奨学金帳消し運動で不幸になるのは学生側な件
こんにちは!
CFP受験生のハマネコ(@hmnk_cfp)です!
突然ですが、最近こんなニュースを見ました
どうやら奨学金の返済に苦しむ若者を救済すべく、奨学金を「帳消し」を訴える団体があるようです。
それがニュースに取り上げられ、絶賛炎上中
私は本業では金融機関に勤めており、お金を貸す側の人間としてこの活動に思うところはあります。
それは
借りたものはきちんと返しましょう!!
という正論ビンタもそうなのですが(笑)
この手の徳政令的な活動は目先の苦労は取り除かれるかもしれませんが、より大きな反発となって自身もしくは後の世代に返ってくる、ということです……
今回は仮に奨学金「帳消し」が可能になったら、どうなるのかを考えていきたいと思います。
私自身は幸いなことに、奨学金を借りずに大学を卒業することができました。
そのため奨学金の返済で苦しんだことはありませんし、軽々しく「気持ちは分かる」などと言うつもりもありません。
その点を踏まえ、一個人の考察として読んでいただければ幸いです。
①ローンが組めなくなる(かもしれない)
「信用情報機関」という組織はご存じでしょうか?
やけに抽象度の高い名前ですが(笑)、カードやローンの利用状況を登録している機関のことです。
カードを延滞すると「ブラックリストに載る」などと言いますが、これは「信用情報機関に延滞履歴が追加される」ということです。
奨学金を運営する日本学生支援機構は、KSC(全国銀行協会)という信用情報機関に加盟しています。
そのためもし奨学金が「帳消し」になったら、「奨学金を帳消しにしたという事実」がKSCに残りますね。
延滞ではないにせよ、「借りたお金を返せなかった」という事実ですが残るわけです
帳消しになった後に収入が上がったりして、住宅や車を買うためにローンを組もうとしたとき…
銀行側は当然KSCに照会を掛けるわけですが、そこで「帳消し」の事実があったとしたら…
銀行はボランティアではありません。
当然きちんとローンを返済してくれる人に融資をするわけですから、この「帳消し」事実はローンを組む際の足かせになってしまうでしょう…
②高学歴だけが奨学金を借りられる?
奨学金の「帳消し」が認められると、貸し手である日本学生支援機構はどうするでしょうか?
当然ですが、「キチンと返してくれそうな人だけに奨学金を貸したい」と思うようになりますよね。
すると考えられるのは、借入基準の厳格化です!
………といっても、ついこの前まで高校生だった人の何を基準に与信判断をすればいいのでしょうか?
一つは保証人となる親の属性情報でしょうが、これはすでに導入されていますね。
また高校時の成績も基準の一つですが、これはどちらかというと「学習意欲があるか」を見ているのであって、「お金をキチンと返せるか」とは別問題です。
将来に渡って、奨学金を帳消しにせずに、キチンと返済してくれそうな人…
それは将来の安定したそれなりの水準の収入が期待できる人…
もうお分かりいただけたでしょうか?
それは
高学歴
の人です。
なおここでいう高学歴というのは、高偏差値大学の学生を差します(本来の高学歴とは修士や博士卒を差すのであって、所属大学の偏差値は関係ないんですけどね)
一般的に高偏差値大学の卒業生の方が、いわゆる「F欄」などの低偏差値大学の卒業生よりも、収入の高い企業に勤める可能性が高いです。
すなわち、キチンと奨学金を返済してくれる高学歴層に優先して奨学金を貸し出す、という動きが可能性として考えられます。
住宅ローンなどの与信判断において、大企業や公務員の方が有利になるのと同じです。
奨学金の借り入れ条件に合格大学の偏差値が影響してくる…
決して妄想ではないでしょう…
③奨学金の金利が上がる
融資の世界では、金利=貸し倒れリスクです。
大企業への融資は金利が低く、中小企業への金利は高い。
これは大企業は倒産リスクがないため低り金利になっても融資をしたいのに対して、中小企業は倒産リスクがあるため高い金利を取らないと割に合わないからです。
そして、もし奨学金に「帳消し」という制度が導入されたら…
日本学生支援機構からすれば、延滞も「帳消し」も、貸し倒れという点では同じです。
すなわち、奨学金を貸すことへのリスクが高まるわけですよね。
であれば、奨学金事業の存続のため、今よりも高い金利を設定するのは金融業としてごく自然なことです。
すると割を食うのは、キチンと返済している人。
本来ならばキチンと返済できたはずなのに、金利が上がったおかげで返済できなくなる、という人が出てきてもおかしくはないでしょう。
とはいえ、経済状況が問題で教育を受ける機会が損なわれてしまうのは良くないのも事実。
そうであれば本来行うべきは奨学金の返済を免除することではなく
・給付型奨学金(返済義務なし)の拡充
・大学教育の無償化
あたりでしょうか?
難しい問題ですね。
ハマネコ
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