オミクロン株の波をどう乗り切るか

新型コロナウイルスに関しては、数理的思考を要求される場面が何度となくあった。PCR検査の偽陰性・偽陽性の問題を考える上では、ベイズの定理の考え方が必要だった。(この件についてはパンデミック初期に動画を作って解説している。)

今、数理的思考の欠如がまた必要な対策を見誤らせている。現在、新型コロナウイルスは前の週に比べて約10倍のペースで増えている。1月8日には新規陽性者が全国で8000人を超えた。そんな中、ワクチンのブースター接種を急ぐべきだという声が上がっている。しかし、このペースで陽性者が増えれば、ブースター接種など間に合わないのは、指数関数を理解していれば明らかだ。単純計算でいくと2週間後には1日80万人が感染することになる。もちろん、実際には免疫保有者が増えるので、ある程度まで感染者が増えると頭打ちになるが、今後一ヶ月のうちに数千万人の人が感染しても全く不思議ではない。今からワクチンを準備しても間に合わないことは明らかだ。(そもそも、ブースター接種をすることによる効果は限定的との研究報告もある。)

では、どのような対策がとれるか。最も有効で現実的な方策は、感染が急増する今後1ヶ月程度の間、重症化しやすい高齢者や持病のある人に、できるだけ他の人との接触を控えてもらうことである。オミクロン株は重症化しにくいと言われているが、それでも高齢者や持病を持つ人は一定の確率で重症化する可能性がある。よって、重症化しにくい低リスク層に感染が広がる間だけ、隔離・待機してもらい、集団免疫ができるまで待てば、全体として重症化する人の数は抑制され、医療逼迫が起きるのを防ぐこともできる。

感染が最初に広がった南アフリカの場合、約1ヶ月で新規陽性者数は収束に向かった。この1ヶ月を乗り切る最善の方法は、高リスク層に感染予防を徹底させることである。この当たり前の対策を言っている人をほとんど見かけないのは大変残念である。これを読んだ人は、この見解を是非広めていただきたい。