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抱っこの卒業式
早いもんでこの日記も100本超書いてる。えっそんなに?
1本目の時に2歳10ヶ月だったヨシタロウは、このあいだ4歳になったが、当時からずっと変わってないことがある。
「パパ、だっこして」
である。
弟の誕生で相対的に甘えづらくなるだろうと思って可能な限り抱っこしてきた。
しかし、年末年始にクソデカ国立公園、昭和記念公園に行った際に、大抱っこ時代に終止符を打つ決心をした出来事があった。
昭和記念公園、だいたい「みんなの原っぱ」と呼ばれる芝生ゾーンにドームテントを張り、そこから遊具ゾーンで遊ばすという動きになる。「遊具ゾーン」だけ切り出しても滑り台が数種類、アスレチック、トランポリンなどがあり並々ならない広さがある。
ちなみに、ドームテント地点までは、義父が買った「Colemanのあのでっけぇ長方形のカゴ」で、次男のヨシスケ1歳もろとも運搬されているので、ぜんぜん歩かない。
みんなの原っぱの反対側に、クリスマスあたりにカフェができたらしい。遠くに見える逆三角形の建物がそうだろう。
「あそこの新しくできたカフェで昼メシ買えるか見てくるわ。年末年始で営業してんのかどうか、わからんけど」
テントから600mほど離れていると思われるそこに、1人でさっと行ってこようと思ったが
「ヨッくんもいきたい!」
とうるさいので、テントに妻とヨシスケを残し、ボール遊びなどをさせつつ、ヨシタロウと私を先遣隊とした。
「パパだっこしてよ」
「え、やだよ、結構距離あるし、来るなら歩いてよ」
「だっこがいいーん!」
泣きかかったが、空になったColemanカゴに入れて運ぶという案で折り合いをつけた。
ゴロゴロ…
ゴロゴロ……
うん。
めちゃくちゃ年末年始で休みだった。徒労であった。
さてはて、ま、昼メシはどうにかするとして、とりあえず遊具ゾーンに行くかいなと思った。遊具ゾーンまでは50mくらいである。
じゃ。いこか。とヨシタロウと手を繋ごうとした矢先
「パパだっこしてよ」
「いやいやヨッくん、そこくらい歩いてよ」
「つかれてあるけないよー!」
「えっ、でも滑り台とかトランポリンとかするんでしょ?元気じゃん」
「あるくのやなのー!」
このざまである。
まあ、私は余力は全然ある。
でもなんだろう、あと50mほどの遊具ゾーンまで歩く体力はないが、ゾーンに入ったらシコタマ走り回る所存である、ということを隠しもしない我が息子に、私が育てたド甘えん坊スピリッツに戦慄した。
さすがにクソ過ぎないか?
4歳になり、ベビーカーメーカーが推奨する対象年齢も体重もとうに過ぎている。まだめちゃくちゃ乗るけど。
抱っこ、抱っこねぇ…。
今なんじゃないか、急にそう思った。
卒業させるなら、今しかないんじゃないか。
「歩けないほど疲れちゃったの?」
「うん」
「全然歩けないの?」
「うん」
「わかった、そんなに疲れてるなら、じゃあ帰ろう」
「やだー!!!!!!!!!!!」
そこからの泣き喚きはすごかった。いつもであれば妻が「大きい声出さないで!迷惑でしょ!」と言って、そうするとなおさら泣くのであるが、ここは年末年始の昭和記念公園である。敷地が広すぎる。
いくらでも泣いてくれ。周り、誰もいねぇし。
過呼吸になるんじゃないかと思う勢いでだっこだっこだっこだっこだっこしてぇー!と泣き叫ぶヨシタロウをしばし静観してから、落ち着いた頃合いにそっと抱き寄せた。
そして穏やかな口調で、遊具で遊べる元気があるならこのくらいの距離を歩いて欲しいこと、本当に元気がないなら抱っこもしてあげるがそれは帰るためのだっこであることを懇々と伝えた。難しい言葉は使わずに、できるだけシンプルなロジックとして伝えた。
もう4歳、道理のわからぬ子ではない。彼は次第に理解していった。いつもの父ではない。おねがぁいと猫撫で声を出しても父は折れてくれそうにない。無限抱っこ時代は終わりを告げたのだ。そういうことがなんとなく伝わったようだ。
「ヨッくん、パパだいすきなの」
「うん、パパもヨッくん大好きだよ。本当に歩けないときはまた抱っこはしてあげるからかね。わかった?」
「わかった」
それから30秒ほど抱き合って、おもむろに私を見上げて、素敵な笑顔で彼はこう言った。
「おんぶして?」
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