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図書館にて

図書館に立ち寄って書架にある広辞苑(第七版、2018年第一刷)で、「筋トレ」の項目を探すと、きっぱりと「筋力トレーニングの略」であると言い切ってくれている。「筋力の強化を図るトレーニング」のことだそうだ。少しページを後ろに下って、「筋力」は、(筋肉の力)ということだ。

これでは、互訓みたいなものだ、とツッコミたくもなるのだが、その代わり、筋肉の項目が、科学的な記載になっている。皮膚をめくった下に並んでいる具体的な筋肉を示しつつ、動物の運動を司る組織、云々、、、などと説明している。広辞苑以外の辞書でも、多かれ少なかれ、そんな感じの記載になっている。

(筋肉)と(筋力)のについては、生理学とか解剖学の方面からちゃんと考えるとして、図書館に来たのは、それを調べに来たのではなく、、、その図書館には、歴代の広辞苑が収蔵されていて、過去の辞書での記載についても遡って検証できるので、それをしにきた。第二版(昭和44年に第一刷が発行された後、昭和51年になって補訂のバージョン出ているらしい)以降の広辞苑があって「筋肉」の項目を引いてみる。

昭和40年代の時点で、現在のバージョンに使われている人体図は掲載されている(ように見える=細かい差異はあるかもしれないが、見た目的にほぼ同一か、実際に同じ図)。また、その説明に中身においても、その分類としての(随意筋)(不随意筋)など、広辞苑の記載が一変するほどの、科学の進歩は、この分野では起きていないか、昭和40年代の時点でも、現代と大差ないほどの科学的解明は進んでいた、というほどの、同じではないが、似たような記載。

ちなみに用語としての「筋トレ」は、2013年の第六版には、現在と同じように記載されているが、1998年の第五版まで遡ると、早くも記載が見られず、2000年をまたいだ辺りで広辞苑の編集で、日本語としての定着のお墨付きを得た、ということになる模様。

うっかりしたら95年にドヂャースに入団した野茂英雄や、96年のアトランタ五輪のメダリスト田村亮子は、まだ「筋トレする」という言い方はしてなかった可能性もあるわけか。。。その辺の選手のインタビューとか自伝などがあったら、見てみると面白いかもしれない。(敬称略で記載させていただきます)逆に2020年代の今の若者は、物心ついた時には、少なくとも、用語としての(筋トレ)は身の回りにあったことになる。

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せっかく図書館に来たついでに、そこにある見た目でもっと古そうな国語辞典も当たってみる。冨山房という会社の大日本國語辭典。改定は何度も繰り返しているようだが、ルーツは大正まで遡るような辞書。昭和27年に新装版となって、そこから刷を重ねだ版をみることができた。

その古い辞書での「筋肉」の説明が興味をそそる。曰く「すぢと肉と」とし、「身體の軟部を成し、神経の刺戟に依りて収縮して運動を起こすもの」だそうだ。本当は、神経の経の字の右側は、脛の字みたいなツクリで、いかにも古めかしい。

面白いと思うのは、(筋すじ)+(肉にく)=(筋肉)とも読めるような説明になっていること。まだ、私のNOTEには解剖学の話をこれっぽっちも書いていないので、その説明が先にあるべきだが、肉(ざっくり行って赤い部分)と腱(ざっくり行って、紐のようなスジの部分)を合わせて、筋肉と表現している、というバックグラウンドを想起させるような内容。

なるほどね。と思って、これまた別の辞書を当たることにする。

(つづく)

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