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おすすめ敬之3点盛り

私がしょっちゅう槇原敬之の話をしているからか、たまに
「おすすめの曲はなんですか?」とか聴いていただくことがあるのですが、なかなか回答する機会もなく申し訳ないな~と思っていたのでnoteの企画に乗っかってみるぞ。いつもニコ生では許諾楽曲になっている槙原楽曲(ワーナーミュージック時代のもの)を流しているのでお話ししたりもしていますが……。


1.CALLIN'

アルバム『君は誰と幸せなあくびをしますか。』に収録。
1作目『君が笑うとき君の胸が痛まないように』、3作目『君は僕の宝物』に挟まる『君』三部作の一つ。
槙原楽曲に共通するのは自身を中心としたこまやかな情景描写ですが、この三部作はとくに僕、君、あいつくらいの世界の広さの中で展開するストーリーが強めに感じます。

この曲のテーマは電話ですが、槙原楽曲には頻繁に電話が登場しますね。「CLOSE TO YOU」では中々会えない二人の距離を繋ぐ存在として、「雷が鳴る前に」では今好きだ、と伝えたいと思った主人公が縋る手段として。
手紙、メール、メッセージツールと連絡手段は常に進化していますが、どうも若干不便だなぁというくらいのほうがラブロマンスの文脈では生きてくる気がします。
槙原自身も2012年の楽曲「Birds Stop Twittering Tonight」でそのことに触れているため、かぁーっ、やっぱマッキーって電話が萌えシチュなんやな……!!!!と改めてニッコリしてしまいます。
こういう「複数の曲を跨いで共通する萌えシチュ」を感じる時が槙原楽曲を聴いていて一番楽しい時かもしれない。

ようやく歌詞の話ですが、まず初っ端から

"君を抱きしめた強さ 確かめさせる証拠の
つぶれたタバコを内ポケットから出して

だよ!
今日はもうお別れして一人きりになっちゃったんだけども、でも胸ポケットの煙草の箱がつぶれてるのを見て「ああ、さっきまでは確かに君と居て、ギュッと抱きしめたりしたんだよなあ…」と描写するその感受性よ!!
時間の経過、行動、思慕がこの1行で立ち上がってくるの本当に恐ろしいです。

私が一番好きなのは2番なんですが、いつもデートの後に電話するルーティンだけど家電出るのに余裕を持って家に着けない時があって、「あ!鳴ってる!」って急いで玄関開けて、靴を脱ぎ切らないまま慌てて取っている、という間抜けな姿。
い、愛おしすぎる…………。
私は「恋をして間抜けになること」萌えなんですけど、マッキーも多分かなり“そう“で、的確に弁慶の萌え所撃ち抜いてくれます。
必死にみっともなく君からの電話を取る僕のことを、君はまだ知らないね…って……早く君に教えてあげたいよ。
だって携帯なら家帰りながらでも電話で切るし、LINEならずーっとやり取りしながらそれぞれの家に帰れるわけですよ。でもこの曲ではおそらく固定電話同士だから、君と僕と言う定点が電話線に縋って、振り回されて気持ちを確かめ合うしかない…その必死さが可愛いよ、って歌なんですよね。

たまんねえ~~。メロディーも大好きですが、曲の最初にプルルル~ってコール音が入るので毎回ビクッとする。


2.おさらばだ

アルバム『不安の中に手を突っ込んで』に収録。なんかけっこうデコボコしたアルバムだなあという印象ですが、ジャケ画のゴチャッとした感じはかなりマッチしているかも。好きなアルバムです。

さて、槙原楽曲といえばラブソングとライフソングの二本柱とされていますが、ラブソングの中でも槙原楽曲といえばやはり「失恋ソング」でしょう。
え?マッキーってラブラブな印象あるけど…?って言われたことがあるんですが、何言ってんだよ!!!「もう恋なんてしない」ってあんな有名な曲で失恋してんじゃん!!!

失恋ソングにおける槙原楽曲の特徴といえばとにかく未練がましいこと。
いや、言い方が悪いんですけど、未練と言うか”別れた後も君を想っている、という僕”の図が基本形なんですね。想いの形は様々ですが。
「SPY」「僕は大丈夫。」なんかでも君は彼のとこに行っちゃったけど、僕はじっと立ち止まり、失恋の痛みをこらえて君を見送るわけです。追いかけてってワー!!!!!!!どういうことやねん!?ってならない。
とにかく一度愛した相手にひたすら優しく、かつウェットな失恋。
「revenge」では君を忘れてやる!と声高に叫んでいるけども、その実全然与えられた影響も抜けてはおらず、君を忘れられない僕…という構図ですし。

そんな中異質と言うか、突き抜けているのがこの「おさらばだ」という曲です。
この曲は「お元気で!」という再開を誓って別れる友人同士を描いた一曲のセルフカバー、というか歌詞を一新した曲なのですが、とにかくカラッとしている。

"どのみち別れは来るのだから 早まっただけと思えばいい" 

