【マッチレビュー】山口パッツファイブ 〜新たな航海〜 #26
GAME1
TUBC83-59山口
23年10月に開幕した23/24シーズンのB3リーグもいよいよ最終節。
山口の最終節の対戦相手はTUBCだ。
TUBCはプレーオフ進出争いの渦中のチームだったが、プレーオフを争う他チームの試合結果により、最終節の試合を待たずに7位を確定させている。
結果的に今節は順位確定後の試合となるが、プレーオフの香川戦を前に弾みをつける試合としたいところであろう。
山口とTUBCは2月に対戦をしており、その時はTUBCが厳しいロスターの中、アウェイで1勝を掴み取る結果となった。
おそらく会場都合の関係で土日開催ではなく、月火開催となったこの試合。文字通り、今シーズンのB3リーグを締めくくる試合となる。
最後にふさわしい2試合になることを期待したい。
-1Q(28-10)-
山口はスターターで7.ジュールズではなく15.濱田を起用。その15.濱田はクレイグのマークにつく形となった。
山口はマンツーマンディフェンスの中で、相手のインサイドへのアタックを警戒する意識を見せる。ヘルプにいける距離感を保ち、ボールマンへの高い位置からのアプローチは自重していた。
一方のTUBCはゾーンディフェンスで対抗。
ドライブのスペースを消し、アウトサイドからのシュートを仕向ける形を見せた。
1QはTUBCが圧倒。その要因として山口がTUBCのゾーンに対するオフェンスに苦戦したことが挙げられる。ただただ3Pシュートを打たされるポゼッションが続き、そのシュートを決めきれずリズムを作ることができなかった。
TUBCが6.新号や52.グロリダなど、セカンドユニットを投入し、マンツーマンディフェンスに変更してきた後も、悪い流れは続き、全く対応ができず、思うようにシュートを放てないポゼッションが続いた。
TUBCのマンツーマンディフェンスの練度が高いこともあるが、ブリッツやスイッチ、ローテーションに対して、ズレを作ることがあまりにもできていなかった。
ディフェンスは立ち上がりこそ機能していた山口だったが、オフェンスのリズムが作れないことで、ディフェンスにも綻びが見られるようになる。
オフェンスの終わり方が悪いため、ブレイクからの失点も出てきてしまい、大きくリードを奪われてしまった。
1Qは28-10でTUBCが力の差を見せつける展開となった。
-2Q(20-14)-
2Qも変わらずTUBCがディフェンスの圧力から試合を支配する。山口は外をボールが回るか、単発のドライブというオフェンスが多く、厳しい状況が続いた。
ただ、ディフェンスは1Qの開始直後と同様、立て直しを見せ、TUBCの得点を最低限に防ぐことができるようになった。
すると、試合は一進一退の攻防で進むようになる。山口は25.田中のドライブで得点を動かすと、1.エイブラムのドライブや2.上松の3Pシュートで得点を挙げる。
TUBCは32.クレイグの3Pシュートやスティールからのファストブレイクで得点を挙げる。
中盤あたりのTUBCのタイムアウト明け、山口はゾーンディフェンスを選択。しかし、14.マドゥアバムに簡単にダンクを許すなど、ペイント内への進入を止められず、再び点差を広げられてしまう。
前半はTUBCがディフェンスで山口を圧倒。
2Qもリードを広げ、48-24で折り返すこととなった。
-3Q(20-20)-
3Qの立ち上がりは1Qのリプレイのような展開となった。
TUBCのゾーンディフェンスに対して、山口はアウトサイドから3Pシュートを打たされ、それが決まらないという流れに。
一方のTUBCは14.マドゥアバムの強さを生かして、簡単に得点を挙げる。
ただ、TUBCのアウトサイドからのシュートが落ち始めると、1.エイブラムがリバウンドを拾って猛プッシュ。そして9.重冨もそれに続いて猛プッシュからブレイクで得点を挙げるようになる。
ディフェンスでの足も再び動くようになり、流れが山口に傾いてもおかしくない展開であったが、結果的にはここでその流れを完全に掴むことができず、そのまま敗戦となってしまった。
その要因は3Pシュートの決定率の低さ、ファストブレイク、オフェンスリバウンドからの失点だ。細かいところで流れが途切れてしまい、点差が縮まることはなく、時間が過ぎていった。
TUBCの最後のポゼッション、6.新号が3Pシュートのファウルを受け、それを決め切ったことで、20-20のイーブンとなった3Qだった。
-4Q(15-15)-
4Qに入り、ディフェンスのギアをもう一段上げてきたTUBC。
