壁を舐めたい

私はひとが、自分の主語で勝手に打ち出している感想は好きだ。ひとつ前の文章で触れたものとは明確に違う。

誰かに話しかけているものではなく、人の反応を強制していない、自分の責任の範囲内で丁寧に編み出している文章が好き。

久しぶりにこのアカウントにログインして、過去の自分が気に入った記事を読んだ。
今私が好きな音楽家の本についての感想なのだけれど、珍しくひとつも嫌な気持ちになることなく読めた。だからお気に入りにしていたのだと思う。

私もその本を読んでいて、以下ついでに初見の感想を述べると、
気になったはいいもののどれから手をつけて沈み込んでいけばいいかよく検討していなかった私にとって、1番優しい本だった。題名から「ザ・気になってるやつとりあえずこれ見とけ」な感じがしたし、ものすごく多い文字量で出来るだけ多くその人に関する情報がまとめられていた。
…と、ここまでが私が思ったこと。

で、その本を買って1年以上経過した今、
改めて他人の感想を読んでみると、私の感想はとても抽象的で、その詳細を拾えない癖があることを再確認した。
例えばある部屋があったとして、
私はドアを開けて入って、なんとなく天井の隅の辺りを眺めているのだけれど、
その人の感想はまるで、入った部屋の壁を舐めるような姿勢を感じた。
味わい、いくつかの理屈を付けて、そうしてまた別の壁を舐めるような…

憧れた。私はそれをしなかったから、そうしたいと思った。好きでいる人をつぶさに観察して、頬を緩めたり、本当に意味のわからないときは匙を投げるように突き放したり、そういう活動をもっとするべきだと思う。

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