私と演劇

 

演劇を始めたきっかけ

 私が演劇を始めたのは、高校で演劇部に入ったことがきっかけだった。しかし、演劇をやりたくて演劇部に入ったわけではなかった。

 

弓道部の話


 私は、高校では元々弓道部に入っていた。小学生から弓道に憧れており、弓道部のある高校を選んだ。この弓道部、仮入部時代は問題なかったのだが、正式入部すると様子がおかしかった。試合の日はクッキーとゼリーを手作りで差し入れしなさい。大会の日には千羽鶴を先輩にプレゼントしなさい。などといった謎ルールが多い。

 一番変だったのが挨拶だった。通常、朝の挨拶といえば「おはようございます」だと思っていた。ダメなんだそうだ。じゃあなんと言えば良いのか。

「ざいます」

だった。昼でも夜でも、部員同士の挨拶は「ざいます」一択だった。
 弓道は武道だから、「おはようございます」なんて間延びした挨拶している間に敵に斬られてしまう。だから「おはようございます」は禁止されているという理屈だった。納得がいかない。弓矢でないと倒せない距離にいる相手が、どうすれば5文字多く言っただけで私を斬れるほど間合いを詰めるんだろうか。その理屈なら会釈でいいと思う。

 この挨拶にはさらに細かい規則があり、先輩がどんなに遠くにいても、返事してもらえるまで挨拶し続ける。視界から消えたら挨拶はリセットされ、また視界に入ったらもう一度挨拶しなければならない。
部活帰りに駅の改札口で会ったら挨拶し、先輩が階段を渡って反対側のホームに行ったらリセットされたので、反対側のホームに向かって大声で挨拶をし続けなければならない。それに対して先輩の返事が
「・・・おはよう」
全然聞こえなかった。結局、先輩が電車に乗るまで挨拶し続けた。
 他にも変な規則が沢山あった。一番腹が立つのは、これだけさせておいて先輩達の弓道はあまり上手ではなかった。いろいろ納得がいかず、辞めることにした。

 校則で、生徒全員が部活に所属しなければならなかった。しかし、弓道で高校を選んだ人間にやりたい部活などなかった。

出会い


 ある日の放課後、校門に向かっていると、どこからかシャボン玉が飛んできた。シャボン玉?って思いながらシャボン玉の出処を探してみると、プールサイドで、ピンクのうさぎの着ぐるみに身を包んだを女の子がシャボン玉を吹いていた。今思うと、意味の分からない光景だった。それを見た私は

「ここだ」

と思い、なんの部活か全く分からないまま入部を決めたのが演劇部だった。
 
こんなきっかけで始めた演劇をずっと好きでいるとは、人生何が起こるか分からない。

おまけ


 私の名前「脾臓」は演劇部で付けられたあだ名がきっかけだ。
 演劇部の練習で2kmくらい走った時に、なんで脇腹が痛くなるのかという話になった。その時に入部して間もない大人しかった私は、脇腹の痛みと脾臓の話をめちゃめちゃしてしまった。その時に「脾臓っ子」というあだ名を付けられた。
 気に入っていてずっと脾臓っ子と名乗っていたが、アラサーと呼ばれる年齢に足を突っ込んだ時に、そろそろ子って歳でもないと思い、脾臓と名乗っている。
 私が入部した演劇部は、裏で「変人同好会」と呼ばれている。演劇部を名乗るだけでヒソヒソされていたような部活だ。他の部員もとんでもない人たちの集まりであるが、その話はまたどこかでしようと思う。


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