松浦寿輝『青天有月』より②

「〔…〕詩とは、言語を作り出すことではない。それは、言語を夢想することだ。見たまえ、月光が、そこかしこ、まるで地上の霜のように輝いている。だが、きみの身の周りで、言葉もまたそんなふうに発光していはしないか。言語を夢想するとは、月光を見つめるように、放心しつつ、それらの言葉の煌めく粒子を見つめることだ。「月」と「影」の沈黙に耳を澄まし、声なき声で対話を重ねつつ、三人でもって「無情の遊」を結ぶことだ。そして、それこそが「詩」ではないのか。」

松浦寿輝『青天有月 エセー』講談社文芸文庫、2014年、213ページ。

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