ここと

槇原敬之「君は僕の宝物」レビュー

なんとなく以前からマッキーのアルバムに対する自分の感想みたいなものを書いておきたいなァ~と思っていたのでやってみます。

なぜ「君は僕の宝物」からかというと…私は幼少期から親がカーステレオでマッキーを聴いていたのを一緒に聴いていたんですが…
物心ついたときに車の収納ボックスに残っていたアルバムが「君は僕の宝物」だけだったのです。他はレンタルで聞いていたのか、捨ててしまったのかわかりませんが…
「君は僕の宝物」をなんとなく聴いてみるとあれ、これ聴いたことある曲ばっかりだなあ…小さいころに聴いてたのかぁ~…へ~…というところから私のマッキー道はリスタートしたわけです。
聴きなれた今となっては、定番曲もしっかり入って、槇原敬之をぼんやりとしか知らない人がマッキーを聴き始めるのに最適な1枚じゃないかな…。

1.INTRODUCTION
このギ~ッスイッチョ…みたいな音、ほんと秋の虫の声っぽくないですか?
リリースが1992年6月25日なので全然秋じゃねえんだけど。
ジャケット↑もなんか秋っぽいノスタルジーな色合いなので、なぜかこのアルバムは秋冬な印象がある。ぼやけたセピアの写真にくっきりの縦組み明朝がいいですね。

「君は僕の宝物」のアレンジなんですね。マッキーのアルバムはINTRODUCTIONがあるやつとないやつがあるけど、私は断然あるほうが好きです。マッキーのアルバムはカーステレオで聴くのが一番という私の持論があるんですが、これがあるとループ再生で区切りになるし、マッキーのアルバムはアルバム全部を通して一つの作品なんだなという意識が伝わるので…。

2.くもりガラスの夏
なんかサビとか2番の印象が強くて歌詞をぼんやりとしか認識してなかったんですが、思い出焼き付けた日光写真のように黒くなった日焼けがぼろぼろ剥がれてんの!? 日焼け剥がれる人見たことないからなんかギョっとするな。

「本当に君をぼくのものにしたかったなら たまにはケンカでもすればよかったね」
「君の言うことなんでも聞けば 大事にしてるんだと思ってた僕を今誰と笑ってるの?」
のあたりの歌詞が特に耳に残るんですが、めちゃくちゃかわいそうだな。
たぶん曲中の”僕”は…玄関で一緒に出掛ける時、靴履くときに支えにされることが、自然に相手の役に立っている瞬間こそが愛情の風景だと思ってたわけじゃないですか…
まあでも……相手のために気を配りすぎる愛情より、自然でいられる愛情を目指すべきっていうのはちょっとわかるかな……。

アルバム2曲目にして、マッキー名物「別れてからあーだこーだ君の話をしてる僕」がすでに繰り出されてしまいました。

3.もう恋なんてしない
出、出ーー!!
私が言うことなんてもう特にないくらいみんな聞き慣れてる名曲だと思いますけど…。
よく「もう恋なんてしない…するのかよ~~!笑」とイジられます…が
マッキーファンからすればマッキーの曲において「別れちゃったけど、君の幸せを祈ってる、僕もこれからまた幸せを探すヨ…(まだ未練は断ち切れませんが…)」は「いつもの別れ曲」というレベルで定番メニューです。

思えばマッキーの曲にいつも徹底しているのは「出会った人々が自分を形どってゆく」という考え方だと思うので、出会って、特に密接に関わったであろう恋人と別れた後うだうだ言いつつも幸せを祈ってしまうのはまあ…当然の行為なのかもな……。

コンサートでいっしょにいるときは~♪のところでPPPHするのマジ好き。
さみ~し~く な~あった♪で段々にサビに突入するのでPPPHの辞め時がわかりづらいのも好き。

↑見てください。こぼされる牛乳とえぐすぎる肩幅のジャケット。

4.三人
正直このアルバムでトップクラスに好きな曲です。物語を読んだなあ…というあったかい気持ちになるし…。よくこの説明のような詞にメロディーをつけてつるっとまとめられるな。これはマッキーの実体験だそうですが…いい話過ぎるだろ…。
三人がどういう年齢差なのか知りませんが、そう歳は離れていないであろうに「まるで二人両親のように 夜遅い僕を 待っていたっけ」がキュンとしますね。


