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【マッチレビュー】山口パッツファイブ 〜新たな航海〜 #24


GAME1
山口70-98さいたま

前節アウェイで福井と対戦した山口。
その連戦では、力の差を見せつけられる結果となった。

ホームに戻る今節はさいたまブロンコスとの対戦となる。
2月に行われた浦和での試合では、2.クリークモアの欠場もありながら、さいたまが連勝を飾っている。

さいたまはここまで30勝16敗の4位。プレーオフへの進出は確実なものにしており、徳島、横浜と4位を争っている状況だ。

プレーオフ1回戦でのホームコートアドバンテージを得るためには連勝がほしいアウェイゲームとなる。

-1Q(21-18)-

1Qは互いにシュート精度を欠く展開となった。
ディフェンスのプレッシャーがさほどかかっているわけではなく、ある程度フリーの形を作ってシュートを放っているが、それが決まらないシーンが両チームともに多かった。

先にリードを奪ったのは山口。9.重冨と7.ジュールズのピックアンドロールが比較的うまくいっており、そのプレーを中心に得点を挙げた。

さいたまはオフェンスリバウンド、トランジションからゴール下の簡単な得点でつないでいた。
途中からは2.クリークモアと40.フェイゾンを投入し、オンザコート3の時間も作りながら、簡単にペイント内に進入し、得点を挙げた。

山口はさいたまのドライブやローポストなどインサイドへの進入を警戒しており、アウトサイドからのシュートはある程度許容する守り方が1Qは良い方向に出ていた。

21-18で山口が先手を取った。

-2Q(15-31)-

2Qは山口の不用意なターンオーバーとディフェンスリバウンドの弱さにさいたまが漬け込む形で、先手を取った。

その中で11.秋山がドライブからのレイアップと、3Pシュートで5得点を挙げて逆転に成功。

山口はタイムアウトを取るものの、直後のオフェンスでも不用意なターンオーバーから40.フェイゾンの得点を許し、悪い流れを自分たちで作ってしまった。

そのさいたまは再びオンザコート3で流れを掴みにいく姿勢を見せる。
高さの優位を生かしたゴール下の得点やそれを囮にした11.秋山の3Pシュートと徐々に得点への道筋が見え始め、26-35とリードを奪ってオフィシャルタイムアウトとなった。

タイムアウト明けもペースはさいたま。
高さの優位を生かし、簡単にペイント内へ進入。アウトサイドシュートが決まらないこともオフェンスの選択に影響しているのか、ひたすらにペイント内から2Pシュートを重ねていく。

山口は試合開始から継続して3Pライン内側への進入を警戒する守り方をしているものの、さいたまがオンザコート3の状況だと、どうしても上からのパスコースを防ぐことができず、ペイント内への進入を許した後からの難しい対応となってしまっていた。結果的にファウルも嵩みフリースローでの失点も次第に増えていくこととなった。

アウトサイドシュートの成功率も思うように上がってこないことも影響し、36-49と大きなリードを許す2Qとなった。

-3Q(22-26)-

後半は、はじめからオンザコート3を選択したさいたま。最初のポゼッションで2.クリークモアの3Pシュートが決まると、18.エショ、40.フェイゾンのゴール下の得点、14.佐藤の3Pシュートと内外からシュートが決まりだし、点差を20まで広げることに成功した。

山口は8.下山の3Pシュートで得点を挙げるものの、一度火のついた14.佐藤に3本の3Pシュートを許し、なかなか反撃のリズムを掴むことができない。

最終盤は1.エイブラムのブロックショットやダブルチームでさいたまのインサイドの得点を防いでいたが、大きな流れを生むには至らず。
さいたまが58-75とリードを広げるクウォーターとなった。

-4Q(12-23)-

3Qにプレーし続けた2.クリークモアを休ませるさいたまに対して、山口は9.重冨を頂点としたゾーンディフェンスで対抗を試みる4Q。

ターンオーバーを誘発するシーンもあったものの、ペイント内への進入はなかなか防ぐことはできず、8.五十嵐の得点や、28.川邉、11.秋山の3Pシュートを許し、さらに点差を広げられてしまった。

オフェンスも1.エイブラムのシュートが決まるかどうかという形になりつつあり、トランジションもなかなか繰り出すことができず、流れを変えることは難しい形勢となっていた。

終盤は山口の攻撃が単調となり、さいたまにしっかりと守られた後で、トランジションから失点を重ねた。チームとしての戦い方が機能せず、点差を広げられる一方となり、結果的には70-98で敗戦となった。