前半のディフェンスはペイント内におびき寄せて囲い込むような印象だったが、このクウォーターは高い位置から体をぶつけ、ペイント内に進入させないような強度のディフェンスだった。
山口のオフェンスをシャットアウトし、オフィシャルタイムアウトまでの失点を4に抑える。
オフィシャルタイムアウト明けには、9.重冨と23.石橋のピックアンドロールから、山口がようやくゴール下の簡単な得点を挙げると、良い守備からブレイクにつなげ、1.エイブラムの連続得点が生まれるようになった。
残りの5分は挽回を見せた山口だったが、試合全体としてはTUBCが支配をしていた。
83-59で完勝となった。
-試合後の感想-
TUBCのディフェンスが光る試合となった。
山口の3Pシュートがあまりにも低確率だったこともあったが、試合開始からのゾーンディフェンスを見ると、3Pシュートを打たせる戦略を取っていたようにも感じる。
マンツーマンでは、素早いローテーションから3Pシュートに対しても、最後までアプローチができていたため、TUBCのディフェンスが山口のアウトサイドシュートを落とさせたとも言えるだろう。
GAME2では山口のオフェンス面でのアプローチで改善が見られなければ、今日と同じような展開となってしまうことが考えられる。
泣いても笑っても明日が今シーズンの最後の試合。
戦略、エナジーの両面から山口の意地に期待したい。
GAME2
TUBC82-72山口
今シーズン最後の試合。前日に完勝を果たしたTUBCは同じスターターを起用。一方の山口は7.ジュールズ、8.下山、32.吉川を起用し、大きくメンバーを入れ替えて臨んだ。
-1Q(10-13)-
GAME1はゾーンディフェンスで試合に入ったTUBCだったが、この試合はマンツーマンディフェンスを選択。
前日に続き、練度の高いディフェンスを見せるTUBC。対する山口は、ボールが回らず、マークにつかれた状態でのシュートシーンが多くなっていた。
開始5分弱で1得点も挙げられず、この試合もオフェンスでリズムを作ることができなかった。
ただ、前日と違う点はTUBCのオフェンスも沈黙した点である。山口よりもボール回りは良い印象だったが、シュート決め切れず、次第にリズムを失っていった。
中盤以降は、山口の激しいペイント内でのチェックに対して、ファウルをアピールするも、それを取ってもらえないシーンも多く、得点が止まった。
58.山本の3Pシュートなどで前に出たTUBCに対して、ファストブレイクをはじめ7.ジュールズ、1.エイブラムの得点で逆転した山口。
超ロースコアの1Qは10-13で山口がリードとなった。
-2Q(28-22)-
2Q最初のプレーで、見事なローテーションディフェンスでTUBCのアタックを止め、ファストブレイクから7.ジュールズのバスケットカウントを獲得した山口。流れを掴むかに思われたが、試合が動いたところで逆にTUBCがペースを掴み返した。
31.富田のチェックがありながら、58.山本が3Pシュートを決めると、6.新号のドライブによるバスケットカウント、ルーズボールに競り勝ち14.マドゥアバムがダンクを決めて逆転に成功する。
7.ジュールズ、25.田中の得点で山口が再び逆転に成功するも、0.上田の3Pシュートと46.今林、14.マドゥアバムの得点で25-20とTUBCがペースを握ってオフィシャルタイムアウトへ突入した。
オフィシャルタイムアウト明けは、46.今林のアタックが効果的に決まり、TUBCが優勢に進めるかに思われた。
しかし、TUBCのファウルが増え、山口がフリースローで着実に得点を重ね、ついていく展開となる。
同点のまま迎えたTUBCのラストポゼッション、TUBCのピックに対して、スイッチディフェンスで対応を見せる山口だったが、ボールマンの0.上田に対する7.ジュールズのマークが甘くなり、3Pシュートを許してしまう。
38-35とTUBCが3点リードで前半を折り返した。
-3Q(20-16)-
3Qの出だしは、ターンオーバーからのスタートとなった山口に対して、14.マドゥアバムのインサイドアタックで得点を挙げるTUBCという構図に。
その後、互いに形を作る中でのシュートを決めるか決めないかの部分でTUBCがペースを掴んだ。
山口が3Pシュートやゴール下のレイアップを外した直後に0.上田の3Pシュートや2.川島のアタックからリードを広げ、この試合最大の10点リードを奪った。
嫌な流れの山口だったが、ディフェンスで踏ん張りを見せる。TUBCのパスコースを読み、パスカットからのブレイクで得点を挙げると、9.重冨の精度の高いシュートによって再び点差を詰める。