自分が居候でなくなった後に新しい人が来たと聞いて寂しくなるの、わかる……。バイトでもなんでも、自分が確かにそこにいたポジションに誰かが滑り込むのって寂しいよね。当たり前のことなんだけどね…。よくこの会社、私が辞めたら私の痕跡がきれいになくなるんだな~って不思議な気持ちになります。

それと同じようなことなんですが、三人分の思い出をつめた宝箱である家に買い手がついて、誰かの手に渡ってしまうの本当に切ない。別に悲しいことじゃないんですけどね…。私が住んでいるこの家だってたかだか20年くらいの思い出しか詰め込まれてないんですけど、この土地という尺度で考えると何十年、何百年といろんな人が住んでたり歩いてたりしたんじゃないかなあ~と思うと……思い出って幻みたいですね。
三人はビアガーデンに行けたのでしょうか。行ってたらいいな。

5.まばたきの間の永遠
私は勝手に「敬之一目惚れシリーズ」と読んでいるのですが…。
あるのかなあ現実でほんとに一目惚れなんて~!?まあ、そんな言葉がある以上ほんとにあるでしょうね。はい……。何曲かあるし、敬之のお気に入りのシチュエーションなんでしょうね。多分。
「世界有数のカッコ悪さ」というフレーズがなぜか好き。

「一瞬が 永遠になる」(SMAPの笑顔のゲンキ)とか、「まばたきの間だけの永遠」とか、愛しい相手の一瞬をシャッターで切り取って胸に焼き付けるような歌詞って美しくていいよね。
私は覚えが異様に悪いのでちょっと…実体験としての臨場感はないのですが。

6.てっぺんまでもうすぐ
出だしの「日曜日の遊園地は 上手に夕暮れを連れてくる」のワンフレーズだけで優勝してしまう名文パワーがある。
実体験として「日曜日の遊園地に上手に夕暮れを連れてこられた経験」がなくてもああ、と情景を思い描けてしまうのがマッキーのすごいところだなといつも思います。

観覧車の中での「少し怖いね~でもきれいだね~」って言葉、本当に何の意味もねえなあ…ってしみじみ思っちゃって好き。(そりゃそうだろとしか言えないので)

どうでもいいんだけど
「この前のデートの時には帰りの電車君の肩に回しそびれた手でずっと手すり持ってたこと思い出す」ってところ聴くたびにハァ………?告白もしてねー間柄なのに人の肩に手を回すか…???普通…???????????と思ってしまう…。いや、よく聴いたらこいつデート中に「冗談ぽく手を繋いで」るじゃん。おい!!!!!手を繋いでいいのは告白した後からだろうが!!!?!?!?!?!?!??!?!?!?!
俺の思想…“終わって”ますか…?
「君が好きだよ とても好きだよ」という直球すぎる告白はいいと思います。自カプにやってほしい。

7.雷が鳴る前に
このイントロのファンファンファンファファファ~ン♪のところ、すごくカラオケしてる時に隣の部屋から聞こえてくるカラオケ音源っぽいんですが…わかりますかね…あとこの曲でずっと鳴ってるピッって音、すごいカラオケの予約端末を操作してる音に似てると思うんですけど……誰もそんなこと言ってないんです……。どうして?
メロディーがとにかく好き。なんかチャイナっぽい味わいがある。

「駅前のタクシー乗り場は明日の休み知ってる人たち 笑顔の比率が高い 僕は明日も早い」ほど連休前のサービス業従事者の心理を描いたフレーズ、ないよ…(この曲の”僕”がサービス業かどうか知りませんが……。)

「覚えたての君の番号 もうソラで言えるかな!?」のフレーズ、駆け上がっていくメロディーと合わせて大のお気に入りなんですが、特に「!?」がついてるのがいい。この曲に限らず、曲の歌詞で「!!」とか「☆」がついてても音としてはわからないわけじゃないですか。それをわざわざ書いたんだなあ~っていうのが好き。相手の存在が自分の生活の一部になっていることに幸せやときめきを感じてしまう、マッキーの感性だなと思う。かわいいよね。

マッキー、隔てられたところにいる二人が文明(特に電話)を介して繋がるの好きなんだろうな。わかるわ。

8.涙のクリスマス
悲しすぎて…あんまりちゃんと歌詞を聴こうとは思いませんね…。
「二人のために身を引く槇原シリーズ」とでも言いましょうか。

友達からクリスマスカード、来たことねえ~~!!
母はたまに貰ってるみたいだから、そういう文化はあるんだろうが。でも一人で帰ってきてポストにそんなん入ってたら…ぽっと心が温まってしまうだろうな……マッキーの「ん MerryChristmas~~~~~~~~~♪」の発音が流暢なのでここだけ急に耳に引っかかる。

