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パリジェンヌたちのアトリエ

ハンドメイドのぬいぐるみ、カラフルなガラス細工、小説の挿絵。
蛍光ピンクと黄色を混ぜて、そこにすこしグリーンを入れて。
床は深い色味のフローリングか、幾何学模様のタイル、アンティークのドアに黄色のペンキを塗って。
壁には描きかけのイラストや、インスピレーションソースの写真をマスキングテープで雑に貼って。テーブルの上には呑の市で思わず買った古いオモチャを並べる。

「パリジェンヌたちのアトリエ」シリーズ。

10代の頃、穴があくほど読み込んだ本です。
イラストレーターやテキスタイルデザイナー、小物作家。
わたしの周りにいた大人たちとは違う職業の女性たちが登場していて、夢の中の世界なのか、本当に現実にこんな人たちがいるのか、
不思議で不思議で、
写真の下の小さな字のキャプションまで、一字一句読み逃すまいと、何度も何度も繰り返し読みました。

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いまの時代は、
好きなアーティストのインスタを見ればその人の生活を垣間見れたり、
ピンタレストは自分好みドンピシャの写真を表示してくれるけど、
そんなものなかったその当時、
この本との出会いは衝撃でした。
(すごいですよね、ピンタレスト。好きなものを見るという快楽に溺れすぎてピンタレスト中毒になってます。)

(お洒落な都会の家庭に生まれた人には、別のインプット手段があったかもしれないけど、うちは普通のサラリーマン家庭だったので、ふつうのテレビと雑誌しか知らなかったってことかもしれないです。)

この世界にどっぷりのめりこんで、
買ってきたフェルトで不思議な動物を作ってみたり、部屋の壁をブルーに塗ってみたりと、すこしでもこの本に登場するパリジェンヌに近づこうと努力していました。

そんな私も大学を卒業するころ、
この本のことはすっかり忘れ、(もしくは意図的に忘れ、)
というか、
そうそうフェルトでちっこい動物をつくって生きていくのは難しそうだということは薄々感じ・・・
(大人になったいまでも、この本に出てくるアーティストたちの収入源と生活費の詳細は、気になるところです。)
会社員となりました。

お金の心配もしなくて良くて、
夢を追いかけるというしんどさもなくて、
毎日みだしなみを綺麗にして、シャキシャキと会社員をするのはそれなりに充実感もあって楽しく、
それはそれでよかったんだけど、
やっぱり心の端っこに、
このパリのアトリエの風景がずっとあって、忘れきれなかったんだと思う。

仕事帰りに百貨店で流行りの化粧品を買おうとしているにふと、
(会社員の私は、しょっちゅう、自分へご褒美を与えていた。)
この生活はもういいかな。そろそろ会社やめよ。って思いました。

いま、わたしは子供服を作っています。
本の中の彼女たちに、すこしずつ近づいている。(と信じたい)
自分が好きな可愛いものを生み出すことが、こんなに幸せなことだなんて。そんなこと10代の頃からずっと知っていたのに、
そうすることが自分に一番合っていて、それが自分が一番幸せを感じる生活だって、知ってたのに、
気づかないようにしていたんだな。って思います。

ひよっこアーティストは、
お金もないし、いろいろうまくいかないし、
毎日自分がやっていることが正しいことなのかわからなくて
不安になるし
周囲から理解されなくて苦しい時もあるけども、
まあ、それでも、
総じて楽しいなって思えるから、
総じて、まあ良いのかなって、正解なのかなって思います。

自分が進むべき道が分からなくなった時に、
ひとつの指針として、この本を、
ずっと持っておきたいと思います。

(たとえばの話ね、わたしの子供服ブランドが、インフルエンサーかなんかが拡散してくれたことがきっかけで、大ブレイクして、めっちゃ大きなブランドに成長して、それこそ百貨店に店だして、社員が何百人もいる会社になったとしても、わたしはわたしでいようってことです。←どんな妄想・・・)

****podcastやってます!
「ひよっこあアーティストのハローマイライフ!」オーストラリア在住のメイとひよっこアーティストトークをする番組です。
今回は「本」について話しました。
podcast内では私が普段読んでいる本のことについて話しました!ぜひ聞いてください〜



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