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【不妊治療との距離感】病まないためには価値観の見直し、ほかの役割を持つことが重要です

 この記事では不妊治療に臨む上での不妊治療とのあるべき距離感について、私なりの見解を述べています。不妊治療がうまく進まず、すべてを投げ出したくなっている方に少しでも寄り添うことができれば、という内容です。

 私自身、タイミング法から体外受精まで不妊治療クリニック通いに2年以上を費やし、治療も思うような結果が出ず思考停止して無に陥ったことは数知れず…いまだに妊娠していませんが、現在は不妊治療をお休みして夫婦2人でも私1人でも楽しく過ごすに毎日に至ります。

 そんな私に、病まない不妊治療についての考え方のお手伝いをさせてください。『子どもをもたないと人生終わるのでは?』という価値観からの脱却に役立てればと思います。

不妊治療に全力投球するのはなぜ危険なのか

 何かに全力で取り組むことで成果が出るという局面は人生で何度も訪れますが、不妊治療は残念なことにそれに当てはまらないことが多いです。なぜなら、不妊治療の特性上、頑張れば必ず妊娠するわけではないからです。

 高度不妊治療のなかでの体外(顕微)授精で人為的にコントロールできるのは『受精卵を子宮に戻すところまで』です。その後、無事に着床するのか、着床が継続するのか、それ以降の段階はその女性の生物的機能や受精卵自体の質にたくされます。神のみぞ知るステージなわけです(だからこそ妊娠は奇跡なんですね)。

 お金をかけたから、時間をかけたから、丁寧な暮らしをしたから、妊娠するわけではありません。そういう意味で、不妊治療に人生をささげる勢いで取り組むのはリスクが高いと考えてます。

 ここでいうリスクとは『不妊治療にかけた時間やお金を後悔すること』を指します。

自分の力が及ぶ範囲のこと以外に対して人は無力です

 私が現役の大学生だった頃に出会った本に『7つの習慣』(スティーブン・R.コヴィー著)がありました。そのなかでコヴィー氏はこのように述べています。

"自分が変えられる(影響を与えられる)ことに注力を傾けなさい"

 逆に自分で解決できないレベルのことにあれこれ気を揉んでしまうと、そればかりに没頭してしまいほかの日常生活をなおざりにしがちになります。だからこそ、自分が影響を及ぼせる範囲、すなわち自分の行動によって変化を与えられる部分を意識することで不妊治療との精神的な両立が可能になると考えます。

不妊治療との正しい距離感とは

 『何がなんでも妊娠する、絶体絶命…負けられない戦いだ…(鬼の形相)』と考えながら、治療を進めると、うまくいかなかったときに途方もない喪失感が襲ってきます。

 そこで大事なのは『私の人生もうるおってはいるし、すべてがダメなわけじゃない』という考え方です。具体的な姿勢として労力(注力)を分散させ、「不妊治療をしている私」以外の「役割」も持つことが重要になります。

・ 自分の人生をうるおす(趣味を楽しむ、自己研鑽して自分を磨く)
・ 夫婦2人きりの人生も楽しむ
・ 今できる不妊治療をがんばる

 この全部を同時にやります。

適度な距離感で治療をするためにルールと予算を決めるのも良い

 不妊治療を取り組む期限や治療費の予算を定めながら行うことも重要です。これは損切りの精神です。このためには、やはり夫婦2人での話し合いが不可欠です。

 うまくいかないことばかりを想定して治療を進めるのは精神衛生上よろしくありませんが、「人生」という壮大な観点から不妊治療を考えた場合、ほかに時間とお金をかけたことで得られる別の経験を惜しくなる可能性がないかを考えることも必要かと思います。

 実際に私は失敗した場合になるべく少ない損失額で済むようなラインを決め、治療を進めるかセーブするかを決定していました。すべてはお金を失って我も失わないためです。

 気持ち的には不妊治療への最大可能投資額の6割くらいの金額で臨んでいました。お金は出すけど、成果が得られると確信できないなら財布の紐はゆるめたくありません。具体的には、『採卵前の診察で5個以上卵子が採れないとわかった場合は、採卵を見送る』というルールでした。この方針に基づいて一度採卵を見送ったこともあります。

 体外受精、凍結保存に進むためにはなるべく多くの卵子を確保しなければなりません。受精卵、しいては胚盤胞という成熟した受精卵を得る過程で、採れた卵子が変性卵や未熟卵であったら勝率の高い顕微受精でも受精できません(1回目の顕微授精経験より)。しかもそれは採卵してみないとわからないのです。一度は受精できたからといって、そのまま順調に発育するとはかぎりません。

不妊治療につらくなったら別の価値観も見直してみましょう

 これはもう、私自身の経験からたどり着いた境地です。

 現在は不妊治療にかけるはずの費用で夫と2人で旅行をしたり、有給を趣味のために消化したりなど、DINKsとしての生活を確立しつつあります。だからといって子どもをもつことを完全に諦めたわけではありません。

 不妊治療がうまくいかず悩んでいる方が大勢おられると思います。これからはじめる方やはじめたばかりの方は、子どもがなぜほしいのかを今一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

 不妊治療がうまくいかなかったとしても、それで人生が終わるわけではありません。現に私が今、1人きりでも夫と2人きりでも充実した毎日を送っています。そんな人もいることを思い出していただけたら幸いです。

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