さいたまは1Qこそシュート精度の低さで苦労をしたものの、高さの優位性を生かして流れを掴んでからは、危なげない試合運びで順当に白星を挙げることに成功した。

-試合後の感想-

私としては、山口の勝つためのビジョンが読み取れない一戦だった。

さいたまに対しては、帰化選手の2.クリークモアを生かした、高さの圧力にどう対処するのかが問われることとなるだろう。

この試合では、3Pラインの内側からペイント内になるべく多くの人数を割き、インサイドのスペースを与えないようにする意図が感じられた。

さいたまのピックアンドロールに対しては、試合開始直後から基本的にはアンダーで守っており、高い位置からのプレスもあまり行っていないことから、前述したような意図を感じたのである。

しかし、結果的にはこの選択がさいたまの土俵で戦うことにつながり、さらには自分たちのアグレッシブさを失うこととなってしまったように見えた。

ディフェンスではボールマンへのプレッシャーがかからず、上空のスペースを簡単に使われてペイント内への進入を許し、ダブルチームからのローテーションも遅れて、インサイドのビックマン、そしてアウトサイドで待つシューターに余裕を持ってプレーする時間を与えていた。

さいたまのアウトサイドシュートの精度が低かったこともあり、1Qは失点を免れていたものの、2.クリークモアを生かしたオンザコート3で押し込まれてしまうとなす術がなくなってしまった。

このようにゲームプランの意図は思い当たる部分があるものの、それがうまくいっていたとは言い難い試合展開だった。

結果的にはインサイドを守るというゲームプランが自分たちの足を止めてしまっているようにも感じられた。

インサイドを守ることと足が止まることはイコールではないはずだが、その意識が攻守に渡ってのアグレッシブさを奪い、トランジションからの攻撃の形もなかなか出せず、さいたまのテンポで試合が進んでいったように思う。

GAME2で山口が勝利するためには、さいたまに対するゲームプランと自分たちのプレーを表現することの両立が求められるのではないだろうか。


GAME2
山口87-90さいたま

さいたまの2.クリークモアを生かしたオンザコート3、ビック3に手を焼いたGAME1の山口。

試合開始からインサイドのスペースに対する警戒心は見られていたが、それによって自分たちの良さが消えてしまったような試合だった。

それを踏まえてのGAME2。戦略の部分では大きな変更はなく、戦術の部分で手を打ってきた印象を受けた。

-1Q(20-20)-

スターターには23.石橋を起用。単純な高さに加え、彼を頂点におき、9.重冨と11.山口の機動力で広範囲のスペースをカバーするゾーンディフェンスを採用した。

試合の入りではそれが功を奏す。最初の得点をセカンドチャンスからさいたまに決められるものの、その後はアウトサイドからのシュートを打たせ、リバウンドを拾ってオフェンスに繋げていた。

オフェンスでは7.ジュールズのピックを使って、9.重冨や11.山口がジャンプショットを決め、ボール回しから1.エイブラムの3Pシュートも生まれた。

山口のゾーンに対して、やや面を食らった感のあるさいたまだったが、チームとして冷静にボールを回してインサイドのスペースを徐々に作っていった。

QB的な2.クリークモアのパスセンスも光り、ペイント内のスペースからシュートを放ち、2点を重ねていった。

9.重冨、11.山口がベンチに下がると、山口はマンツーマンディフェンスで対応するようになり、さいたまのローポストからオフェンスが展開される形になる。

最終盤には、2.クリークモアのポストから14.佐藤の3Pシュートでさいたまがリードを奪うが、7.ジュールズのピックの後ろから8.下山が3Pシュートを決めて1Qは20-20とイーブンで終了となった。

-2Q(23-19)-

2Qもマンツーマンディフェンスのままアウトサイドシュートを打たせる山口。

さいたまの2本の3Pシュートが落ちる中、7.ジュールズ、1.エイブラムの得点で逆転に成功する。

しかし、チームとして14.佐藤の3Pシュートをデザインするさいたま。その14.佐藤がシュートを決め切ると、32.野口も続いて再びリードを奪う。

それでも、山口のアウトサイドからのシュートも高確率で決まっており、試合はリードチェンジを繰り返しながら進んでいく。

32.吉川の3Pシュート、1.エイブラムのジャンプショットと、良いテンポでのシュートが決まっていくと、終盤にかけて若干前に出たのは山口。

足がよく動いている山口は、さいたまのボールマンに厳しい距離感と素早いローテーションで、マンツーマンディフェンスを展開。
23.石橋を投入した後はゾーンディフェンスに戻すが、それでもインサイドのスペースを厳しく守り、さいたまのオフェンスをストップする。

