米国は香港に制裁 具体的対象は誰?

「米国は江沢民や米民主党によってコントールされる香港のデモ隊に制裁を科すことだ」など風説がツイッターで散見されますが、米国の目的を解説いたします。

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1. 米国にとっての香港とは?

先ずは米国が香港の扱い方を規定した法律をまとめます。

「米国-香港政策法」:中国政府に対して1984年共同声明の香港における高度の自治の保障等の規定の完全な履行を求め、大統領が香港の自治が十分に保障されていると認定した場合に、香港に対して法的に中国とは別個の取扱いが可能としている。その反対に香港が中国本土からの自治を維持していないと判断すると、香港への優遇措置と香港の特別な地位は取り消すこともできる。

「香港人権・民主主義法」:香港における中国からの高度の自治の確立や、人権の擁護、民主主義を支援するのを明確にする。

「香港自治法」:香港の自治の侵害に関わった中国や香港当局者と取引をする金融機関、香港の民主主義の衰退に関与した個人に制裁を科せる。

2. 米国は実際何をしたか?

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(『産経新聞』、2020年5月30日)

中国への直接投資の7割は香港を経由し、香港に多くの外資系企業が進出していました。何より香港で登録した全ての外資系会社(中国系会社を含む)も「香港の会社」と米国と他の外国に見做されていました。米国が香港への輸出優遇措置を取り消す目的は、香港の中国系会社に対して糧道を断たれることでしょう。 さらに、林鄭月娥行政長官ら中国・香港政府高官11人に制裁を科しました。米国の行動から見ると、制裁対象者は非体制派ではなく、非体制派弾圧の責任を負う中国・香港当局者と明らかにしたが、冒頭で述べたような陰謀説が成り立たないでしょう。

3. 結局香港市民は江沢民派に利用されているか?

2014年香港反政府デモから初めて「香港市民は誰かに煽動されてデモを起こす」という論調が伝えられています。外部の人は、暴力的シーンを全部意図的に衝突を拡大させようとする行動と十把一絡するかもしれないが、実際香港市民は「便衣兵」と味方をしっかり区別しています。例えば香港の反中派側は親中派のお店に標的破壊を行ったけど、香港の親中派や米国のアンテファとは違って無差別破壊・攻撃をしませんでした。その結果反中派側の行動が一般市民の大半から理解を得ることになります。どんな党内闘爭が香港に展開するとしても、中国の権力側が香港への弾圧を続けるには違いありません。


参考文献:

倉田徹(2019)「香港デモ 暴力の論理」、『外交』日本外務省、Vol.57、9-10月、pp. 14-19、https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000521220.pdf(2020年8月11日アクセス)

株式会社三菱UFJ銀行(2019)『米国 香港政策法改定と香港人権・民主主義法成立』、https://rmb.bk.mufg.jp/files/topics/1072_ext_02_0.pdf(2020年8月11日アクセス)

「香港の大規模衝突 裏に習江両派の攻防戦」、『大紀元時報日本』、2016年2月16日、
https://www.epochtimes.jp/p/2016/02/25249.html(2020年8月11日アクセス)

「香港政府「経済制裁への対応準備」 国際経済都市の地位揺らぐ」、『産経新聞』、2020年5月30日、https://www.sankei.com/world/news/200530/wor2005300033-n1.html(2020年8月11日アクセス)

「中国反発「米国は横暴」 香港長官ら11人制裁で」、『日経新聞』、2020年8月8日、
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62474770Y0A800C2EA3000/(2020年8月11日アクセス)