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友有り遠方より来る、

高校の友人が急に京都に来ることになった。なんでも、学業とバイトに追われる忙しい生活に嫌気が差してきたそうだ。灰色の都市から逃げてきた彼と2泊3日で観光を楽しんだので、いくつかここに残しておきたい。

久しぶりに会った彼は少し大人びて見えた。若干茶色い髪には軽くパーマをかけているらしい。そんな彼はわたしを見て「あまり変わってないね」と言った。ふふ、どうかな。

まず白川筋の落ち着いた街並みと花見小路を抜けて、祇園にほど近い安井金毘羅宮に参拝した。ここは縁結びそして縁切りの神社ということで朝っぱらから多くの女性で賑わっていた。吊り下がっている絵馬には平和な文章に交じって、縁切りを願うなかなかエグイ内容のものもあって背筋がゾクッとした。当然詳述なんてしないので、興味あるひとは実際に行って読んでみてほしい。境内には他にも縁結び縁切りの碑というのがあって、お札を持って石にある穴をくぐることで文字通り願いが成就するそうだ。彼はそれをくぐった。わたしはくぐらなかった。

そのあと、二人でそれぞれ恋みくじを引いた。おみくじというのは恐ろしいもので、毎回内容は異なるのにまるで今までの自分を見透かされているようなことが書いてある。今年の初詣で初めて凶を引いたわたしが見事に前期日程に滑ったようにあとからハッとすることもある。今回も例に漏れず心当たりのある内容でちょっと先の未来が恐ろしくも、楽しみにもなる。

ちなみに彼は地主神社と八坂神社でも恋みくじに挑戦し、この日3度も神様にお伺いを立てた。

京都観光といえば外せないのが、清水寺。道中彼は産寧坂の土産物店で生八つ橋を試食し品を見定め、5個入りを購入し、早速それをその場で平らげるのを二三度繰り返した。色々言いたいことはあるが、普通に良い客である。

名所、音羽の滝は思いの外空いていた。ナントカ宣言が解除されてもう少し涼しくなれば本格的に観光客が戻ってくるだろうか。束の間のゆとりある観光を楽しむ。

一日目の夜は彼の希望で、デルタで過ごすことにした。ここは賀茂川と高野川の合流点で、近くに大きな大学があるので毎夜河川敷には学生が集まる。街灯が並んでいるわけでもないので当然暗く、ぼんやり人影が判別できる程度で隣りに座る彼の表情も分からない。暗闇の中で、河川敷から河原に降りる階段に並んで腰かけて、色々なことを喋った。周りの大学生集団はランタンを灯して音楽をかけたり、手持ち花火やロケット花火で遊んでいる。鼻をツンとつく煙が流れてきて、涼しい風の中に終わりかけの夏を感じる。

そのうち、近くのD大学に通う同級生を呼んだ。急に来てもらった上に、その後わたしの家に帰るバスが終わってしまったので彼の家に上がりこんで11時まで爆睡してしまった。本当に感謝しています。ありがとう。

翌日の朝、いえ、昼。泊めてくれた彼も急遽加えて、予定よりだいぶ遅い時間になって龍安寺を訪れた。郊外の山すそに位置するこの寺院はとても静かだ。有名な石庭を望む縁側には先客が思い思いの姿勢で目の前の庭を眺めている。ゆっくりとした時間の流れる空間にわたしも腰を下ろし、白砂に浮かぶ石を数える。石は実際には15個存在するが、どの角度からも14個しか見えないように配置されている。わあやっぱり14個だあと、声に出さずひとり興奮していた。目線を上げると、薄い黄緑の木々が庭を包んでいる。もう少しすれば鮮やかな黄色に染まるだろうか。

嵐電に揺られ、嵐山へ。並ぶ商店に立ち寄り立ち寄り、ソフトクリームやらプリンやらわらび餅を頂く。食べたものの味や目にする光景や、他愛のないものについてぺちゃくちゃ喋っていると時間が過ぎるのはあっという間だ。気付けば夕方、再び嵐電に乗り込む。

終点、四条大宮の餃子の王将は「一号店」。文字通りこの地から全国に拡大した、ちょっと特別な場所で夕食。思い思いに注文した料理が、次々とテーブルに並べられていく。餃子、ラーメン、エビチリ、酢豚… 値段に対する量の多さに驚く。なのに、気がつくと皿は全て空になっていた。若者の食欲には恐ろしいものがある。

王将もスイーツの他にも、三日間でいろいろ奢ってもらいました。ごちそうさまでした。

2日目の最後は、銭湯と決めていた。千本通を北上し京都市内随一の規模を誇る銭湯へ。旅の、そして日頃の疲れも癒せたら、と思いここを選んだ。喜んでくれたなら、嬉しいな。

D大学の彼とはここでお別れ。今度こそわたしの家に彼を泊めた。翌朝は1時間ほど中心部の食べ歩きスポットで過ごした。彼は鴨肉や鱧の揚げ物や、和菓子をたくさん食べて、最後に京都駅でわたしが知らない東京の人へのお土産を選んだ。八条口で伊丹空港行きのリムジンバスに乗り込んで、彼は東京に帰っていった。


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白川筋にて


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デルタにて


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龍安寺にて


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嵐山にて


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銭湯にて


友有り遠方より来る、亦楽しからずや。