Diffusion of Innovations の解説ー6

Diffusion of Innovations theoryは「よい技術があったとしても、それが普及するとは限らないのはなぜか?」という問いについて考える理論です。

普及とは「イノベーションが社会集団の中で時間をかけて伝達されていくこと」と定義されています。これを要素に分解すると、1)イノベーション 2)情報伝達 3)時間経過 4)社会集団 の四つの要素から成ると見ることができます。

普及を規定する要因の4つ目が社会集団の特徴です。この場合の社会集団とは同じ目的または問題を持った、相互関係のある人間のまとまりのことを言います。この社会集団の構造や価値観、リーダーの力などが、普及過程に影響を与える社会集団の特徴とされます。

社会集団の構造は、意思決定のプロセスのようなフォーマルな側面、仲の良い人どおしでの会話などのインフォーマルな側面があります。こうした情報伝達の土壌のようなものが普及過程には、大きな影響を与えることになります。

社会集団の価値観は、規範という言葉を使って説明されることが多いです。規範とは、集団に所属するメンバーが期待する行動と説明されます。この規範は必ずしも明示されたものである必要がないということがポイントになります。自分が勝手に、この集団で期待されていること、と思い込んいる場合でもそれはその人が新しい考えを受け入れるか、受け入れないかに影響を与えます。

新型コロナに対する人々の反応を見ると、Diffusion of Innovations でいうところの社会集団の特徴による影響として説明できることがあります。例えば、WHOやメディアがマスクの着用は予防にそれほど効果がないといいながら、それでもマスクをつけて電車に乗るのは、マスクなしで電車に乗るの周りの目が気になる、くしゃみでもしようもんなら、という周りから期待される行動としての側面が考えられます。私たちは、科学的に情報を処理する頭を持っていながらも、社会で生きる動物として周りの人との直接的、間接的なやりとりを汲んで、自分の行動を選択しています。

(引用元: Rogers, E.M. (2003). Diffusion of Innovations (5th ed.). New York, The Free Press.)


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