ただ、終盤にかけての時間では、3Qあたっていた9.重冨にスペースを与えることができず、ターンオーバー。そして、46.今林、58.山本に得点を重ねられ、再び差が広がってしまった。
3Q終えて、58-51。TUBCがリードを広げることに成功した。
-4Q(10-17)-
この時間になっても、オフェンスのリズムが掴めない山口。
4Q最初のポゼッションは2.上松のパスミスによるターンオーバー。次のポゼッションは1.エイブラムがドライブからのレイアップを決め切れない。
その間に5.ダブのオフェンスリバウンドからの得点、58.山本、52.グロリダの連続3Pシュートで15点のビハインドとなってしまった。
しかし、ここから執念の粘りを見せる山口。
32.吉川の猛烈なプッシュと8.下山の連続3Pシュートで悪い流れを断ち切る。
すると、9.重冨が自身のターンオーバーを取り返す強烈なプレスでターンオーバーを奪い返し、1.エイブラム、7.ジュールズの連続得点で66-62と追い上げてオフィシャルタイムアウトへ突入する。
オフィシャルタイムアウト明けもペースは山口。TUBCにとっては不運な笛も相まって山口の勢いを受ける展開になってしまった。
山口はアウトサイドシュートが決まらない中で、32.吉川、1.エイブラム、9.重冨と立て続けにペイント内を攻略し、遂に同点に追いつく。
残り10秒。同点からTUBCのラストポゼッションは、この2試合ほとんど自分からシュートを放っていなかった32.クレイグの3Pシュートを選択。
ただ、このシュートは惜しくもリングに嫌われて同点のままオーバータイムへ突入することとなった。
-OT1(14-4)-
B3リーグのシーズン最終戦はオーバータイムの展開へ。
両チームともに3Pシュートを外し合う流れから最初に状況を打開したのはTUBCの2.川島。
ドライブからレイアップを沈め、最初の得点を挙げる。
オーバータイムの山口は再びオフェンスが停滞。この2試合を通して悪かったオフェンスのリズムになってしまう。
アウトサイドからのシュートが決まらない中で、ペイント内のスペースを見つけられない。
ボールが回らず、ターンオーバーかタフショットというオフェンスの終わり方となり、4分20秒を過ぎるまで1得点も挙げることができなかった。
ある意味、TUBCが一段ギアを入れ、本気のディフェンスを見せつけたと言えるかもしれないが、オーバータイムについては勝負にならず、TUBCが順当に2点を重ねてリードを奪った。
残り40秒で10点のビハインドを背負った山口。ファウルゲームを仕掛けるが、ここでも2点を取るのが精一杯で、点差を詰めることはできず、82-72でTUBCが連勝を飾った。
-試合後の感想-
TUBCはプレーオフに向けて弾みのつく連勝となった。
プレーオフ初戦対戦相手である香川からアウェイで2勝するためには、この2試合で見せたような練度の高いディフェンスを軸に、シュートをどのくらい決め切れるかにかかっているように思う。
山口と比べると高さのある香川のオフェンスに対しても、このディフェンスは十分対抗できると感じた。この2連戦ではシュートを決め切れない場面もあり、その辺りの確率を高めることがプレーオフでは必要となるであろう。
B3リーグ参入1年目のプレーオフは初戦で敗れていることもあり、ここで1つ前に進めるかどうかはチームにとっても大きいはずだ。
TUBCのプレーオフでの戦いぶりに大いに期待したい。
一方の山口は最終戦に意地を見せる形にはなった。
粘りの要因はディフェンス。今シーズンのチームが目指してきたディフェンスで勝負形に持ち込むことができたのは、やってきたことに間違いがないという大きな成果と言えるのではないだろうか。
ただ、この2試合はTUBCのディフェンスの前にオフェンスが終始厳しかった。
頼みの綱の1.エイブラムに当たりがこないと状況が打開できない攻撃力では勝利を重ねるのは難しくなってしまう。
GAME1の3Qはファストブレイクで、GAME2の4Qはディフェンスから連続得点を挙げる形を作ったが、セットしてからのオフェンスで形を作ることができたシーンは、85分間トータルで見ても数回だったように思う。
結局、プレーオフに進出する上位チームとの最後の8連戦は8連敗となり、力の差を見せつけられる結果となった。
着実に前に進んでいるものの、来シーズンに向けて課せられた宿題に対して、どのように向き合っていくのかが非常に重要だ。
その辺りはまたシーズンレビューの形で振り返りたいと思います。
まずは1年間お疲れ様でした!また来年!