企業がAI導入を確実に成功させるための6つの観点:DONUTSフレームワーク
AlgomaticでAI Transformation(AX)カンパニーのCEOを務めている鴨居(@hktech94)です。
前職ではデータサイエンティストとして、大規模データのデータエンジニアリングからAI・機械学習モデルを活用した業務変革、さらにはDX推進に必要な組織変革などのコンサルティング案件をリードしてきました。この記事では前職の経験もふまえ、AI推進の成功に向けた重要なポイントを様々な角度からご紹介します。
AIを活用した業務変革に対する期待の高まり
いきなりですが、皆さんの会社ではAIを活用した業務の改善はできていますか?やってみたいが何から着手すればいいかわからないといった状態の方から、取り組み自体は進んでいるが業務改善には至っていないという方まで幅広くいらっしゃると思います。
生成AIが台頭し、第4次AIブームと言われるなかでAIによる業務変革への期待はかつてないほど高まっています。このタイミングを逃したらあと10年は企業におけるAIの浸透をできるチャンスが来ないかもしれない、というまさに大きな分岐点に各社が立っている状況かと思います。
このようにAIによる業務変革が高い期待感を集めているにも関わらず、「これを全てクリアすればAI導入がうまくいく」という共通の指針が明確にあるわけではありません。
そこで本記事では、「AI導入がうまく進まない」「AIを導入したけど活用されない」という状況が生まれる要因を6つの要素に分解し、AI導入成功に必要な観点をわかりやすく分類します。Algomaticでは、これらの6つの頭文字をとってAI推進の「DONUTS」フレームワークと呼んでいます。このフレームワークの頭文字となる各項目を整えることで、AI導入の成功に近づくことができます。
生成AIの台頭により、改めてAI導入・活用の検討をされている方も多いと思います。本記事でご紹介するフレームワークが、読者の皆さまのAI導入成功に向けた一歩目として役立てば嬉しいです。
AI推進がうまくいかない要因を分解する
企業におけるAI導入が進まない要因にはどのようなものがあるのでしょうか?
「うちの会社にはAIに詳しい人がいない」といった専門人材の不足や、「DXもままならないのにAIを業務に組み込むなんて無理だ」といった業務適用の課題など、挙げ始めればたくさんの要素があります。
また、弊社Doryの記事にも記載されている通りですが、AI導入においてぶつかる課題は意外にも技術に関するものではなく、多くのものが組織や業務プロセスに関する課題です。
また、さまざまなクライアントを支援している中で、どういった専門人材と協働するかといった点や、データやシステムなどの基盤に関連する課題も顕在化してきました。このような課題を分類していくと、以下の6つのカテゴリに分類できるのではないかと考えました。
Data(データ)
Organization(組織)
Network(企業アライアンス)
Usecase(ユースケース)
Talent(専門人材)
System(システム)
AlgomaticではAI推進に必要な6つの要素の頭文字をとり、DONUTSフレームワークと呼んでいます。これら6つの要素をすべて理想的な状態にすることができれば、AIの導入・業務浸透は成功に近づけることができます。裏を返せば、この6つのどの要素に課題があるかを可視化し特定することができれば、AI導入の成功に向けたアクションが明確になってくると思います。
皆さんの会社では、どの項目に最も課題がありそうでしょうか?それぞれの観点について、具体的にどのようなポイントを守れていればAI導入を成功に導けるかということを私自身の経験を踏まえて紹介していきます。
1. Data(データ)
皆さんも認識の通り、AIの性能はデータの質と量に大きく依存します。データをそもそも持っているかどうかに加え、どのようにラベルをつけて管理しているかであったり、データ基盤として集約した上でユーザやシステムから使いやすい状態になっているかといったこともポイントになります。
データ保有: デジタル形式のデータを保持しているか
データ管理: データに適切なラベリングやカテゴライズがされているか
データ基盤: データが最新状態で管理されており、活用できる状態になっているか
例えば、対面でのインタビューをもとにインタビュー記事を大量に執筆しているウェブメディアの企業があり、この業務をAIにより効率化したいケースを考えます。
