プレプリント公開後(2022年4月~)

9月に掛谷・松本論文についてIPSJ Transactions on Bioinformaticsから採録通知が来た(掲載は11月)。この雑誌は日本の情報処理学会が発行するバイオインフォマティクスの英文誌である。メジャーな雑誌ではないが、Scopusには登録されている。

その報告を私から荒川氏にしたところ、荒川氏から「論文の採録決定おめでとうございます!」との返信があった。

荒川氏は自らのnoteで以下のように書いている。

掛谷先生は自身の論文を投稿する雑誌について、「計算さえ合っていれば内容はさほど吟味されず採用される雑誌」だとも言われていました。それを聞いた私は、掛谷先生が論文を投稿される先はウイルス学や分子生物学に関連した雑誌というわけでもなく、全く別分野の雑誌なのだろうと理解しました。

しかし、下記メールにある通り、実際には上の論文に通す前に、PLoS Comutational Biologyなどに投稿している(エディター・キックで査読にすら回らなかったが)。最初から採録されればどこでもいいという姿勢ではなかったことが分かる。

さらに、IPSJ Transactions on Bioinformaticsの投稿規定も、以下に書かれている通り

基本的な考え方として、減点法ではなく、論文のよい点を積極的に評価いたします。内容に本質的や誤りがないと思われ、新規性、もしくは、有用性が十分にあれば、採録します。

であって、「計算さえ合っていれば内容はさほど吟味されず採用される雑誌」という荒川氏の形容は明らかに間違っている。この後述べる共著論文の投稿先を議論する中で、私がIPSJ Transactions on Bioinformaticsの投稿規定を紹介した際、それを誤って聞いたか記憶したかで、荒川氏は自らのnoteに不正確な記載をしたものとみられる。

荒川氏のプレプリントが2022年6月に公開されたので、もともと合意していたように、荒川氏のプロト配列を使って私の提案する計算を試すことにした。そこでは、変異確率を平衡モデルではなく、実際の変異スペクトルをもとに計算しているという新規性もある。その論文はプレプリントとして公開されている。

その論文を書く過程において、荒川氏が以下のようなことがあったと述べている。

その論文で掛谷先生は私のプレプリントの図をそのまま自分自身の図表として使おうとした

しかし、私の論文初稿を確認したところ、以下のように図のキャプションには元データが荒川論文であることが明示されていた。よって、私が荒川氏の図を自分自身の図表として使おうとしたという表現は間違いである。

上のプレプリント公開後、荒川氏との協力関係はなくなっているが、私は松本氏などと協力してその後も新型コロナウイルス変異株起源の研究を続けている。2023年には2本のプレプリント論文を公開し、現在も新たな研究成果をプレプリント論文として公開するための準備を進めているところである。

今回のまとめ

  • 掛谷の論文採録通知の報告に対して、荒川氏は「論文の採録決定おめでとうございます!」と返信した。

  • 掛谷が「計算さえ合っていれば内容はさほど吟味されず採用される雑誌」に投稿予定だと言ったとする荒川氏の主張は事実に反する。

  • 掛谷が荒川氏の図を自分自身の図表として使おうとしたとする荒川氏の主張は事実に反する。

これで荒川氏と私とのやりとりの紹介は終わりである。次回は、これまで紹介してきた荒川氏によるnoteの記載の誤り全てをリスト化したものを示す。