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顔も知らないあの人に会いたい

Twitterで漫画とか小説が話題になっている時、それを読むか読まんのか問題というのがある。

そんなものはないって?まあそうなんだけれど。

手軽さという意味では、漫画は手を伸ばしやすい。特に最近は無料で読める読み切りタイプの漫画が流れてくることも多くて、話題になっているならとりあえず読んじゃおうかな〜、みたいな感じでついリンクをタップしてしまう。

無料で読める漫画はほぼ無限にある。口に合うものもあれば、合わないものもある。”この漫画、微妙だな”と思っても、基本的にはインターネットで感想をつぶやいたりはしない。

”わたくし、感想は決して口にいたしませんの…”というわけではなく、インターネットに放流しない代わりに、漫画をよく読む同僚とLINE上でめちゃくちゃに感想を言い合ったりしている。

と、ここまでが前置きで、私は漫画を読んでも、その内容に大きくショックを受けることがない。

漫画をよく読む同僚は、ショックを受けやすいと言っていた。だから、刺激的な内容だとその同僚が感じる漫画は、予め読まないようにしているそうだ。

私は漫画や小説は、その中で何が起きていても平気だ。所詮自分の想像力の範疇でしか映像化できないからかもしれない。

その代わり、映像や音が強い刺激として感じられる映画というエンタメは、かなり厳しく内容を選んでから観ることにしている。

悲しかったり辛かったりする映画が観られないわけではない。ただ、大きく感情を揺さぶられて鑑賞後にしばらく虚ろな目で過ごすことになる代償として受け取れる面白さが十分なのかを事前に検討してからじゃないと映画には手が伸ばせないのだった。

漫画をよく読む同僚は、映画の方がそんなにショックを受けないから平気だと言っていた。人それぞれなんだなあ。

本の話で思い出したけれど、おすすめの小説を聞かれることが多い。最近の私はあまり小説を読んでいないからおすすめできる立場にないのだけれど、かなりたくさん本を読んでいた頃のイメージで、質問をくださる方が多いんだと思う。

タイムラインを眺めていたら、この本に関する話題が流れてきた。

この本、読んだのはかなり前のことになるのだけれど、読んでいる最中あまりに面白くて身震いしたことを覚えている。すごい、こんな小説が書けたらどんなに良いだろうと思った。

『蜜蜂と遠雷』、もう一度会いたいと思うような登場人物がたくさん出てきます。普段他人に本を勧めるときの基準として、読後何らかの教訓を残してくれるとか、言い回しが軽快で面白いとか、まあ自分なりに色々あるんですが、何度も会いたくなってまた本を開かせるような力のある登場人物が複数出てくる作品は、私にとっては『蜜蜂と遠雷』が唯一かもしれない。

こんなに熱心に語っていると、”じゃあどんな登場人物が出てくるのか、少しは教えなさいよ”と言われそうだけれど、これが全くディテールを覚えていないんですよねえ。

でも、”優しくて聡明な人が本の中にいる”というぼんやりとした記憶だけがある。本を開けばまた会えるんだと思うと、本棚に『蜜蜂と遠雷』の背表紙を見るだけで胸が温まるんですよね。また近々読んでみようと思います。

Big Love…