Diffusion of Innovations の解説ー7

Diffusion of Innovations theoryは「よい技術があったとしても、それが普及するとは限らないのはなぜか?」という問いについて考える理論です。

今日からは, Diffusion of Innovations theory の歴史について書いていきます。

イノベーションの普及についての研究の起源は、1900年ごろ、フランスの弁護士Gabriel Tarde、ドイツの社会学者Georg Simmel、イギリス、オーストラリアの考古学者らが、それぞれ別々に行なった研究とされています。

これらの研究に共通するのは「社会の変化はどこから起こり、どのように広がっていくのか」という視点です。

Tardeは弁護士として、世の中の人の動きを観察していました。その中で、新しく生み出される習慣や考えのうち、ほんの一部が浸透し、その多くは忘れさられてしまう理由について観察を続け、自著の"the law of imitation" の中で、人の行動の変化は発明と真似によって起こるという考えを発表しました。

Simmelはベルリン大学の有名な社会学者でしたが、ドイツ系ユダヤ人であったことで、不当な扱いを受けていました。こうした背景から「コミュニティ」と「よそ者」に関する研究を多く行ないました。こうした研究から、人は周りと同じ行動をとる事でそのコミュニティへの所属意識を強める一方で、よそ者はその意識が弱い分、より早く新しい技術やアイデアを取り入れる役割をもつということを発見しました。

普及(diffusion)という言葉を最初に使ったのが、イギリス、オーストリアの考古学者らです。彼らは普及論者(diffusionist)と呼ばれ、社会の変化は、ひとつの新しいアイデアが伝搬していくことによって起こるものと主張し、同じアイデアが違う場所で起こる(parallel invention)を否定しました。今となっては、社会の変化は、アイデアの発見と伝搬の両方を繰り返しながら起こるものとする考えが主流とが、「普及」に焦点をあてるという大きな功績を残しました。彼らの研究が、後にアメリカの考古学者らによって扱われるようになり、Diffusion of Innovations theory の基となる研究へとつながっていったのです。

(引用元: Rogers, E.M. (2003). Diffusion of Innovations (5th ed.). New York, The Free Press.)



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