Diffusion of Innovations の解説ー14

Diffusion of Innovations theoryは「よい技術があったとしても、それが普及するとは限らないのはなぜか?」という問いについて考える理論です。

今回は、Diffusion of Innovations theory の欠点の二つ目、Individual-blame biasについての説明と対処方法について書きたいと思います。

Individual-blame bias は、イノベーションが普及しない原因が、受け手となる個人にあると考える傾向のことを言います。その対になる考えが、System-blameです。System-blameはイノベーションが普及しない原因を、対象としている人々の生活のあり方や、人と人との関わりの中にあると考えることをいいます。

Individual-biasは根本的な問題を見逃す要因となります。例えば、シカゴの黒人居住区で雇用促進政策の一環として、時間を守ることを身に着ける訓練が行われましたが、時間を守るという習慣が定着せず、めぼしい結果が得られませんでした。

訓練の実施者は、参加者の理解力や態度の低さを原因と考えましたが、実情を細かく見ると、個人の力では解決できない課題があったことが分かりました。プログラムに参加したうち4分の3は時計を持っておらず、時間を知るために他の人に頼らなければなりませんでした。また多くの参加者の居住地区が仕事場から遠く、ひどい交通渋滞を抜けて通勤しなければなりませんでした。この例では、黒人の雇用が進まないことを、黒人の生活態度に問題があると考えるSelf-blame biasのせいで、雇用を増やすという社会課題の解決が阻害されるということがわかります。

このようにIndividual-blame biasは、innovationの提供側が利用者の能力や行動を問題と決めつけ、利用者を取り巻く環境をみていないことから生じます。これを克服するためには、個人が置かれている視点で状況を考え、さらに、個人を社会の一部として、社会全体を通して普及を阻害する要因を考えることが重要となります。

(引用元: Rogers, E.M. (2003). Diffusion of Innovations (5th ed.). New York, The Free Press.)

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