そもそもインタビューの録音データを記者が録っていなければAI活用のスタートラインには立てないので、まずはデータを保有しているかどうかが重要です。さらに、録音したデータが文字起こしされテキストで管理されていればAIにとってはより扱いやすい状態となります。
また、データを保有していたとしても、いつどこで誰に対してインタビューをしたものかといった基本情報をラベルとして紐づけていなければ、各音声データの内容がわからないため、どのようにデータを管理しているかといったこともポイントになります。
さらに、録音データが大量に存在しているにも関わらず各社員の個人フォルダなどでバラバラに管理されている場合、それを集約するというステップが必要になります。またデータによってはセンシティブなものも含まれる可能性があるため、ユーザごとに権限制御をしないといけないケースもあります。規模の大小はあれど、データ基盤があるかどうかは中長期的には考慮すべき要素です。
2. Organization(組織)
AIの導入には、組織構造の再構成が必要となるケースがほとんとです。AI推進のオーナーが不在のなかで現場主導で進んでも全体の業務が効率化しきれないですし、チーム間での連携がとれないままリソースが分散され、失敗に終わるケースが多いです。また、企業カルチャーも重要であり、新しい変化ややり方を受け入れるアジャイル文化が浸透していなければ、現場の反発により業務プロセスの変革は起こせません。
ここでは3つのポイントが重要となります。
オーナーシップ: AIプロジェクトの責任者が明確で、権限を持ってチーム横断の取り組みを推進できているか
部署・チーム間連携: AIプロジェクトに関連する部署・チームが縦割りになっておらず、適切に連携できているか
アジャイル文化: 既存のやり方にとらわれず、試行錯誤を繰り返しながらAIによる変革を受けいれられる文化が醸成されているか
AI推進がうまくいっている企業の例では、トップダウンかつ組織横断でAIの業務適用の優先度を決めて旗振りをするAI推進室のような役割と、現場業務を理解し地に足ついた成功事例(Quick-Win)を創出していくチームの両輪で取り組みを進めていることが多いです。
3. Network(企業アライアンス)
AIを活用した業務・組織変革は社内のリソースだけで完結することはほぼ不可能に近いです。社外のパートナーと連携しながらスピード感をもって推進しつつ、社内にノウハウを取り入れることが成功の要諦です。
AI有識者連携: AIの導入事例やAI推進の進め方に関する知見を持つ有識者と連携できているか
AI導入支援: AI導入(技術検証・実装)を支援してくれる企業と協業できているか
基盤・モデルパートナー: AIの基盤やモデルを提供するパートナー企業と連携できているか
過去のAIブームでもそうでしたが、レガシーな企業ほど専門人材を採用し、その人に全てを任せてしまうケースが見られます。しかし、組織の項目でも書いた通り、AI推進においては多様なスキルを持った複数のメンバーがチームとして必要であり、ある特定のメンバーが孤軍奮闘をしなければいけないような状況を生み出してしまうと取り組みとしては失敗に終わってしまいます。全てのピースを最初から内製で揃えることは一般的に難しいため、それぞれの役割を補完し、内製化まで伴走してくれる社外パートナーを見つけることも重要なポイントです。
4. Usecase(ユースケース)
AIの導入には、各業務部門へのヒアリングをベースとしたユースケースの洗い出しから投資対効果が高いユースケースの見極め、ユースケースを実現するための業務プロセスの整備が重要です。
ユースケース・業務の洗い出し: ユースケース・業務を全量洗い出せており、どこにコストが掛かっているかが明確になっているか
投資対効果: 各業務についてAIに置き換えた場合の投資対効果(ROI)が明確になっているか
業務プロセス: 既存業務プロセスの可視化に加え、AIを前提とした新たな業務プロセスの設計ができているか適切に設計されているか
以下の例では、特定の部門に対するヒアリングを元に既存業務を一覧化したイメージです(中身は適当)。業務全体の中でどこにボトルネックがあるかを見極めつつ、AIの導入難易度と期待効果を元にROIが高いユースケースにフォーカスして成功事例を作っていくことが重要です。
5. Talent(専門人材)
AIの推進においては、適切な専門人材の確保が重要となります。特に会社の戦略理解や業務横断の知識が求められるAIプロジェクト推進リーダーや現行業務の理解が必要なAI変革プロジェクトマネージャーといったロールは社内からの登用が必要なポジションです。また、AIの実運用に進んでいる企業ではAIエンジニアも内製化することで柔軟かつ低コストに取り組みの幅を広げることが可能です。