すると、1.エイブラムと9.重冨のジャンプショット、2.上松の3Pシュートで2ポゼッションのリードを奪う。

ただ、最後のポゼッションで18.エショの3Pシュートが決まったさいたまも大崩れしない強さを見せ、43-39で前半を終えた。

-3Q(20-26)-

3Qに入っても互角の攻防が続く。
山口は11.山口のジャンプショット、1.エイブラムと9.重冨のドライブアタック、23.石橋のミドルショットで得点を挙げる。

さいたまは11.秋山の3Pシュートで状況を打開すると、少しペースを上げて18.エショのドライブを生かし、バスケットカウントを連続で獲得。立て続けに3点プレーを成功し、逆転に成功する。

2Qとは反対に、さいたまが少しの流れを掴んだ局面となり、試される山口は、タイムアウトを取って打開を目指す。

7.ジュールズ、1.エイブラムの得点でペースを戻すと、31.富田が2.クリークモアの上から3Pシュートを決めて同点に戻す。

その後はさいたまにペイント内から得点を挙げられるシーンもあるものの、1.エイブラムの安定したシュート力で同点のまま進んでいく。

ただ、さいたまは、山口の最後のポゼッションに対してダブルチームのトラップディフェンスを繰り出し、2.上松からボールを掻っ攫った。

そのまま2点を取って、さいたまが63-65と勝ち越して3Qを終えた。

-4Q(24-25)-

互角で進むこの試合だが、4Qも白熱した攻防が続く。
さいたまが6.ワトキンス、40.フェイゾンでインサイドをゴリゴリと攻めてくる中、山口は7.ジュールズの強さによるねじ込みと、32.吉川の2本の3Pシュートで対抗。

得点効率で逆転する山口だったが、14.佐藤の連続3Pシュートで再びさいたまがリード。しかし直後に32.吉川が3Pシュートを決めて、山口のリードでオフィシャルタイムアウトに突入する。

オフィシャルタイムアウト明けは1Q序盤の展開に戻る。山口のゾーンディフェンスに対してさいたまは18.エショの強さ、ドライブによって得点を挙げる。

山口は11.山口のシュートが立て続けにリングに嫌われてしまい、逆に14.佐藤に3Pシュートを決められ、残り2:42で大きな5点のビハインドを背負ってしまう。

タイムアウト明けの山口は、1.エイブラム、31.富田のドライブからの得点で追いすがるが、さいたまの高さ、強さの前にリードをされたまま、残り時間が1分を切ってしまう。

それでも、1.エイブラムの1on1からの3Pシュートで1点差に迫って、残り36秒でさいたまのオフェンスとなる。

そのオフェンスは山口がペイント内のスペースをうまく消し、17.高橋にミドルショットを打たせることに成功。シュートは落ちたものの、リバウンドを確保できず、さいたまに再びポゼッションの機会を与えてしまう。

時間がない山口はファウルをするしかなく、そのフリースローを14.佐藤が2本揃えて、3点差8.5秒から山口の最後のオフェンスとなる。

タイムアウトでデザインしたのは反対サイドの7.ジュールズに預けてからの1.エイブラムの3Pシュートだった。

しかし、さいたまも2人がマークについており、厳しい態勢でのショットとなると、そのシュートはリングに届かず、試合は終了。

互角の攻防が続いた試合はさいたまが87-90で逃げ切り、大きな連勝を飾った。

-試合後の感想-

前日からの修正を見せた山口だったが、惜しくも届かず、連敗となった。

この試合については、ポイントなる局面でさいたまが上回ったという印象だ。

ペイント内で得点の可能性が高いシュートを打てること、14.佐藤の決定力はチームを支えていた。

ただ、これらのプレーだけではなく、クウォーター終盤の水を漏らさないプレーが大きかったように思う。

2Qでは18.エショの3Pシュート、3Qではダブルチームからのスティールと、ここという場面でスペシャルなプレーを繰り出せる辺りが上位たる所以であると感じた。

山口視点では、この試合どうこうよりも、安定してこの内容の試合を披露できるかが重要であると思う。

1試合で見た時の最後の勝ち負けは、相手の力によってはどうにもできない部分もあると思うが、長いリーグ戦として考えれば、このような試合の分母を増やすことによって、最後に拾える勝星の数が大きく変わってくるはずだ。

山口の課題の一つには、波の大きさが挙げられると考えていることもあり、その点で、このさいたまとの連戦では、GAME1の戦いぶりの方に大きな伸びしろがあるように感じた。


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