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育児は嘘だらけの箱庭

だいぶ精神が回復してきたぞ…と思いながら出勤したら仕事にボコボコにされてしまった。忙しさと人間関係のダブルパンチはやめてほしい。だいぶしょげたので、ここ2日は勉強ばかりしていた。勉強はいいぞ。まともに物事を考える力がない時、勉強して知識を詰め込むのは、少なくとも自分は有意義な時間を過ごしているという自己肯定感を与えてくれる。

知識を詰め込んでいるうちに気持ちが落ち着いてきて、また何かをやろうという気力が湧いてくる。湧いてきたので書く。主に週末のことなどを。

今まで散々週末が一番忙しい、週末はぐったりすると繰り返しnoteに書いてきたが、最近とうとうその流れが変わりつつある。人間は3歳半になるとだいぶ意思疎通が図れるようになってくると聞いたことがあるが、娘にもとうとうその時が来たのかもしれない。

今日は①習い事、②大好きって言われる、の二本立てで参ります。

①習い事に行くようになった


とうとう悲願の習い事が始まった。たったの1時間しか預かってもらえず、送り迎えの際には他の保護者と鉢合わせることになり、同じくらいの年齢の子どもがいるという共通点しかない他人と待機場所でなまぬるく当たり障りのない会話をしなければならないのだが、それでも悲願の習い事である。

昔の自分だったら、たったの1時間のために他人と摩擦(コミュニケーションのこと)を起こすなんて絶対に嫌だと思っていただろう。しかし、今は違う。娘が習い事をやり、私の手が完全に空く1時間そのものだけが重要なわけではないのだ。
休日は昼食のタイミングや次は何をして遊ばせるか、そういうことを考えて段取りを組むのがとにかくしんどい。昼頃に1時間の習い事、送迎も含めれば2時間程度の用事がどーんと居座ることで、その日の生活の全てはそこに向かって動き始める。それまでに掃除を済ませよう、習い事で外に出るから無理に午前中に外遊びをしなくてもいいや、などなど。習い事があれば、他者が予定を決めてくれる。私が全てを決めなくても良いのだ。

幼児と過ごす休日は、のっぺりと掴みどころがなく長い。何もかもができる気がするほど長いのに、実際は何もできない。細々とした家事ですら、平日仕事帰り、娘が帰宅するまでの短い時間の方がよほど捗る。
娘はまだ自分で楽しみを見つけて時間を潰す術を持っていないので、私が娘の1日をプロデュースして楽しませる必要がある。正確には、楽しくて、教育的で、適切な1日を…。

そんなわけで、とうとう習い事を始めた。娘は私と違って社交性が高いので、まずまず楽しんでいる様子だ。私ではない人間と娘が楽しく過ごしている様子を少し離れた場所から眺めるのは、正直一番心が和む。私は何もかもきちんとやらなきゃならないという気持ちが強すぎるんだろう。娘にプレッシャーを与えたくないので、どんどん積極的に手を離していかないとなと思う。

②大好きって繰り返し言われる

微笑ましい話なのだが、最近の娘は幼稚園で覚えてきた”ママだ〜いすき!”を多用するようになった。私が考え事に耽ってぼうっとしている時はこの言葉を使って自分の方に意識を向けさせようとするし、服をきちんと畳もうね、などと注意を受けた時にも場の空気を和ませようとしているのか必ずこの言葉を言う。
当然、”ありがとう、私も大好きだよ〜♡”と笑顔で即返事をする。律儀に毎回このやりとりをすると、娘はとても嬉しそうに笑う。

幸いなことに、娘は私と夫が与えている環境に満足しているようである。朝起きたら前の晩に娘がリクエストした通りの朝ごはんが出てくる。髪を結んでもらい、いってらっしゃいを言われて登園する。帰ってくるとおやつやお気に入りのおもちゃが待っている。夕飯を食べたら本を読んだり塗り絵をしたり、たまに夫と二人で夜のドライブに出かけて満足して1日を終える。

娘が見ているのは本当に小さな世界だ。私と夫が娘のために作り上げた、箱庭のような世界を娘は見ている。親である私が見ている世界だって、そう大きくはないということは分かっている。大人になっても世界の全てを見渡すことはできない。
でも、娘の世界は本当に小さい。そこには親が選んだものしかない。何も知らないから満足していられる。娘がママ大好き!と言ってくれて、彼女自身の生活に満足していることは喜ばしいことだ。しかし、たまに、ふと空恐ろしくなることがある。

子どもを育てるってなんて恐ろしいことなんだろう。娘が見る小さな世界を構築して満足させ、しかしいつの日か必ず、それは張りぼてだとバレてしまう。娘は張りぼてから這い出て、自分の足で世界を見つけに行く。
一度張りぼてを経由させないと、自分の足で歩くことは決してできない。親が子につく嘘は、サンタクロースはいるんだよ、だけじゃない。親は全てにおいて優しい嘘をつき、箱庭で保護し、そしてそこから出ていくように仕向ける。育児がそういう物語だというのは、子どもを育てて初めて知ったことだった。

Big Love…