すごくないですか!?!槇原史上最速の気持ちの切り替えかもしれないぞ!?
ここ、メロディーがサビに突入する前にグッと加速するのも相まって開放感がすごいんですよね。
曲を通して「一度は気持ちを通わせ合った仲なのだから、マジで憎しみ会う前にサッと別れよう!」ということが語られているのですが、全くその通りです。ZARDも誰よりも近い存在だったのに別れてしまうと他人より遠い人に…って言ってましたが、単純に仕方ないけどけっこうそれって寂しいよね…という気持ちを突風で吹き飛ばしていくようなパワー。

丁度複雑に 入り組んだ 高速道路のジャンクションさ
分かれ道までのカーブ 並んで走ったのが 君で良かった
” 

あたりも大好きです。
これは恋人に限りませんが……人生のほんの一瞬でも一緒に過ごした人、バイト先の人や学校の友達、二度と会わなくなったとしても、その時確かに一緒に入れたことがベストだった、有難かったなあと後から振り返ることってよくある……。
人生は高速道路だから、下道に降りたらまた出会うかもしれないし、PAで鉢合わせするかもしれないし、その時にフラットな状態でああ、また会えてうれしいなあ、と思えるようでありたいという…。願いみたいな曲ですね。

ラストのちょっと力がこもってかすれたマッキーのおさらばだーーっ!ていうフレーズ、気持ちがいいです。
スカパラの演奏が合わさってちょっとノスタルジックでもありつつ、でも前を向くシャンとしたかっこいい大人のイメージが伴ってますね。
本当に聞いてほしい。槙原失恋ソング界の革命児です。


3.記憶

ラブソングを2つ挙げたので、最後はライフソングを挙げます。
比較的新しい(2018年)シングルです。(のちにアルバム『Design & Reason』に収録)
この曲はニベアのCMソングとして製作されていて、盤面がもろニベアになってたりしてかわいい作り。

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槙原楽曲には「LUNCH TIME WARS(ヒルナンデス主題歌)」、「STRIPE!(アルペンのスキーCM)」など数多くのタイアップソング、CMソングが存在しますが、そのものずばりで番組名を織り込んでいたり、ゲレンデの光景を描いたりととにかくコマーシャルとしてわかりやすい楽曲でありつつ槙原楽曲としての世界観も成立しているのがポイントだな、と思います。

そんな中この「記憶」は歌詞中に "かさかさの頬"、"ハンドクリームの清潔な香り" というフレーズは出てきますが、どちらかというと曲のテーマとしては「かつて誰かから優しさを受けた、ということが与えてくれる勇気」です。

自分の肌が乾燥していることを心配して、ハンドクリーム(ニベア)を塗ってくれた人が人生の中に確かに存在している、ということの嬉しさ。
そしてそれを誰かにも与えられる自分でありたい、ということ…。
ニベアを塗りなさいよ、と言うのはつまり、優しさの象徴なんだよ、という視点がサラッと出てくる…!?すごい……。

"大丈夫だよと 微笑んであげたいとき 思い出せる特別な場面がある"

槙原楽曲の根底にある、誰かからの優しさを目いっぱい両手を広げて取りこぼしなく受け取る姿勢、そして誰かに死ぬほど一生懸命になって優しさを与えたいという姿勢。これがバシッと現れてますね…たまんねえ…どうしてそんなに優しい詞が書けるのですか…?!
ニクいなー!と思うのは、ニベアという家庭内で長年老若男女問わず安心して使われてきたクリームだからこそ、すぐには思い出せないようなおぼろげな記憶という一場面に登場できるんですよね。
おいおい…CMソングマスターか…!?

ちょっと関係ないのですが、私が毎日社用車で片道1時間以上かけて勤務地まで高速道路通勤をしていた頃、本当に辛く……毎日体がボロボロで…
高速ではまともにラジオが入らないのでマッキーのアルバムを持ち込んで繰り返し聴いていたのですが、たまに本社に出勤するときだけは下道なのでラジオが聞けたんですね。
その時、本当に偶然「槇原敬之さんの新曲です…」とこの曲が流れてきて、私はマッキーファンのわりに真面目に新曲情報とかをチェックしないもんだからパッと目が覚めて、あんだってぇ~?!とビックリしました。

"冷たい冬を超えてこそ 強く美しい自分になれる そうただ信じて欲しい"

……マジに毎日原稿で遅寝早起きで眠くて…仕事ではストレスが毎日襲い掛かって…というどん詰まりの日々を送っていた私にとって、このよくありがちだな~と思いつつも美しく、力強いフレーズがなんと身に染みたことか…。

私は常々「槙原楽曲を聞くのに一番いい環境は車だ!!!」ということを提唱していますが(楽曲でよく近しさを表すモチーフとして登場するためと、アルバムを通して集中して聞けるから)、だからこそこの曲が飛びこんできたのが車のラジオからで本当によかった。街中ではだめだった。
いい歌なんだよね……。


いやー、槙原楽曲の話をするのは楽しいなあ。
みんなもぜひ好きな槇原楽曲の歌詞語りしたり、コンサートでアルバムとどんなアレンジが加えられてるか確認したりしてみてください。
私が挙げた曲…あんまりコンサートではやってないんですが…

ち~ん…。


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