冬の手記

家にこもりきりで、暗くなってからようやく外へ出た。訳が分からないけれどつらくて、タバコが吸いたい、腕を切りたいなんて衝動に駆られる。涙を流しながら眠るしかなかったのに、起きて、サーモンづくし食べたら機嫌も心もよくなった。非常に単純に、上手くできている。

階段の踊り場からはいつも通り町が見える。息を吸う。空気がとてもおいしい。お隣の晩御飯の匂いとか排気ガスとかも含んだ空気であったけれど、気にならないくらい私には新鮮だった。階段を降り、地面に足をつけて深呼吸。そこまで鋭利でない寒さと空気だから、まだ肺のあたりが淀んでいる。何度か呼吸を繰り返し、少しすっきりした体でコンビニまで歩く。田舎はこんなときに有難い。人も車もめっきり通らない道がある。ウォーキングをする老夫婦くらい。

私は今すごくすごくありふれたことをしている。「生活」である。「生活」をする時間が大好きなのだが、私の夢にとっては邪魔で仕方がない。「生活」に引っ張られ溺れてしまうと、このありふれた生活以外望まなくなる。人生一貫してこれでいいと。選択肢、未来のある若者なのに。贅沢な悩みです。

「考えるのやめた。完璧主義もやめた。好きなことと好きなことと好きなことと好きなことと好きなことと好きなことと好きなことと好きなことと好きなこと。それぞれ繋がらなくても、剥がれて破れてちっともくっつかなくてもいいや。とにかく好きなことしよう!生きてんだから!」

なんて一人決意を口にしているうちにコンビニに着く。

入店、いつものメロディ。

期間限定の商品をたくさん買う。めっぽう弱い、浮気性な私。

帰り道、息が白くなるのが嬉しくて何度も息を吸って吐く。

「あっ」

UFOだ___そんなことはないよ。あまりにも安定してくださっているありふれた素晴らしい生活が、そんなことはないよ、と。救急車のサイレン。さっと不安になるがあまりにも安定してくださっているありふれた素晴らしい生活が、そんなことはないよ、と。チカチカと点滅しだした街灯は少し不気味で、犬の遠吠えは何か悪いことが起きるのではと私を震えさせたが、同様にあまりにも安定してくださっているありふれた素晴らしい生活に、もみ消された。



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