はじまりのキス、終わりのキス(5)
恋の話です。六回に分けて投稿します。一つの記事につき1500〜1800文字です。
読めるところまででも読んで頂けたら嬉しいです。
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部屋の中は夜が明け方とともに音を吸い取っていったみたいに静かだった。
しんと冴えた朝の空気が薫る煙のように緩やかに漂って、一夜の終わりを仄めかす。私はそろりと起き出して身支度を整えた。玄関ドアの前に立つと背中越しに彼の気配がした。もう一度抱き寄せてキスをするような甘い兆しは微塵もない。
「僕の連絡先は消して