見出し画像

「対戦相手の分析とゲームプランと自分たちの強みと」 〜山口パッツファイブ 23-24シーズンレポート〜

B3リーグに加盟して3シーズン目
山口パッツファイブとしては最初のシーズンの戦いが幕を閉じました。

個人的には毎試合追いかけるのが楽しい一年でした。そのシーズンの締めくくりとして、最後レビューまでやり切りたいと思いますので、よろしければお付き合いください。


山口スタイルの継続と計算外

チーム名だけではなく、HCが変わって臨んだ23-24シーズンの山口。外国籍選手も全員入れ替わるなど、大きな変化が生まれてもおかしくはない状況だった。

しかし、昨シーズンのチームに選手兼ACとして所属していた鮫島HCが引き継いだこともあってか、チームスタイルについては大きな枠で見た時には、継続されていたように感じる。

アグレッシブに40分間プレーを続けること。素早いテンポで相手コートまで運び、積極的にシュートを狙っていくこと。
この辺りは前任者のチームと同じようなスタイルだったと言える。もはや山口のスタイルとしてB3リーグ全体の中でもある程度定着しているかもしれない。

その中で、昨シーズンとの違いを挙げるとすれば、そのスタイルを爆発力に繋げるために、3Pシュートを高確率で決めることができる選手が加入した点となるであろう。

外国籍で言えば1.エイブラム、日本人選手で言えば8.下山がその筆頭だ。

この点が明確な強みとなれば良かったが、そううまくはいかなかった。3Pシュート成功率こそ34%でリーグ4位だったものの、1試合辺りの成功数は8.0本でリーグ12位、1試合辺りの試投数も23.6本でリーグ13位と、決して高い水準の数字を挙げていたわけではなかった。

また、特にシーズン序盤は決まる試合と全く決まらない試合の波が激しかった印象である。

シュート力の安定感に欠けた部分は、思うように勝ち星が重ねられなかった要因の一つであると思う。

ディフェンス面の志と成果

チームスタイルは継続する意思を見せた鮫島HC体制だったが、ディフェンスのスタイルについては大きく手を入れて変化を図った印象だった。

私が感じているものが、どれほど実態と合っているかは分からないが、
シーズン開幕前の天皇杯、初戦のONELYS wakayama戦から今シーズンのチームが目指すディフェンスの意図を感じ取っていた。

昨シーズンまでの山口は、特にマンツーマンディフェンス時に、そこまで細かな決まり事があるわけではなく、マークにつく相手選手に負けないことが求められていたような印象だった。

もちろん、相手によってのプランやローテーションのルールがないわけではないが、その色が強くはなく、シンプルに守ることを目指していたというニュアンスで捉えている。

対する今シーズンの山口は、セットした際のポジショニングやヘルプへの距離感、マークマンをスイッチした後のローテーションといったルールが細かくデザインされているように感じた。

B1などのトップレベルでは標準的に実装されているこのようなディフェンスを普通に表現することを目指していたと思われる。

ただ、シーズン序盤からいきなりうまくいくことはなく、先ほど挙げたONELYS wakayama戦でも、頭で考えてしまって足がすぐに動かなかったり、不用意なヘルプに寄ってしまって逆サイドのシューターをフリーにしてしまうシーンがあった。

リーグ開幕戦のしながわ戦では、伊藤・高橋と強力なガード陣に攻められたこともあり、まだ確立できていない山口のディフェンスが切り裂かれてしまった。

それでも対戦相手の特徴や自チームのロスターの状況も踏まえて、毎試合ディフェンスプランを微調整する中で、シーズンが進むにつれて少しずつ形になっていった。

シーズン終盤の岡山戦は、このディフェンスがかなり高いレベルで表現できた試合だったのではないかと思う。

上位チームの比較した時の相手選手への距離感や40分間トータルで見た時の遂行力、そしてディフェンスリバウンドの確保と、明確な課題や伸びしろがまだまだあるはずなので、来シーズンでのさらなる進化を期待したい。

