黙って立ち去っても良かった。でも、彼はそうしなかった。あえてリスクを冒してまで研修医1年目の私に声をかけてくれたこと、10年以上経った今でも忘れられずにいます。

質問をくださった方は今まで、理想となる上司に出逢われたでしょうか。上司にも色々いますよね。あえて書きませんが、絶対にこいつみたいな医者にはならねえと思うような上司もたくさんいました。冷たくされて、悲しくなるよりは困惑することも多かった。どうしてこの人は平気な顔でそんなことができるんだろうと不思議で仕方がありませんでした。

以前他のnoteでも書きましたが、上司には部下を教育する義務があります。冷たく接して、話しかけられないように仕組んでいるあなたの上司は、上司としての義務を放棄している。それはあなたがレジデント1年目で未熟であることとは全く関係がありません。

じゃあどうすれば良いんだと言われると、それらしいアドバイスが全く出てこず申し訳ない…。でも、上司に冷たくされても、決してあなたが悪いわけではないしそんなことであなたの価値は変わったりしないということだけは覚えておいてほしいです。私も医歴が浅い頃に上司の言動で嫌な思いをすることがしばしばありましたが、その度傷つきながらも、”しょうもないやつ”と心の中で馬鹿にしていました。

実際、10年以上経った今思い返すと、部下に必要以上に冷たくするような奴は全員もれなく異常者です。冷たくしてきた奴らと同じ年齢になってみると、彼ら彼女らがいかにつまらない人間だったか理解できるはず。”な〜んだ、やっぱりあいつがおかしかったんだ”、そう心から思えるまで是非何とか生き延びてほしい。周囲の他の先生や、場合によってはパワハラを相談できる部署に話をしてみてくださいね。

今日は以上です。質問を引き続き募集しております。
頂いた質問をきっかけにして、記憶の深いところに埋もれていたエピソードを思い出すことが多い。自分の中にあることを書くのにも、外側からの働きかけが必要なんだなと思います。あなたの質問が呼び水になるかもしれない。

頂いた質問には全て目を通しており、今だ!と思った時に答えるようにしています。引き続きよろしくお願いします。


Big Love…