メゾン・ド・宇宙

たまにふと知り得ぬ事の多さに寂しさを覚える時がある。

いつもの駅で電車に乗り、いつも降りる駅に着くまでの間に窓の外をぼうっと眺める。
流れていく風景の中にはいくつものマンションが建っていて、ベランダには様々な洗濯物が干されている。
そこにはたくさんの人が暮らしていて、たくさんの何気ない日常があるのだろう。

ドラマチックでもなんでもない、ありふれた日常がコンビニの商品のように並んでいる光景を思い浮かべる。
そんな身近にあるものすら手に取る事も中身を見る事もできないと考えると、とても寂しい気持ちになるのだった。

そしてこの世界には私が知らない駅の知らない街にいくつもの知らないマンションが建っていて、その中にもたくさんの私の知り得ぬ何気ない日常があるのだろう。
想像すればするほどマンションは増えていき、まるで拡大し続ける宇宙の中にぽつんと浮かんでいるような気持ちになる。

私はそんな寂しさが好きで、今日も窓の外のマンションを眺めながら知らないマンションの事を考えていた。