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「これでいい」の話

以前、コップの話を書いたけども深澤直人氏といえば無印良品の話が面白いので紹介してみる。オチは無い話である。

無印良品

無印良品のコンセプトはここに説明されているのだが冒頭から面白い。ちょっと抜粋してみよう。

「これがいい」「これでなくてはいけない」というような強い嗜好性を誘う商品づくりではありません。無印良品が目指しているのは「これがいい」ではなく「これでいい」という理性的な満足感をお客さまに持っていただくこと。つまり「が」ではなく「で」なのです。

自分としてはこの歳になるまでこの観点は持ったことがないし、やれと言われたってこんなことができると思えない。「これでいい」のに売りまくらないといけないなんて。

この「これでいい」というコンセプトで選ばれてしまうギリギリのラインのデザインとはいかなるものなのか、商品デザインのなかで何を生かして何を捨てるのか想像もつかない。私はちょっと怖い。

無印良品の場合は工場での製造工程や原材料費、値段の付け方みたいな制約があるからその制約のなかで「これでいい」を探すというのが一つあるのだろえうけど、部屋を無印の商品で固めてみると無印っぽい部屋になりつつ安っぽさを感じない(人によるか?)のも面白い。

プラットフォームソフト

自分の専門はプラットフォームであってアプリではないのだが、「これでいい」けど選ばれてしまうプラットフォームがあれば最強だろう。プラットフォームは上のアプリ次第なので汎用的に売るには「これでいい」ラインが欲しい。最近ではdockerは絶妙な線を行っていたと思う。三大クラウドだとAWSがそうか?

リアルな商品の場合は制約のなかでのデザインになるがソフトウェアの場合は作る分には機能を追加しやすい。そんなもんで機能を足したくなる誘惑はあるが制約はなんだろうか?

開発コスト以外のコスト制約はリソースとメンテナンスコストだと思う。

リソースに関しては最近はクラウド上のサービスも多いのでランニングコストの制約ももちろんあるし、組み込みならそもそもいれられるかという話はある。

機能を増やすとメンテナンスコストが上がる。LinuxみたいなメジャーなOSSだと機能のサポートを落とすのに一年くらいかけることになるしシステムコールや/procのエントリーは一度追加したら基本は落とさないので後の機能維持が大変だ。

それでも機能が増える方向にしか普通は進んでいかないんじゃないだろうか?使ったことがない機能なんて山ほどある。

あらゆるユースケースに備えるならオーブンソースは宿命的に仕方ないとしてサービス設計となると「これでいい」のギリギリのラインを考えたいものである。

クラウドネイティブな「これでいい」プラットフォームはまだ見えていない気がちょっとしていて、Kubernetesは「これがいい」かやり過ぎにちょっと寄ってるんじゃないかなと思わなくもない。

空の器

無印良品の続きを見てみると以下のようにある。

無印良品の商品の特徴は簡潔であることです。極めて合理的な生産工程から生まれる製品はとてもシンプルですが、これはスタイルとしてのミニマリズムではありません。それは空の器のようなもの。つまり単純であり空白であるからこそ、あらゆる人々の思いを受け入れられる究極の自在性がそこに生まれるのです。省資源、低価格、シンプル、アノニマス(匿名性)、自然志向など、いただく評価は様々ですが、いずれに偏ることなく、しかしそのすべてに向き合って無印良品は存在していたいと思います。

無印良品のようなコンセプトを体現したプラットフォームとはどんなものだろうか。シンプルかつ汎用的で誰のユースケースにも何となく入り込む。

コップの話でいうと人と部屋と飲み物をどれだけ想像できるかという話なんだろうと思うと、ソフト屋は現場を知れってがまず最初なのか。

限られた時間のなかで多様な現場の風景をなんとかデザインにいれていくという意味ではオーブンソースに一つアドバンテージがあるかもしれない。もっとも意見を聞きすぎるとボタンの多いテレビみたいになっちゃうのでそこは難しい。デザインとユーザーへの愛情のバランスが最後には必要なんだろう。

ソフトウェア、サービスデザインとして「これでいい」とはどういうことか、機能過多でなく、汎用的で、デザイン品質が高く、メンテナンス可能な、足しても引いても駄目な、時代性のあるシンプルさをどう獲得するのか。

私はもう何をいってるのかさえわからなくなってきたが(笑)、悩むだけ悩むしかない。

作ったものを見直すのも面白いと思う。

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