来シーズンに期待すること

今シーズンの山口のスタイル(主にオフェンス)とディフェンス面でのトピックを振り返ってきたわけだが、ここからは来シーズンに向けての話をしていきたい。

来シーズンに向けては自分たちの強みを押し通す力の向上が不可欠であると考えている。

なぜ、この力の向上が必要だと考えているのか。それは、今シーズンのチームが相手に合わせて戦略を練り、その戦略に基づいた戦術を軸に戦っていたと感じているからだ。

ここで改めて、今シーズンの戦いぶりを勝敗の観点から振り返りたい。

前述したしながわ戦から始まり、開幕4連敗とスタートダッシュに失敗してしまった。しながわ、豊田合成と今振り返れば、下位に沈んだチームであったこともあり、非常に痛い4連敗となってしまった。

しかし、鹿児島戦で初勝利を挙げると、その後は勝率5割で2023年を戦い抜いている。

金沢にホームで連勝、香川にアウェイで連敗となったが、それ以外の試合は全て1勝1敗だった。

2024年に入ってからはなかなか上位チーム相手に勝星を挙げることが難しくなってしまったものの、23年の戦いぶりなどを見ると、今年の山口は上位相手にも良い内容の試合ができるチームであったことは間違いない。

昨シーズンはプレーオフに進出したチームの内、勝利をあげられたのは静岡、岡山の2チームだけ。試合内容としても大差の試合は多かった。

一方、今シーズンは鹿児島、徳島、横浜、TUBC、湘南と5チームからそれぞれ1勝を挙げることができた。

勝星を挙げることができなかったチームの中でも、福井とは2試合対戦していずれも大差での敗戦であったが、香川やさいたまとは接戦の試合を演じることができた。

そう考えると、上位チームを相手にしても4試合戦えば、最低1試合は良い内容の試合を演じることができる力はあったチームだった。

反対に、山口と同じく下位に沈んだチームに対しても同一カードの連勝を逃すことが多く、開幕4連敗の遅れを最後まで取り戻すことができなかった。

特にそのチャンスがあったアウェイ岡山戦や三重戦は結果論で言えば、シーズンを左右するターニングポイントとなってしまった。どこかで連勝を果たすことができていれば、勝率5割での年越しも十分考えられた。

このように、今シーズンの課題の一つは、同一カードの連勝が一度しかできなかったことであると言える。

そして、この課題を克服するために必要な力が自分たちの強みを押し通す力であると私は考えている。

連戦で戦っていく中では、2試合を通じて自分たちのプラン通りに進めることはほぼ不可能である。

例えば、GAME1で自分たちのゲームプランがうまくいって先勝を飾っても、GAME2で対戦相手も必ず修正を加えてくるわけで、連勝をするためには、その修正をさらに越える必要がある。

もちろん、新たなプランを立てて対抗することも対策の一つにはなるのだが、相手のプランが100%分からない中では、うまくいかない時間帯も必ずあるはずだ。

その時に、どんな相手でもある程度計算できる自分たちの強みがあれば、それを押し通すことで、試合を繋いだり、流れを引き寄せたりすることができる。

それが、ディフェンスなのか、強力な得点源の存在なのか、デザインされたオフェンスの形なのかは分からない。

ただ、強いチームには必ずそういった立ち返るべき場所があるはずである。

今年の山口で言えば、ディフェンス面でそういったものを作りたかったのではないかと感じているが、リーグ全体の中で上位のレベルに達していたとは、個人的には言い切れないところがある。

来シーズンのチームには、リーグの中でも大きな強みと言える部分が一つ二つと構築されることを期待したいと思う。

あとがき

ここまでシーズンを終えての感想を書いてきたが、鮫島HCのチームを追いかけるのは非常に楽しかった。

だからこそ1年間レポートを続けることができたし、福井遠征も決断できた(笑)。

見当違いのことも書いているとは思うものの、私としては自分が感じて書き残したことを指針に次の試合を見ることで、やはりそうかと思ったり、全然違うやん!と思ったりできて、どんどんのめり込んでいった感覚がある。

このレポートも、また同じように来シーズンの山口を見るときの一つの指針になればいいなと思うところである。

チーム、ブースターの皆様、1年間お疲れ様でした。そしてありがとうございました。
また、来シーズンもよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?