関係ないんですけど人に渡せないプレゼントってみんなどうしますか!?
私は様々な要因で人にプレゼントを渡せなかったことが何十回もあって………家においてあるんですけど…1回もう渡せないし自分で使っちゃおって開けたんだけどマジで悲しすぎて泣いちゃったから捨てたほうがいいのかもね……敬之も捨てたほうがいいよ、そのクリプレ。(?)

9.遠く遠く
出、出ーー!!私が言うことなんてもう特にないくらいみんな聞き慣れてる名曲だと思いますけど…。(take2)
新幹線ミリしらですけど桜が舞うホームってあるの?とか思ってたんですけど、今冷静に聞いてみて見えない花吹雪っつってるからこれ…心の情景だったの…?えっ……???????????いま気づきました。おいおい…。

「人に想われている自分であるということ、そしてその事実に支えられること」、がスッと胸に入ってきて素朴できれいな歌詞だよなあ。

10.冬がはじまるよ
出だしの「8月の君の誕生日」の「は!」が面白いのでここだけよく一緒に歌う。
「髪をほどいてみたり 突然泣き出したり」のところでよく母が「情緒不安定な奴……」と言ってくる。やめろ……
槇原敬之の得意なシーズンは間違いなく冬であることは明白なんですが、それを決定づけたのはこの曲かなあという気がします。MVかわヨ~

↑なんかこのサムネ損してない?寒い中出前に疾走する蕎麦屋みたいだ。

いやいやこんなに冬の開幕を待ちわびたことありますか!??!ないです。
「これからも僕を油断させないで!」と「今年の僕には コワイモノは何もない!」にビックリマークが入っているのがとにかくいいですね。
ほんとに心が弾んでらっしゃるのね、としか言えない気持ちがいっぱいに伝わってくるので………。
なんとしても自カプに適用したいウキウキ具合だが、なかなか去年の冬はケーキを売ってそうな自カプがないのでちょっと躓いてしまう。

11.君は僕の宝物
表題曲。
「君が僕を好きだとわかった その日の帰り道の公園で人に聞こえたってかまわない 気持ちで大笑いしたんだ」の個所を聴くと、いつも昔現代文のテスト読んだ小説を思い出します。
なんだったかな、主人公が思いを寄せている女性が「人に想いを寄せられているが、自分には好きな人がいるので困るのだ」ということを主人公に相談して、
主人公は苦々しい気持ちで「じゃあその好きな奴に相談しろよ」と言うんだけど女性は「だからあなたに相談してるんだわ。」と返す、
主人公は帰りに走って走って、ウオーッウオーッと叫ぶという……なんの小説だっけこれ。聞くと絶対にこの小説をセットで思い出してしまうんです。マジで。

なんか…好きだった人が自分のこと好きだってわかったらすごい脱力と喜びが一緒に押し寄せるのかなあ……
それにしても槇原恋愛楽曲って恋愛スタート時の「この恋…マジで大事にします!!!!!!!イエーーーーー!!!!!!!!!」テンションと恋愛破綻時の「めっちゃ好きでした、でも君のことが大事なので別れても君には幸せになってほしいです…すみませんでした…僕はいまだにこんなちょっと情けない感じです…」のテンションの落差、笑っちまうところはあります。

12.君は僕の宝物 ~REPRISE~
君は僕の宝物のインスト。てことは…イントロダクションと合わせてこの曲3回目です!!スゲェな!でも導入と終わりがしっとり作られてていいなあ、と思う。じんわり始まって終わる感じが…

総評
アルバム「君が笑うとき君の胸が痛まないように」、「君は誰と幸せなあくびをしますか。」に続く「君」3部作の完結編ということで私の中では「初期マッキー決定盤」という立ち位置のアルバムです。
恋愛ソング、失恋ソング、ライフソングと揃って非常にバランスもいい。(炭酸抜きコーラ)
槇原敬之楽曲の基礎というかとりあえず押さえておきたい名曲も入っており、冒頭にも書きましたが「最初にどのアルバムがおすすめですか?」と言われたらやっぱりこれかな……と思ってしまう。

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