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【地中海北縁の旅と生活】第4章<南仏マルセイユ生活始まる>①

香高堂【地中海北縁の旅と生活】第4章<南仏マルセイユ生活始まる>①
 
《マルセイユでの短期アパートメントホテル生活―2016年》
 2016年8月29日夕方、サラエボ空港からミュンヘン経由でマルセイユ空港に着いた。出向かえの車に乗せられて、短期滞在用のアパートメントホテルに到着。1カ月の予定でいるが、ここでどのくらい過ごすことになるのか、家探しの難関が待ち受けていた。
 
◆『Marseille=マルセイユはフランス最大の港湾都市で、PACA=プロヴァンス=アルプ=コート・ダジュール地域圏、地中海のリオン湾を臨む。西側を海と山地に、南側はカランクと呼ばれるカルスト地帯に面している。また、鎖状にエトワール山地やガルラバン山地に囲まれ、円形競技場のような形をしている。2010年の人口は約85万人、パリに次ぎフランス第2位、都市圏人口ではリヨンに次ぎ第3位の規模。近郊には古都エクス=アン=プロヴァンスがあり、近郊の小都市を併せた人口は約135万人に及ぶ』◆(ウィキペディアWikipediaより)
 
 アパートメントホテルはマルセイユの海岸線を走るケネディ通り沿い、市内を横切るプラド大通り(AV.Prado)の交差点近くにある。この交差点角にスーパーがあり、ボレリー公園やいくつかの学校もあり、9月の新学期を迎えて学生を見かけるようになった。
 マルセイユに辿り着いて4日目、仮生活もやっと落ち着き、生活のリズムが出てきた。毎日の日課は、朝7時前に起きたら5~6分歩いてパン屋に向かい、焼き立てクロワッサンを買うことだ。カフェオーレやティーオーレを飲みながらの朝食であるが、林檎にヨーグルト、蜂蜜をかけて食べる。そして昼食も夕食も自炊生活が続いている。短期アパートメントの冷蔵庫はあまりに小さいのであまりストックは出来ない。コンビニらしきものは見つからず、サンドイッチは高くおにぎりも無い。
 
 ならばフランス式に慣れようと毎日買い物に出かける。午前と夕方、歩いて10分程のところにある<CASINO>に向かう。7月にマルセイユに来た時は至る所に<カジノ>の名称、ギャンブル場があるのかと思ったが、フランスの比較的安いスーパーマーケットだ。その他スーパー<カルフール>があるが、ここからは遠いので、土日に車で買い出しに行くしかない。フランスの生活用品の物価は品物によって違いはあるが、サラエボを1としたら、フランスは3、日本は2.5ぐらいであろうか。
 
 素朴な味わいのあるボスニアの野菜や果物、だが種類は少ない。フランスは種類も多く、味わいは左程出ないが、品質は一定している。日本の野菜は味があまりしないものが多く、果物も高く、サクランボ1個がバカ高いなど異様な価格が存在する。日本に一時帰国する度に「食材とは何であるのか」ということを考える。また、野菜果物、肉類に深い味をあまり感じないは調理文化に頼っているせいであろうか。素材をしっかりと味わえるものを食べていきたいと思える。
 
《ダビデ像と海を見ていた午後》
 幕末や明治時代、日本人はインド洋と地中海経由でフランスに足を踏み入れ、この地マルセイユからパリに向かった。2013年マルセイユは周辺のプロヴァンス地域と共に欧州文化首都になったが、洗練された文化とはまだまだ遠い街のようである。
 美術館や博物館も多いが、パリとは違う庶民文化が漂っている。マルセイユの市内を横切る大きなプラド通りが海岸線に突き当たる交差点には、1903年にマルセイユの彫刻家が寄贈したダビデ像の複製が聳えている。
 
 日本の歴史家で羽仁五郎は、ダビデ像の作者ミケランジェロに関して「いまも生きている。"ダヴィデ"を見よ、かれの口はかたくとざされ、うつくしい髪のしたに理知と力とにふかくきざまれた眉をあげて、眼は人類の敵を、民衆の敵を凝視する」とその著書で書いている。
 羽仁五郎は池袋の自由学園の羽仁もと子と結婚し、自由学園は教育も政治も文化も個性的な人材を大切にする人材を育てたユニークな学校と言われている。個性的な女性が増えたが、それぞれの個性を活かしたバランスのとれた社会が望ましいと思う。
 
 地中海岸までは短期アパートメントホテルから10分程であるが、数日は気持ちに余裕は無く、やっと散歩がてらと赴いたが、砂でなく細かな岩が敷き詰めてある。マルセイユはニースやカンヌの高級リゾートでなく、フランスや欧州の庶民が海を楽しみにくるところのようだ。余程危険なところに行かない限り、治安はかなり回復しているようだ。
 マルセイユの海を見ていたら、ボスニアの<ジェキチ 美穂>から、「海から遠く離れて暮らしている身にとっては、海を見たくなる午後、かもしれません」とのメールが入った。<海を見ていた午後>は荒井由実の曲で、ハイ・ファイ・セットで有名になったが、山本潤子の声は気だるさをにじませながらも透き通る声が響いて来る。
 
 スーパーCASIOでの買い物もスムーズになり、生活のリズムが出てきた。ふとスーパー前の交差点を見やると、そこに何とピザの屋台が出ている。ヴァカンスシーズンも終わりで人は少ないが、日曜夜は多くの人々が並んでいた。軽トラックにピザ窯が積んであり、生地もその場でつくりサーブ、薪で焼いている。この街は何十年か前に大火があり、家庭の火はほとんど電気になっているはずなのに路上でガスが使われている。多分日本なら許されない屋台、文化の違いはまだ分からない。

 ある日、アパートメントホテルからプラド大通りを、徒歩で20分の大型スーパーに三度も買い出しに行ってしまった。バスも走っており、マルセイユでの生活、交通手段は乗り慣れたら便利なようだ。料金は地下鉄バス共通で、駅購入は1.5€、車内では1.9€、1日乗り放題、1か月の定期もあるようだ。地下鉄はまだ乗っていない。
  バスストップで「♬汽車を待つ君の横で 僕は時計を気にしてる 季節はずれの雪が降ってる」ならぬ「バスを待つ君の後で 僕は行き先を気にしてる 季節外れの風が舞っている・・・♬」と思わず口ずさんでいた。

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