AIプロジェクト推進リーダー: AIを活用した事業立案や組織横断の優先度検討・アプローチ整理ができる人材がいるか
AI変革プロジェクトマネージャー: 現行業務を深く理解した上で、AI導入に伴う業務変革を推進できるプロジェクトマネージャーがいるか
AIエンジニア: 課題に対して適切なモデルを選定し、AIの開発・導入からシステムの運用設計ができるAIエンジニアがいるか
以下にAI推進に必要な専門人材のスキルセットを簡単にまとめています。特にAIプロジェクト推進リーダーは取り組みの要となることが多いので、技術理解が一定ありつつ経営層とのコミュニケーションを頻繁に取れるようなポジションの方をアサインする必要があります。
また、AI変革のプロジェクトマネージャーは現場の業務を深く理解しているだけでなく、これまでのやり方を新たなアプローチに置き換えていく変革マインドが必要な役割です。
6. System(システム)
AIの導入には、適切なシステム環境の整備が不可欠です。AIシステムの土台となるインフラ整備、使用ユーザや従業員がスムーズに業務を遂行するためのユーザ体験設計、データ漏洩や外部からの攻撃を防ぐためのセキュリティの3つのポイントが重要です。
インフラ: AIを動作させるためのインフラが整備されているか
ユーザ体験: AIを活用するためのユーザ/従業員体験が適切に設計されているか
セキュリティ: AIを含むシステムのセキュリティ対策が十分に行われているか
以上が、私の前職のコンサルティング経験と現職Algomaticでの経験をふまえた6つの観点です。企業がAIをうまく導入し、業務を置き換えて生産性を高めていくためにはDONUTSフレームワークを活用し、どのあたりに課題があるのかを正しく理解することが有効です。
AIによる業務変革への想い
ここまで、AI推進の成功に必要な6つの観点について説明してきました。読んでいただいた方の中には、「うちの会社はこの項目がイケてなさそうだな…」とといったことを感じていただいた方もいれば、「そもそもどの観点を切り取ってもうまくできていないな…」と半ば諦め気味の方もいると思います。
冒頭にも書きましたが、いま現在の第4次AIブームというタイミングは、AIによる業務変革を実現できる二度とないチャンスです。2010年代の第3次AIブームをデータサイエンティストとして過ごし、AIによる改革に成功した企業とチャレンジできなかった企業の明暗の分かれをみてきた私としては、この期待感を無駄にすることなく多くの企業に変革のチャレンジをしていただきたいと考えています。
現在多くの企業様よりAI推進に関するご相談をいただいておりますが、AI導入をしたいけどどこから手をつけたらわからないという方から、整理されていない状態のアイデアを壁打ちしたい方まで様々な企業の方がいらっしゃいます。どのような状態でも構いませんので、AIを活用した変革に少しでもご興味がある方はぜひお気軽にご連絡・お問い合わせください!
明日から始められるAI推進のフレームワークを活用した変革の第一歩
弊社ではAI推進を検討しているがどう進めれば良いか悩んでいる企業の皆様に、AI成熟度診断を無料で実施させていただいております。本記事でご紹介させていただいたDONUTSフレームワークをベースに、各項目のレベルを定義し、どのあたりを改善すれば良いのかを可視化することが可能です。
実際のアセスメントシートは以下のようなものになっており、各カテゴリごとに複数の設問を用意しており、各設問についてレベル1からレベル5までの基準を定義しております。以下はアセスメントシートの一部抜粋となっております。
AI成熟度診断では、ヒアリングを通してこのような設問に関するレベルの判定を実施していきます。最終的には以下のようなレーダーチャートが出力され、どのあたりに課題があるのかを把握することが可能です。
このケースでは、人材のスコアが低く出ているのでAI専門人材の採用や育成といったアクションが必要であることがわかります。このようにいまの状態を可視化し、取るべきアクションを明確にすることで打ち手が見えてきます。
こちらにご興味がある方もぜひお気軽にお問い合わせください。
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最後までお読みいただきいただきありがとうございました。
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