それ何やねん

この記事は ボドゲ紹介 Advent Calendar 2021 の23日目の記事です。

ガラクタを使ってお題を表現し、当ててもらう。この手のゲームは、これ何だ?やスクイントや2020年SDJの「ピクチャーズ」等枚挙にいとまがない。その中で僕がダントツで好きなのが「それ何やねん」だ。
何が素晴らしいかは一言では言えない。もちろんプレイ風景の画像を貼って、ほら、面白いでしょう?とやってもいい。でも、「それ何やねん」が素晴らしいのは全てが調和しているところなんだ。一つ一つの美点を順に説明していってもそれが伝わるとは思えない。そんなとき何を思うか。「同時に伝えたい」である。僕は、ボードゲームのルールを書いたり校正したりするのを生業としているんだけれど、こういう気持ちになることが多々ある。文ではなく文章で伝えたい。いや、もちろん文章で伝えてはいるんだけど、なんというかそれは結果論であって、文の塊としての"文章"をそのまま読者にぶつけるということはできていないのだ。文章というものは一文一文読んでいくことしかできない。当たり前だけど。こういうときに人の無力さを感じる。線でなく面で理解してほしいときがあるんだよな、ときには。
では、我々人類は「それ何やねん」の美点を伝えるために何ができるだろうか。例えば、それぞれの美点を個々に録音しておいて、それを同時に再生するというのはどうだろう。「どうだろう」じゃないんだよな。そろそろ真面目な文体でふざけたことを言ってるのがバレる頃だと思うので、「それ何やねん」のいいとこ言うね。「それ何やねん」のいいとこ言いたい。
小学校とかで作文の課題あったじゃん? 原稿用紙何枚書けたら偉いみたいな。こうやって無を無限に綴っているとあれってなんだったんだって思うよね。まずは型をしっかり指導するべきで。本日皆さんにこれだけ覚えて帰ってもらいたい言葉がありまして。「いりたまご」です。意見、理由、体験、まとめ、誤字チェックの頭文字を取ったものですけど、もうこれをただ頭から書いていけばいいのよ。

閑話休題。

はい。これ。


ここからゲームが始まるわけですが、ご注目いただきたいのが、お題カードです。お題カードが見えてるというのが「それ何やねん」の大きな特徴です。この手のゲームは選択肢式ではなく自由回答式が多いのです。選択肢を出すと簡単に答えを当てられちゃうからですね。
で、「答えを当てるのが簡単すぎる」という課題に対する本作のアンサーは2つあります。
1.制作難度の調整
2.回答システム

1.お題の制作難度の調整
このゲームでは、ガラクタを使ってお題を表現します。実際のところ今まで言ってきていることは嘘で、課題と対策が逆です。ガラクタを使ってお題を表現して伝えるということが難しすぎるので、回答が選択肢式になっているのです。ただガラクタを使用するにしても選択肢にすると回答難度が易化しすぎるという問題はあったようで、お題自体の難度も非常に高く設定されています。

2.回答システム
自由回答式のお題を当ててもらうゲームは、早押し、つまり、思いついた順に回答していき、正解が出たらそこで終了というかたちが一般的かと思います。あるいは、同時に回答を公開するというのもありますね。
選択肢式の場合は、回答番号が書いてあるカードを裏向きで1枚出して、同時に公開して答え合わせというかたちが一般的かと思います。
本作も番号の書いてあるカードを裏向きに出すという方式を採用しています。が、同時に早押しでもあるのです。解答がわかった時点で、カードを裏向きにして、場に出します。その後回答する人はそのカードの上に重ねて出すことになります。つまり、選択肢で回答する一方で誰が先に答えたかというのも明らかなのです。
で、答え合わせ。間違っていたらもちろん0点ですが、正解だったら、より早く答えていた方がより点数が高いという配点になっています。
「それ何やねん」はお題を当てるゲームではあるが、その判断のスピードも問われるわけです。わけです! と言ってもここまで特段創造的なルールが出てきたわけではありません。

次は、お題を作る側の話をします。場にあるガラクタを取って、手元に置きます。ガラクタのスペースと手元で作品を作るスペースは明確に分かれているのです。別にこれだって、たいしたルールじゃない。お題を表現するために、ガラクタを取って手元に置く。当然のことです。
が、花を取った瞬間に、バババっと回答カードが回答カードボックスへ投げ込まれることでしょう。その選択肢に花屋があるのなら。
あなたのお題は「政治家」で、あなたは議員バッチのつもりで花を取ったのかもしれない。しかし、それが回答者を早とちりさせてしまう可能性について考える必要があります。

そう。このゲームはお題を作って当ててもらうというクリエイティブなゲームに見えて、やることは高度な心のやり取りなのです。
ゲーム中は、迷っているということさえ情報になります。あのお題とこのお題なら悩む必要はないだろうなというように推測をして、可能性を絞っていきます。

シンプルなルールとコンポーネントからの要請が有機的に結びついている美しいゲームです。
お題作成プレイヤーの一挙手一投足を見つめながら、なるほど、これはなさそうだと推測しながら、お、そのガラクタを取ったということは、これかあれだな? ん? 戻したぞ。新しいの取った。え、それも使うの? なるほど? え? 完成? え、それで完成してるの?

それ何やねん!

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